【小説】3話「部屋の秘密」
3話「部屋の秘密」
俺の目に写ったものは、国家秘密の書物でも、危ない薬の栽培所でも、人間の白骨死体が散らばっている場所でもなんでもなかった。
「写真...?」
そこにあったのは、薄暗い部屋の壁一面に貼られた大量の写真だった。
年齢、得意分野、学歴。
そんな情報が、写真の横に細かく書かれている。
「...これは、?」
かすかに震える声でルミナスに問う。
「此処で働くスパイ達の記録だ。」
ルミナスは静かに答えた。
よく見ると、既にやめた人の写真には、小さな印がついていた。
赤線でも、バツ印も、“死亡”の文字もない。
ただ、端に移されているだけだった。
端に寄せられた写真は、埃を被っていた。
「任務中にいなくなるやつも、多かったんだよ。」
静かな部屋に、換気扇の低い音が響いた。
入口から1歩も動かず、先輩は真っ黒な目で語った。
_その時俺は一つの写真に目を止めた。
「え...?」
そこには、まだ入ったばかりの、俺の写真が貼られていた。
それも、ホームレスになる前の。
「そりゃ驚くよな。」
俺の視線に気づいたルミナスは小さく息を吐いた。
「新人は最初の日に貼られる。」
「...消える前にな。」
後ろから聞こえるその声だけで、多くの人がいなくなったことがわかる。
「でも、なんで此処に俺を、?」
冷静に考えて、入ったばかりの新人をこんな重要な場所へ、連れて行くってどういうこと?
「レヴァナントに、頼まれたんだ。」
「師匠に...?」
その心の声は自然と口に出ていた。
「ああ、理由は聞いてるがお前には言えない。」
俺には言えないような理由なのか?
「連れてきて悪いが、やることが残ってるんだ。一人で戻れるか?」
「えっと、戻る場所って?」
長い迷路をまた通ると思うと頭痛がしてくる...。
「部屋番号を伝えてなかったか、L-12だ。」
「L-12。わかりました。」
部屋番号はわかったが、また迷路に行くのか。
「無理そうだな、じゃあ食堂までついてこい。」
「ありがとうございます、!」
俺の無理そうな雰囲気を汲み取って、連れていってくれることになった。
「まだ、慣れないか?」
「そうですね...。」
怖い先輩かと思ったけど、結構いい人そうだな。
「ちなみに、部屋にはお前含め4人だ。」
「...え?」
「此処には人が多いんだ。すまないが、一人部屋は我慢してくれ。」
てっきり、一人部屋だと思ってた...。
同じ部屋の人、どんな人なんだろうな。
先輩の足音を聞きながら、少しの希望と不安を背負って先輩の背中を追った。
「食堂についたが、ここから先は一人で行けるな?」
「はい。」
さっきより自信のある声で答えた。
「じゃあ、またな」
食堂から伝えられたL-12の部屋に向かう。
「えっと、ここを右に曲がって_」
やっぱり迷路だ。
見ている光景がずっと変わらない。
不安げに点滅する蛍光灯。変わらない風向き。
何もかもが一緒で、なんだか吐き気がしてくる。
『L-12』と扉に書かれている部屋を見つけた。
「ここか...?」
ノックした方が良いのか?それとも他になにか、やり方があるのか?普通に入って良いのか?
わからない。此処のマナーもルールも知らない。
先輩達に聞きたいが、近くに人がいる気配もない。
「どうしよう...。」
俺は扉の前で頭を抱えた。
4話へ続く
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