いつかのメリークリスマス
僕はまだ小学生の直人。僕は腎不全で幼稚園の頃から入院しているから、木の上の星など一度も見たことがない。
そんな僕に希望を届けてくれるのはサンタプロジェクトの人だった。
僕は彼らのことを気に入っていた。こんな義務教育も受けてこれなかった自分でも文章を書けたのは彼らの本のおかげだ。
他の病室の子達が「さんただぁ~!」というので彼らが「さんた」であることを知った。
僕の好きなさんたは「佐藤」さんという心優しい大人の女性だった。
佐藤さんは元々この病院で入院していたらしく、ここの亊は何でも教えてくれる。
毎年僕は12/24を楽しみに、辛い透析も耐えて、耐えて、耐え抜いた。
ついに僕の医者はこう告げた
「もし、臓器移植を受けないなら、もう4ヶ月しないうちに君は…」
僕は「ああ、もう、来年のクリスマスを待てないのか」そう思った。
10月のことだった。
もう家族も、友達も、隣のよく話してくれた中学生のお兄ちゃんとも、会えなくなっちゃうんだ。だから、僕は書いた。
「サンタさんへ。まだ生きたいのにあと三ヶ月しないうちに死んでしまうかもしれません。僕はもっと生きたかった。友達とおかしな話をして、バカみたいに笑いたかった。でも、神様はそれを許してくれませんでした。サンタさん、これまでありがとう」
ある日、もう声もかすれてきた頃、佐藤さんが大きな花束を持ってお見舞いに来てくれた。僕は嬉しかった。
だけど、「ありがとう」も「元気?」も言えなかった。僕は何もできない自分が悔しくて泣いてしまった。
佐藤さんは脇のメモを見てニコッと笑った。そして、囁くように言った。
「今年も君の部屋にプレゼントを渡しに行くから、待っててね」
僕はかろうじて頷くことができた。佐藤さんはそれを見て微笑み、「じゃあね」と病室を出て行ってしまった。
それに入れ替わるように看護師がやって来て、透析の時間だと伝えたあと、僕は寝てしまった。
僕は医者が言うに3週間ほど眠っていた様だった。遺書を書いたり忙しい日々だった。
僕には新聞を読む癖がある。余命宣告から2ヶ月。クリスマスイブの前日だった。いつも通り看護師さんに新聞のコピーを持ってきてもらい、何か興味を引くものは無いかとページをパラパラめくっていたら、ある自動車の玉突き事故のページが気になった。名前は書いてないものの、病院辺りの高速道路で起こったらしい。車の中にはおもちゃや本が入っていたらしい。そのときはただ「ふーん、不運なことがあるものだな」と思っただけだった
クリスマス当日。
隣の部屋から歓声が上がる中、僕は担当医師に呼ばれた
「安楽死がプレゼントだったりしないよな…」と思いながら診察室に入ると、そこには笑顔の担当医師がいた。
担当医師は口を開いた。「なんと臓器提供してくれる人が現れたんだよ」
僕は驚いた。まさか、こんな自分に、と。
佐藤さんが来たら伝えなきゃ、と思って麻酔を受けた。
麻酔が切れた頃、僕はなぜか涙が出ていた。
暫くすると医者がやってきて、検査を始めるも、医者の手が震えている。
僕自体に異変は見つからなかった。
病室に着いてから医師が言った
「さっき、直人君の手を握る女性が見えたんだ」
そう言われて「ふーん」という反応をしつつ、佐藤さんを待ち続けた。
が、佐藤さんは来なかった。
嫌な予感がした。
看護師に聞くと、「佐藤さんは…昨日、亡くなったよ」
僕はそれを聞いて、その場でうずくまって泣いてしまった。ナースステーションが近くにあったから、総出で慰めてくれた。
泣き止んだはいいものの、病室に戻った時、僕は枕に顔を押し当てて誰にも聞こえないように嗚咽を漏らした。
気づいたら眠っていて、次の日の朝になった。僕はそれでも気持ちの修正が付いておらず、脇に置いてあったサンタへの手紙をビリビリに破って捨ててしまった。
遺書を握りしめ、屋上に立った。そこには精神科の足立先生がいた。足立先生はとても優しい医者で、僕も一度お世話になった。
手すりに手をかけたところで話しかけられた。
「君は本当に死にたいのかい?死んでも亡者には会えないよ、残念ながらね」
現実を突きつけられ、足がすくんだ。とにかく、その日は足立先生と話して持ち直し、薬を処方してもらえることになった
僕はそれを一度自殺に使おうとしたが、若かったためか頭が痛くなるだけで死ぬことはできなかった
しばらくして、僕はサンタプロジェクトに参加することを考え始めた。
佐藤さんのことを思い出し、その優しさで今があると思ったから。
僕は退院して、佐藤さんの家族から聞いたお墓まで行き、献花し、手を合わせた。
すると、耳の奥で何かが聞こえてくる
「…だ、い、ぶ、だいじょぶ…君なら、大丈夫だよ」
聞き慣れたあの優しい声だった。涙を拭き、ネットでサンタプロジェクトを調べ、その場所へ向かった
数十年後、僕はすっかりおじさんになった。
僕はサンタプロジェクトに入り、今年もあの病院にプレゼントを渡しに行く。
佐藤さんの思いも込めて子供達に挨拶をする
『メリークリスマス』
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