【小説】我々は迫害されている。
我々は迫害されている。
彼らはどれほど前から現れただろうか。いつから我々を迫害し始めたのだろうか。我々の方がはるかに古くからその地にいるというのに、彼らは我々を迫害した。暗く狭くじめじめとした場所へ我々を追いやった。幸いなことに、食糧は彼らの捨てたものが余るほどあった。我々は生命力の強さが取柄である。我々はそれを最大限に活かしどんどん仲間を増やした。いつのまにか何百にも増え、スラム街のようなものが形成された。
我々は迫害されている。
彼らは、増え続ける我々を良く思わなかったのだろう。我々のスラム街に罠を仕掛けてきた。始めのうちは何も知らない仲間たちがどんどん罠に引っかかっていった。たくさんの被害を出してしまったが、我々は学んだ。罠を見分ける能力が身に着いたのだ。罠へは滅多に引っかからなくなった。我々は罠を克服したのだ。
そう思った束の間、彼らはまた別の罠を仕掛けてきた。彼らは我々の食糧庫付近に、毒入りの食物を置いた。我々は疑うことを知らなかった。なにも知らない仲間たちはその毒入りの食物を食べ、毒によって死んでいった。毒入りの食物は見分けるのが非常に困難であった。我々はどんどん数を減らしてしまった。
我々は迫害されている。
我々はついに決起した。彼らの非人道的行為に耐え切れなくなった我々は彼らとの全面攻撃に踏み切った。
しかし、我々と彼らとでは圧倒的な力の差があった。我々の大敗であった。彼らは強力な武器を携帯していたのだ。我々は武器を所持する発想も資金も無かった。我々は一億玉砕の勢いで挑んだが、彼らには到底敵わなかった。彼らはとどめに毒ガスをまき散らした。我々はほぼ壊滅状態にあった。
しかし、我々の取柄は生命力の強さである。奇跡的に生き延びた一握りの仲間とともに、我々は復興と再繁栄を試みた。今でも我々は、暗く狭くじめじめとした場所でひっそりと生活をしている。
我々が名を名乗らないのには理由がある。彼らの中には、名を言うだけで怯える者が一定数いるからである。しかし、貴殿はそうでないことを信じよう。
我々は、ゴキブリである。
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こんにちは、どこもです。
ゴキブリがテーマの読み切り小説です。ゴキブリ苦手な方は申し訳ありません(笑)。
余談なのですがこの小説のデータが綺麗サッパリ消えてガン萎えしました。というか他のメモ書きまで消えました。
トピ画はフリーイラストです。
読んでいただきありがとうございます!