【木下家族と世間】第1話「鏡」

no.1木下 由花

私は真実を見抜くような鏡が嫌い。

現実から逃げても、鏡だけは追いかけてくる。

妹の病人のような姿を映し出す大きな鏡。

少し前まで元気な妹がそこにいた気がしたのに。

今は病室のベッドでぐったり寝ている。

私の大嫌いな小さな手鏡を抱いて。

no.2木下 愛花

私は次女に寄り添ってくれるような手鏡が好き。

起きている間は苦しんでいるのに、手鏡を抱いて寝ると幸せそうにすやすやと。

なんだか、私があの子達を置いていった時みたいに。

いつかこっちの世界にきっと来てくれるはず。

no.3木下 健司

俺は鏡が嫌いだ。

どこかへ逝ってしまった妻のことを思い出すから。

いつかあの子も逝ってしまうのではないかと、心配しているが、妻からもらった鏡を抱いて寝ている。

あと少しで２人になってしまう。あぁ、嫌だ。

no.4木下 優樹菜

私はお母さんがくれた手鏡だけが大好き。

学校の大きな鏡は大嫌い。

私とあの子が比べられる理由がわかるから。

私だって、あの子みたいになりたい。

はぁ。少しずつ記憶が蘇ってくる。

私ももう少しでお母さんと同じ世界にいける。

あぁ、さようなら。お姉ちゃん、お父さん。

END

恥ずかしいのでトピ主名は出しません