【小説】腐向け(スト太中)後悔
後悔
任務を終え、帰宅途中に樋口とすれ違った。その時イヤフォンから漏れ聞こえた音楽が耳に残って離れない。その曲は太宰と唯一共感できたものだったからだ。
満月の夜。二人での任務が終わり帰る途中だった。
「手前は好きな人とか居ンのか?」
何気なく口にした言葉。それでも太宰は顔を赤らめた。おや、と思い折角だから聞き出そうとした。すると
「居るよ」
そっぽを向いて話した太宰。変に素直だ、だがこの機会に太宰の弱みを掴みたい中也は気のせいだと思い話を続ける。
「ヘェ。其奴は誰だ?」
素直に答えないだろうと思いつつも聞いてみる。
「えー、言ったら引かない?」
おかしい。太宰がこんなに素直な訳がない。けど、好奇心に負け違和感をスルーする。
「引かねェよ、」
「わかった」
違和感しかない。何かの罠か?そう考えているといつの間にか太宰は離れた場所で待っている。
ゆっくり歩いていきそして、追いつくと太宰から衝撃の答えが返ってくる。
「私は君のことが好きだ」
「は?冗談だろ?」
思わずそう言っちまった。太宰の声はいつもの巫山戯た調子ではなく真剣だった。それでも受け入れられねェからそう言っちまった。
「普通はそういう反応になるよね。わかっていたよ」
そう言うと太宰は走って帰ってしまった。
追いかけようかと思ったが、今起こったことが信じられず暫く立ち尽くしていた。
あれから一年、太宰はポートマフィアを抜け行方不明だ。生きているのか、元気にしているだろうか。曲を聞いてからそんなことばかり考えてしまう。どうしたんだ。俺は太宰が「嫌い」なのに何故太宰の心配なんかしてんだ。そう思うものの、心配でたまらない。そんな日々が一種間ほど続きある日こう思ってしまった。
「太宰に会いてェ」
そこで気づいた。太宰と罵り合うことが本当は楽しかったこと。太宰の作戦が好きだったこと。太宰のことをもっと知りたかったこと。
そう、俺は太宰を好きなンだ。
でももう肝心の太宰は居ない。一年前のあの日もし違う答えを返していたら、そう後悔した。でももう遅い。こんなことグズグズ考えたって如何にもならねェ。諦めよう。前に進む為に。