電魂【4】
袴をはき、羽織を着て、下駄をはく。
ゆっくりと家の戸を開けて、少し開けた街に連れていかれた。
『電』と書かれた看板のある店に入った…
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「電話を受け取って、話をえぇ、はい、って適当に聞いて無難な言葉をかける。
たまに電話じゃなくて直接ここに来る事もあるから。じゃあな。」
そう言われて、おとんはいなくなった。
私は椅子に腰を掛けて、すっと店内辺りを見回した。
机の上の本棚からすっと本を取り出す。
「…ぇ!…ねぇ!」
急に耳をつんざくように脳に声がひびいた。
「あっすいません…」
私はすぐさま謝った。
「あのねぇ、聞いてぇ?深夜に少し大きな声で話しているお隣さんに『静かにしてくれる?』って言っただけで怒鳴られたの~」
「はい、そうですかぁ。」と答える。
「っっ…なんなのその言い方!なぐさめてほしかっただけなのに!」
そういわれ、思い切り水をかけられた。結局、その客以外は今日は来なかった。
夜21時ごろになり、おとんから店の電話を通じて「そろそろ帰ってきていいよ~」と言われたので帰った。
家に帰ってきて、おとんに驚かれた。
「何?雨でもふったの?」
とびっくりされた。
「いや、違うよ。何でもない。
ご飯、今日はいい。ごめんね。」
「分かった。
部屋に布団とか、棚とか日常最低限必要なものは用意した個室作っといた。もう寝な。よく頑張ったね。」
私は用意された個室に向かい、枕にうずまる。
「…やっぱり無理だった…」
私は昔から感情表現が苦手だ。
そのせいでクラスでも浮いていた。疲れた…
でもこれを機に、感情表現が得意になればいいと思ったのに…
道は長いな…
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