〚この花を君に〛
『とわくん。これあげる!』
「…クローバー?」
『かわいいでしょ!』
「うん!ありがとう!ももちゃんだいすき!」
『もものほうがとわくんのことすき!』
「おおきくなったらももちゃんとけっこんする!やくそく!」
『うん、やくそく!』
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「桃望おはよー」
『おはよ』
私に挨拶してきたこの人は幼馴染の翔和。
そして私の好きな人。
「あ、やべ。数学の教科書忘れた」
『高校生にもなって忘れ物かい』
「やばい、どうしよ……」
そんな分かりやすく落ち込みますか……。
『……ちゃんと返してくれるなら貸してあげるけど』
「いいの!?やっぱ桃望は良い奴だな!」
……好きな人が困ってたら貸してあげるに決まってる。
「翔和ー!後輩ちゃんが呼んでるー」
「今行くー!教科書絶対返すから!」
『返さなかったらジュース奢ってもらうから』
「えっ!?」
『ほら、早く行きな。あの子ずっと待ってるよ』
昔から翔和の周りには常に人が集まっていた。いわゆる “人気者”ってやつ。
テストの順位は毎回上位。バスケもサッカーも何でもさらっとこなしてしまう。極め付きはあの爽やかスマイル。あの笑顔でみんなイチコロ。
頭脳や容姿、私にはないものを全部持っている。
「先輩!私、先輩のことが好きです!」
お、校舎裏で告白か。青春じゃん……って、一番見たくないものを見てしまった。
告白しているのはさっきの後輩ちゃん。もちろん相手は私の好きな人。
「ありがとう……でもごめん……」
あんな可愛い子振っちゃうんだ。もったいない。
と思うと同時に、安心している自分がいた。最低だ。
「好きな人、いますか……?」
……え?翔和の好きな人?
「えっと……」
「友里先輩ですか?」
「っ…!?」
友里先輩って……容姿端麗なあの人か。
「図星、ですか……?」
「……うん」
翔和の顔真っ赤。
先輩といる時いつもより楽しそうだった理由はこれか。
翔和のことなら私が一番知ってると思ってたのに。
「先輩なら大丈夫です。頑張ってください!」
「うん、ありがとう」
……翔和もああいう表情するんだ。
いつもの爽やかスマイルとは違う。幼稚園の頃からずっと一緒にいた私でも見たことのない、とても幸せそうな笑顔。
私はこの人の隣にいてはいけない。私なんかじゃ釣り合わない。
今はっきりと痛感させられた。
初めてできた好きな人。初めての失恋。
失恋ってこんな感じなんだ。
ねぇ翔和。
私が昔あげた花の名前、覚えてるわけないよね。
あの日約束したことも忘れちゃったよね。
私は今でも覚えてるよ。
クローバーの花言葉。
それは__。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
思い付きを文章に仕立て上げただけのものなので、だいぶ長くなってしまいました。
そして何とも言えない駄作。
花言葉はとても興味深いものです。
誰かに花を贈るときはその花の意味を調べてからにしましょう。
あなたの大切な人を傷付けてしまうかもしれませんよ。
では、またどこかで。