【小説】7話「月は何処へ」
7話「月は何処へ」
「......君。」
誰かに肩を軽く叩かれ、飛び起きた。
師匠だった。
「どうしました...?」
「夜ご飯。放送しても来なかったから、呼びに来たんだよ」
「放送・・・?」
「食事の時間は毎日放送で知らせてるんだ」
「あぁ、え!今って何時ですか、?」
「7時くらいだよ」
そんなに寝てたのか...。
「みんな待ってる、行こうか」
みんなを待たせてる...申し訳ない。
_「さぁ、座って」
あれ......。
エクリプスの姿が見当たらない。
任務が長引いているのだろうか。
あの人なら、そんなこともあるのかもしれない。
「手を合わせて...食事開始。」
エアコンが効いてるのか、空気が冷たかった。
今日の献立は、生姜焼きにご飯に、味噌汁。
湯気は立っているのに、食堂には張り詰めた空気が漂っていた。
静かなのは前と同じだ。
それでも、誰も口を開こうとしない空気が、妙に重く感じた。
そんな中、ラディとノクスはいつも通り食事を始める。
そういえば。
食堂を見渡してみたが、エクリプスの姿はなかった。
任務中なのだろう。
あの人ならそんなこともある。
そう自分に言い聞かせ、箸を手に取った。
この空気のせいか、味が薄く感じられた。
気づけば、皿の上には何も乗っていなかった。
「...ごちそうさまでした。」
小さく手を合わせて、食堂を後にする。
部屋に着く頃には、疲れもあって頭はぼんやりしていた。
部屋に戻っても、エクリプスのベッドだけは空いたままだった。
「任務、大変なんだな」
こんなすごい人の記録を任された。それだけで誇らしかった。
明日会えたら、今日の任務のことを聞いてみよう。
聞けることなら、「運が悪い」の意味も。
そんなことを考えながら、布団に潜り込んだ。
スピーカーから流れる小鳥の声に起こされ、時間を確認する。
「7時か。」
また遅れたら嫌だから、早めに朝食の支度をしておこう。
ピンポンパンポーン
『全隊員に連絡します。食堂F-2へ集合してください。繰り返します_』
放送...?
昨日師匠が言ってたやつか。
メニュー、なんだろうな。
地図を片手にF-2に向かった。
「__え?」
誰も食事をしていない。
全員が立ったまま前を向いている。
その先には師匠がいた。
なんでだ...?食事も用意されていないし、空気は冷たい。
とりあえず、空いている場所に立った。
「全員、揃ったな。」
師匠が静かに口を開いた。
食堂には誰一人、声を出そうとする者はいない。
「昨日の任務をもって_」
師匠は一度だけ目を閉じた。
「エクリプスは組織を離れた。」
「...。」
一瞬何を言っているか、理解ができなかった。
組織を、離れた?
俺は思わず、周りを見た。
誰も動揺しているように見えなかった。
ラディアントも、ノクスも、メメントも
ただ黙って前を見ていた。
「質問は受け付けない。」
聞きたいことは山程あった。
『組織を離れる』って、どういう意味だ。
昨日まで普通に任務してたじゃないか。
「以上だ。朝食にしてくれ。」
師匠がそう言うと、食堂の奥にある扉がゆっくりと開いた。
数人の職員が料理を運び始めた。
「手を合わせて、食事開始。」
昨晩と同じ言葉だった。
それなのに、どこか重く聞こえた。
あんなの聞かされたら、メニューなんてどうでも良くなった。
『質問は受け付けない』って...。
......そうだ。
メメントなら、なにか知っているかもしれない。
俺はメメントに視線を移した。
さっきまでフードを被っていたはずなのに、今は外している。
長い前髪は、相変わらず目元を隠していた。
それなのに。
目が、合った気がした。
8話へ続く
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