戻らぬ記憶に思いを馳せて。 第一話「記憶」
第一話 記憶
波の音がする。どれくらい寝ていただろうか。視界が真っ暗だ。遠くで誰かが何か言っている、気がする。
「おい!大丈夫か?」
「ん……。」
私はその声で目を覚ました。日光がとても眩しい。目の前には高校生くらいの少年が立っている。
「大丈夫か?君、ここで倒れてたから……。」
心配そうに聞いてくる。特に痛いところはない。
「そうだったのね……。」
一度冷静になって辺りを見渡してみるとここは浜辺だと分かる。遠くには綺麗な青色の海がある。
「君、名前なんて言うの?」
少年に聞かれて私ははっとした。自分の名前が思い出せないのだ。自分が今まで何をしていたかも覚えてない。パニック状態であたふたしていると、少年はそれに気付いたのか
「大丈夫?ゆっくりでいいよ。」
と言ってくれた。優しい人なんだなぁと私は思う。
「ごめんなさい。自分の名前が思い出せないの……。」
「それは大変だ!記憶喪失かもしれない!病気行くか!」
少年が自分以上に焦っているのが面白くて少し吹き出してしまった。
「ふふっ!そんなに慌てなくて大丈夫よ、たぶんね。」
私は少年を宥める。すると次の瞬間、少年が「あっ!」と叫んだ。どうしたんだ?と私が首を傾げていると少年が言った。
「もしかして……?いや、違うか。ごめん、何でもないや。」
しかし私は気になってしまう。
「なになに?教えてよ〜!」
「またいつかにね!」
そういえばこの少年の名前は何だろう?ふと気になって聞いてみた。
「あなたの名前は何?」
少年は少し目を見開いたがすぐに戻して言った。
「僕?僕の名前は『はっか』だよ。白い花って書いて白花。」
「白花……。素敵な名前ね。」
「あのさ」
少年が何か言いたそうにしている。
「どうしたの?」
「君は名前が思い出せないんだろう?だから僕が決めてあげるよ。」
少し驚いたがこの人なら素敵な名前をつけてくれる気がした。
「じゃあ今日から君は……。」
どんな名前かな?胸が高まるのが分かる。
「君の名前はデイリーだよ!」
小説カキコの方でも連載中
https://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=6343
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