【小説】アガパンサス #4
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翌朝、いつものように目覚まし時計に怒鳴られて目が覚めた。
大きな欠伸をして、ベッドから立ち上がった所で違和感に気づいた。
あれ?隕石は?
カーテンを開けて確認してみても、外にはいつも通りの住宅街が広がっているだけで、隕石なんかが落ちた跡はどこにも見当たらない。
「夢、見てんのかな」
自分でも驚くほど掠れた声が出てびっくりした。
そういえば昨日の夜はあまり水分を口にしていなかった。
何度か咳払いをして、いつもの声を取り戻した。
リビングへ行くと、朝食を食べているお母さんを見つけた。
「お母さん、あの隕石って結局どうなったの?」
「隕石…? あぁ、あれね。あれなら昨日の夜に軌道が逸れたってニュースで言ってたわ」
「そうなんだ」
隕石が落ちなくて、日本は助かった。
ってことは、義人に手紙の返事をしなければいけないことになる。
どう返事をすればいいのかも分からないし、会うか手紙かどちらで返事するかも決めていない。
ならもう返事はしなくていいかな。
昨日の手紙が、やり残したことをするためのものであったなら、近いうちに本番の告白をしてくると思うし。
そう思いながら朝食の準備を始めた。
*
学校に着いた。
義人の席に目をやると、まだ誰も座っていないのが見えた。
席にカバンを置き、授業の準備を始める。
(今日は確か部活動がない日だ。)
カバンから筆箱を取り出して机の上に置いた。
(もし放課後に呼び出されても問題はない。)
教室の入り口にふと目をやると、ちょうど義人が入ってくるのが見えた。
そそくさと目を逸らす。緊張して心拍数が多くなっている。
手を胸にやると、それがより一層感じられた。
カバンを机に置く義人の様子は、いつもとなんら変わりがないように感じる。
暑いのか、着ていた上着を脱ぎ、椅子に掛けた。額に少し汗も見える。
いつもと同じように筆箱・水筒・教科書類の順番で荷物を取り出す。
「隕石、逸れたらしいね」
再び前を向いて座っていると、義人から声がかかった。
義人の方を向く。いつの間にか長袖のTシャツ姿になっており、袖も半分くらいまで捲っている。
義人はこちらの顔を不思議そうに覗き込んだ。
あっ、そうだ、話しかけられてたんだった。そう気付くと同時に声を上げた。
「あ、ふぇっ!? え、あ、ごめん今なんか言った?」
取り乱してしまい、つい頬が熱くなった。
「いや、隕石逸れたねって…」
「あ、あれね! ほんとよかった。落ちてたらもう友達とも会えなくなってたし…」
話しながらも、義人はいつも通り遠くを見るようなボーっとした目を続けている。
「…っ……」
『義人とも会えなくなっていたし』という言葉を言いそうになり、慌てて引っ込め、代わりのセリフを言った。
「く、クラスのみんなにも会えなくなってたかもだし…」
すると、義人は怪訝な顔で聞いてきた。
「暑い?」
「え?」
確かに、先程から妙に暑く感じてきて、手で顔を扇ぎだしたばかりだ。
上着を着ているからというのが理由だろう。
「うん」
「でももう秋の終わりだよな?」
なぜかどんどん暑くなってきて、私は吐き捨てるように言った。
「知らないっ、暑いことは暑いんだもん!」
言ってしまってから、急に恥ずかしくなった。
(何今の言い方…)
あまりにも恥ずかしくて、つい義人から顔を逸らした。
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