日の出とともに{#1}
俺は今日で人生を終えようと思う。
始まりはそう、雨のち晴れ。
生きていてもいいことなんてない、只々辛いだけだ、毎日同僚には陰口をたたかれ上司にはいびられ続ける。こんな日々を誰がまともに生きられるのだ、そう思っていた。
今日は雨だった、傘なんて持ってきてもいなかった今日はタクシーで帰ろうと思ったのに、偶々通りかかった女性が声をかけてきた
「大丈夫ですか?びっくりしましたよね、今日が雨だったなんて」
と、俺は正直驚いた。あの会社では俺にかかわるとみな、俺と同じ目に合わされるということから誰も俺に話しかけない、関わらないが鉄則になっている。だからこの女性は会社の人じゃないのか、と思っていたら
「えーと、聞いています?」
とすこしこまった表情で女性は俺を見ていた。
「あ、えーと…」
う、そもそもまともに人としゃべるのが久しぶりすぎて何を言うべきかが吹っ飛んでしまった…何を話そう…どうしよう
俺の表情を察したのか女性は
「私の名前は白崎茜といいます、傘をお貸ししましょうか?」
と、ご丁寧に自己紹介と要件を言ってくれた。俺は
「あ、大丈夫ですよ、白崎さん。僕はこのまま帰ります、白崎さんが大変でしょう?」
といった。あぁ、こんなことになるのならもっと誰かとしゃべっておくべきだったな、といまさらながらに反省をした。
「いえいえ!私は大丈夫です。偶々傘を忘れてきていて2本持っているんですよ」
茜さんは言った、俺は少し笑って
「あ、もう雨やんじゃいましたね」
といった、茜さんも気が付いて
「あぁ、ほんとですね!虹出るかなぁ」
と呟いていた。その様子が面白くて笑いを必死にこらえていると
「もう、何笑っているんですか?」
と、言われた。そして、
「あ、そういえば名前聞いていませんでしたね。今更ですがお名前お伺いしてもよろしいでしょうか?」
まぁ、これが最後になるんだからいいやと思って言ってしまった。
「安藤啓二って言います、普通に啓二でいいですよ」
と言う、あー、俺も白崎さんのことを茜さんと呼んでいいのかなと悩んでいると
茜さんが、
「あ、なら私も茜でいいですよ!啓二さん」
と言ってくれた、あぁこの瞬間に俺は茜さんに恋をしたのだろう。今、そう思った。
それから帰りの分かれ道まで喋りながら帰っていった。
茜さんと喋りながら帰るときは、大人になってから初めてだろうというほど楽しかった。しかし、楽しい日々も長くは続かなかった。
茜さんは俺の会社の新人社員で昨日、初めて出社したのだ
茜さんは俺と同じ部署だったらしく、初日から仲良くしていた俺と茜さんの様子が気に食わなかったのか、いつもいじめてきている奴らが混入してきた。
「おう、安藤!もう茜ちゃんと仲良くなったのか?いいのか、茜ちゃんを俺たちの遊びに巻き込んで?」
そう言われてゾっとした、こんなに不安になったのは初めてだろう。
このままじゃ茜さんまでいじめられてしまう、本能的に感じ取ってしまった。
だから帰りに、茜さんに会った時
「ごめん、茜さん。これからは僕と話さないでくれますか?」
ちょっと端折りすぎたようだ、茜さんは困惑と悲しみを目に抱いている。
「え、と、何でか、聞いてもいいですか…?」
茜さんは相当不安そうだった、正義感が強い人だったら困るな、と思いつつも言ってみることにした。
「僕、会社の人たちからあまりいい印象持たれていなくて、だから茜さんもこれからのことを考えると僕と付き合わないほうがいい。そういうことです」
茜さんは一瞬安心したような顔をしたが、すぐに真剣な表情になって、
「私はそう言って自分が傷つきたくないがために貴方を一人にはさせたくないのです」
彼女は続けた
「私は、もしよかったら、これから啓二さんと一緒に人生を共にしていきたいです…」
、、、、、、、、、、えと、それってつまり、告白ということ!???
「あっ、あの、まだあったばかりですけど!よけれb、、!」
あ、ヤバい頬に暖かい何かが伝っている。
「えっ!?な、泣くほど嫌だったんですか??」
わお、茜さん死ぬほど動揺している。
「いや、逆です。死ぬほど嬉しいんです。本当にうれしいんです」
俺たちは幸せだった。俺たちは付き合うことになった。
でもそれを許してくれるほど甘い上司たちではなかった。
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