【小説】3話「部屋の秘密」

4 2026/08/24 14:43

3話「部屋の秘密」

俺の目に写ったものは、国家秘密の書物でも、危ない薬の栽培所でも、人間の白骨死体が散らばっている場所でもなんでもなかった。

「写真...?」

そこにあったのは、薄暗い部屋の壁一面に貼られた大量の写真だった。

年齢、得意分野、学歴。

そんな情報が、写真の横に細かく書かれている。

「...これは、?」

かすかに震える声でルミナスに問う。

「此処で働くスパイ達の記録だ。」

ルミナスは静かに答えた。

よく見ると、既にやめた人の写真には、小さな印がついていた。

赤線でも、バツ印も、“死亡”の文字もない。

ただ、端に移されているだけだった。

端に寄せられた写真は、埃を被っていた。

「任務中にいなくなるやつも、多かったんだよ。」

静かな部屋に、換気扇の低い音が響いた。

入口から1歩も動かず、先輩は真っ黒な目で語った。

_その時俺は一つの写真に目を止めた。

「え...?」

そこには、まだ入ったばかりの、俺の写真が貼られていた。

それも、ホームレスになる前の。

「そりゃ驚くよな。」

俺の視線に気づいたルミナスは小さく息を吐いた。

「新人は最初の日に貼られる。」

「...消える前にな。」

後ろから聞こえるその声だけで、多くの人がいなくなったことがわかる。

「でも、なんで此処に俺を、?」

冷静に考えて、入ったばかりの新人をこんな重要な場所へ、連れて行くってどういうこと?

「レヴァナントに、頼まれたんだ。」

「師匠に...?」

その心の声は自然と口に出ていた。

「ああ、理由は聞いてるがお前には言えない。」

俺には言えないような理由なのか?

「連れてきて悪いが、やることが残ってるんだ。一人で戻れるか?」

「えっと、戻る場所って?」

長い迷路をまた通ると思うと頭痛がしてくる...。

「部屋番号を伝えてなかったか、L-12だ。」

「L-12。わかりました。」

部屋番号はわかったが、また迷路に行くのか。

「無理そうだな、じゃあ食堂までついてこい。」

「ありがとうございます、!」

俺の無理そうな雰囲気を汲み取って、連れていってくれることになった。

「まだ、慣れないか?」

「そうですね...。」

怖い先輩かと思ったけど、結構いい人そうだな。

「ちなみに、部屋にはお前含め4人だ。」

「...え?」

「此処には人が多いんだ。すまないが、一人部屋は我慢してくれ。」

てっきり、一人部屋だと思ってた...。

同じ部屋の人、どんな人なんだろうな。

先輩の足音を聞きながら、少しの希望と不安を背負って先輩の背中を追った。

「食堂についたが、ここから先は一人で行けるな?」

「はい。」

さっきより自信のある声で答えた。

「じゃあ、またな」

食堂から伝えられたL-12の部屋に向かう。

「えっと、ここを右に曲がって_」

やっぱり迷路だ。

見ている光景がずっと変わらない。

不安げに点滅する蛍光灯。変わらない風向き。

何もかもが一緒で、なんだか吐き気がしてくる。

『L-12』と扉に書かれている部屋を見つけた。

「ここか...?」

ノックした方が良いのか?それとも他になにか、やり方があるのか?普通に入って良いのか?

わからない。此処のマナーもルールも知らない。

先輩達に聞きたいが、近くに人がいる気配もない。

「どうしよう...。」

俺は扉の前で頭を抱えた。

4話へ続く

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