この世界で息ができない君へ。
———人は見ず知らずのうちに、一人で悩むことがある。
そして、その小さな悩みは次第に大きくなっていき取り返しのつかないことになっていく。
その中でも、愛流の親友———流來は特にその傾向が強かった。
流來はいつも周囲に気を遣い明るく振る舞っていたが、心の奥には深い孤独があったのだと愛流は思っていた。
「愛流!流來が、流來が……!屋上から、飛び降りたんだって」
ある日、母は言葉にならないような勢いで愛流に告げる。
愛流は、最初は冗談だと思って聞いていた。
だが、母はただの冗談でここまで興奮しない。
———だから。
これは、信じがたいが事実なのだろう。
心臓が高鳴り、すぐに現場に行こうとした愛流は、母に聞いた。
「どこの屋上から飛び降りたの!」
「えっと……た、確か、んーと…」
「早くして!早く!」
思いやりというものを忘れて母を怒鳴りつける愛流を見て、母は深呼吸をする。
そして、口を開いた。
「……学校。」
その言葉を聞いた瞬間、愛流はすぐさま学校へと向かう。
足が震え、心臓はますます高鳴るばかり。
しばらくして学校に着くと、周りには警察や救急車が集まっていた。
視界がぼやけ、何も見えない。
流來…!流來…!
その瞬間、視界の端に倒れ込んで意識不明な状態に陥っている流來の姿が。
愛流は駆け寄り、流來の名前を呼んだ。
「流來!!」
しかし、流來は私の声に反応しなかった。
心の中で、自分たちの間にあった喧嘩のことが頭をよぎる。
流來と最後に話したのは、些細なことで言い争った時だった。
あの時、もっと流來の気持ちを理解していれば、こんなことにはならなかったのに。
その時、冷たくなっている流來の手には、愛流への手紙が握られていた。
震える手つきで、それを開く。
流來の整った綺麗な字が、目に飛び込んできた。
『愛流へ
ごめんね、私にはこの世界が辛すぎた。愛流の笑顔が、大好きだった。
でも、私はいつも孤独を抱えていて、どう足掻いても馴染めなかった。
最後に会えなくてごめん。
私の願い、聞いてくれる?
私の分まで生きてほしい。
ただそれだけ。
さようなら、親友。
流來』
涙が溢れ、頬を伝った。
流來の思いが、愛流の心を締め付ける。
流來がどれだけ苦しんでいたのか、愛流には何も気付けなかった。
流來の笑顔の裏に、何があるのか見抜けなかった。
———「ごめん、流來。」
やや震える声で呟く。
流來が愛流に託した想いや希望を、決して忘れない。
これからは、流來の分の人生も背負って生きていく。
流來の手を優しく握りしめ、愛流は涙を流し続けた。
流來に最後に会えなかったことが、心の中で重くのしかかる。
流來の存在が、愛流の心の中で永遠に生き続けるのだと、改めて強く感じた。
そう思って流來の顔を見ていると、安らかに眠っているようにしか見えない。
私は、悲しい気持ちを隠しながらも、穏やかににっこりと笑ったのだった。
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