叶わない恋に奇跡を【1話】

20XX年ー

数年の間に地球では科学技術が爆発的に進歩していた。

たいていの事はロボットができるようになり、

人間と外見も内面も見分けのつかないほどそっくりなロボットの開発が進んでいる。

だが、大昔にあった、「森」や「海」や「川」

などの「自然」と言うものはない。

そんなのは伝説だと言われている。

ーこれは、そんな世界での叶わないはずの恋の話ー

ー私の名前は被検体001

なんでそんな名前かって？

それは　私がロボットだからだ。　

人間の変わりをするためのロボットの開発の被検体、それが私だ。

研究所の薄暗くて窮屈な部屋、かろうじて少しだけ青空が見えるだけの鍵が掛かった小さな窓、それが私の暮らしだ。

外に出た事なんか一度もない。

毎日毎日　限りなく人間に近くするための訓練ばかり。

それに、研究所の人たちは、私がロボットだからと、訓練もとても厳しい。

できない事があると、「なんでお前はそんな事も出来ないんだ。実験は失敗か？　今すぐにお前を壊してもいいんだぞ？」

と言われる。

壊されたくはないから耐えている。

正直、こんなところ最悪だ。

私はロボットだけど、人工知能のおかげで、感情はある。

本当に人間にそっくりなのに、扱いは人間以下。

ー今すぐにこんなところから逃げ出したい

私の楽しみは、この前偶然聞いた、歌を歌うことだけ。

それに、大きな声を出すと、「うるさい！」と怒鳴られるので、小さな声でだ。

ある日、研究所の人たちが全員出かけて行った。

研究の成果の発表があるらしい。

まあ、私には関係ないけど。

今日も小さな窓から小さな青空を眺める。

「はあ、もう嫌だ。　ここから逃げられたらいいのに。」

絶対に無理だとわかっているけれど、錆びついて茶色くなっている鍵に手を伸ばす。

ーガチャッ

あまりにも簡単に鍵が開く。

え、開いた？

嘘でしょ？

私はここから逃げられる？

自由になれる？

「行かなきゃ。」

小さな窓にムリヤリ体をねじ込んで、なんとか外に出る事ができた。

「深呼吸」と言うものをしてみる。

「外の空気」と言うものはこんなに澄んでいるんだ。

早く逃げなくては。

研究所から離れなくては。

走る、走る、走る。

走っても息切れはしない。

だって私はロボットだから。

もうどれだけ走っただろうかー

私は小さな村にたどり着いた。

ここなら大丈夫かな？

置いてあった小さなベンチに座り込む。

私、本当に逃げたんだ。

私は自由なんだ…！

いつもの歌を歌う。

静かな村に私の声が響く。

でも急に不安が襲ってくる。

これからどうしよう。

ロボットとは言え、見た目は完全に18歳くらいの人間だ。

ずっと1人でここにいるわけにもいかない。

第一、研究所の人たちが追ってくるかもしれない。

うつむいて地面を眺める。

「ねえ、君、どうしたの？」

「キレイな歌だね。」

…人間の声？

思わず顔を上げる。

きれいな男の子…。

「僕はカリム」

「君の名前は？」

私の名前…

被検体001

でもこんなの名前じゃないし、言ったら確実に怪しまれる。

考えた末に私は答える。

「ない。」

「名前、ないの？」

私は静かに頷く。

怪しまれたかな…

「じゃあ、僕がつけていい？」

帰ってきたのは、全く想像のしなかった答えだった。

私の名前…？

私はまた無言で頷く。

「じゃあ、君の名前は、アリア！」

「音楽の旋律、メロディーって言う意味があるんだよ！」

私の…名前…

「気に入らなかった？」

カリムと名乗った男の子が、不安そうな顔で見つめる。

いや、そんなことない！

私はあわてて首を横に振る。

「よかった…。」

彼が笑ってくれた。

私に名前をくれた。この人間は大丈夫、研究所の人たちみたいにひどい人じゃない。そう確信した。

【続く】

＜作者コメント＞

全くの初心者が、勢いだけで書いた作品ですので、温かい目で見てやってください！

（自分で言うな）