物語 宵に佇む月に恋し
プロローグ
河原にただ一人で泣きじゃくっていたのはいつの日だっただろうか。もう思い出せない遠い昔のような、そんな記憶。
誰からも見られることもない、そんな場所に私はいた。
そういえば、彼も私と同じくらいの歳だったっけ。もう覚えてないや。
——どうせ彼だって忘れている。そうに違いない。もう数年経ってしまって、未練がましい私はただ一目だけでも見ておきたかった。今の彼がどのように過ごし、生きて、笑っているのかを。
いつの間にか夜になっているこの光景も、また久しぶりだ。懐かしさと、もどかしさが先行しあって打ち消しあっている。
空に光る数多の星は、凛然と輝いていた。
思い出の断片であるこの河原でただ一人、そこにいるだけでよかった。
そこに誰かが来たら私は縋りたくなってしまう。そんな弱い人間だから、私は一人でいることを選んだ。
……選んだ、はずなのに……。
彼は私最優先の傍迷惑で優しい人だった。
私が引っ越しするって言ったら眩暈がするって言って中退したんだっけ。もう記憶も朧げだ。
私のこの“秘密”を包み隠さず教えたら、何を思ってくれるだろうか。
わからないけれど、ただ私は月を眺め、ただ一心に希った。
——最期、最期だけは彼に1度っきりでも会わせてください——
どうだったでしょうか?
暇つぶしに不定期投稿するつもりですが、面白かったり、感想があればコメント欄にて書き込んでいただけたら幸いです。
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