【小説】最後の手紙
沙耶は薄暗い部屋の中で1人、日記帳を開いていた。
ページを捲るたびに沙耶の心の奥底に潜む感情が浮かび上がってくる。
ペンを握る手は震え、言葉が思うように出てこない。
沙耶は自分の気持ちを言葉にすることが、どれだけ難しいかを痛感していた。
「今日もまた、誰にも本当の私を見せられなかった」
沙耶はそう書き始める。
周囲の期待に応えようとするあまり、自分を犠牲にしていることは気付いていた。
友人たちと笑い合う瞬間も、心の中では孤独が広がっていく。
沙耶はそのことを誰にも話せずにいたのだ。
「もう疲れた、こんな自分を演じるのは。」
沙耶は、日記のページを捲りながら涙が頬を伝うのを感じた。
沙耶の心の中には、暗い影が忍び寄っていた。
自分の存在が無意味に思え、時折、自殺という選択肢が頭をよぎることもある。
「でも、私はまだ生きているんだ。これからも人生は、命は続いていく。何かを変えたい。」
沙耶は、心の中で葛藤しながらも少しずつ自分を取り戻そうと決意した。
日記を書くことで、自分の気持ちを整理し少しでも前に進むための1歩を踏み出そうとしているのだ。
ある晩、沙耶は「最後の手紙」を書くことを決めた。
手紙には自分の苦しみや感謝の気持ち、そして別れの言葉を綴ることにした。
沙耶は、誰にその手紙を渡すべきかを考えながらペンを走らせる。
「もしも私がいなくなったら、みんなはどう思うのだろう。悲しむのかな、それとも忘れてしまうのかな…?」
沙耶は、自分の存在がどれほど周囲に影響を与えているのかを考えた。
そして手紙を書き終えた時、沙耶の心にはほんの少しの安堵が広がる。
自分の気持ちを言葉にしたり残すことで、少しだけ心が軽くなったように感じたのだ。
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