[小説]「好き」を何度でも 第四章②
前回のお話[第四章①]
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「じゃあ、明日一緒にどっか行こうぜ。」
「え?」
杉浦からの誘いにはとても驚いた。今まで休日一緒にどこかへ行こうと言われたのは、渚実からだけだったからだ。
「はいはい。永島くんは三村と遊ぶので忙しいと?」
杉浦はわざと僕を『永島くん』と呼んだ。そして、わざとらしくムスッとした顔をした。
「違う違う違う!喜んで!一緒にどこへでも行くよ!」
僕は焦ったあまり、すごく変な口調になってしまった。案の定、杉浦は驚いた顔で僕の方を見ていた。ああ…僕は初めての男友達を無くしてしまうかもしれない。そしてしばらくして、杉浦は笑い転げた。
「あのぉ…」
さすがに恥ずかしい。ああ、もう…!自分の口下手さにはうんざりするよ…。
「お前、おもしれぇな!気に入ったぜ!」
「は…?」
気に入った…?僕はこの口下手さのせいでどれだけ友達を失ってきたことか…。いや、今言ったことは訂正しよう。友達になれそうだったところを逃したというべきだ。
「おもしれぇ!やっぱお前最高だな!俺が思った通り!明日は永島の行きたいところへ行こうぜ!どこ行きたい?」
「僕は別にどこでも…。」
初めての男友達と初めて過ごす休日。一緒に入れればそれでいい。そう思った。
「えーつまんねぇの!はっきり言えよ、行きたいところくらい。喜んでどこへでもついて行くぜ?」
そう杉浦が戯けたのにも僕は無反応だった。
ー『はっきり言えばいいじゃない』ー
「どうしたんだよ?今のジョーク自信があったんだけどなぁ。」
「あ、うん…。ごめん。」
ー『はっきり言わないのが一番嫌いよ』ー
昔言われた言葉が蘇って、身動きが取れなくなった。杉浦は何も悪くない。ただ昔のことを思い出して、一人で落ち込んでいるだけ。
「永島、お前本当に大丈夫か?顔色悪いぜ?」
「本当にごめん。ちょっと…」
昔、僕は周りに溶け込むことに必死だった。自分の意見なんてどうでもいい。周りに合わせていればそれでいい。みんなが認めてくれればそれでいい。でも、逆だった。自分の意見を言わないことで、段々と僕はクラスから孤立して行った。そんな時、公園であったあの子は言った。『はっきり言ったらいいじゃない。はっきり言わないのが私は一番嫌いよ。気を使ってるのかなんだか知らないけど、ちゃんと言うべきよ』と…。あの子ともあれ以来会えなくなってしまった。唯一の友達を無くしてしまった。
「マジで大丈夫か、永島?」
僕はまた同じ間違いを犯すところだった。今度こそちゃんと伝えないといけない。
「本当にごめんな、杉浦。明日、どうしても一緒にしてほしいことがあるんだけどやってくれる?」
「お、おう…!」
杉浦、本当にありがとう。