日の出とともに{#2}
茜がいじめられ始めた。
わかっていた、わかっているはずだった。
しかし予想の範疇を超えているのに気が付いたのは2か月後、クリスマスの日だ。
茜の様子がおかしいことには気づいていた、気にかけてもいた、だがあいつらは
“本当に酷い事”を口止めしてやっていた。俺が会いに行ったころには遅かった。
首を吊ったという、しかし未遂で終わったため、彼女は県外の精神病院に入ることになったという。俺は面会拒否をされた、一応まだ誰とも会わないほうがいいらしい。
あいつらは俺の知らないところで茜を苦しめ続けていた。追い詰め続けていた。
もちろんそれに気づけなかった俺が悪い、しかし俺はもうとっくに限界を超えていた。
何をしようか。何をもっていこうか。どうしてやろうか。あぁしてやろう。
俺の中で地獄絵図が出来上がる。しかし現実とは厄介なもので実現することはできない。
面会許可が出たのは2日後だった。異常に回復が早かったという、俺は嬉しかった。
茜に謝る機会ができた。喋れる機会ができた。俺は退職届も出さずに病院に向かった。
「啓二くん!久しぶり‼」
元気だった、凄く元気だった。生きている、茜は生きている。それだけで嬉しかった。
茜がいない人生なんて考えられない。
「先生はね、一応あと2日はここにいないといけないんだって!」
茜はいつも通りな気がした。
「よかった、茜が無事で、本当に良かった」
茜は言った
「うん、ごめんね?」
何故だろう、儚かった。今にもいなくなりそうだった。でも、茜はここにいる、それだけでよかった。
それから大晦日の前日まで病院に通って茜とずっと話続けた。
大晦日は準備があるから、と会えないことになっていた。
これが間違いだった。彼女から目を離してはいけなかった。
茜に電話をした、楽しみだった、待ちきれなかった。しかし茜は電話に出なかった。
嫌な予感がした。茜は電話には必ず出てくれるはず。他の理由を考えるよりも茜の家へ向かうほうが先に動いていた。
茜は首を吊っていた
俺にはもう対処できない状態だった。茜は死んだ。年を越さずに死んでいった。
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