叶わない恋に奇跡を【3話】
ートン、トン、トン
階段の板が軽く軋むような音を立てながら、私は階段を登ってゆく。
タダで泊めてもらう代わりに、マーサさんのお手伝いをすることになったけど…大丈夫かな?
マーサさんに教えてもらった私の部屋は302号室。
最上階、三階だ。
そんなことを考えながら、歩いていくと、302号室を見つけた。
鍵穴に鍵を差し込み、回す。
ーガチャリ
と音がして、ドアが開く。
まず目に飛び込んできたのは、大きな窓だ。村全体を見渡すことができる。
ちょうど空は夕焼けでオレンジ色のグラデーションに染まっていた。
「綺麗…」
思わず声が漏れる。あの研究所の小さな窓から見えた小さな空とは大違いだ。
やばっ、そろそろ行かないと!
慌てて荷物を置いて、階段を駆け降りる。
一階からはいい香りが漂ってくる。
「アリアちゃーん!やっと来た!」
やばっ、やっぱり遅かった…
「すいませーん!」
階段を降りる足がいっそうはやくなる。
転がるように階段を駆け下りる。
「はい、じゃあアリアちゃん、これ着て調理場来て!」
問答無用、という感じで手渡されたのは、赤いチェック柄の可愛いエプロン。
「えっと…私は何のお手伝いをするのでしょうか?」
突然渡されたエプロンに困惑しながら私は聞く
「料理だよ。」
料理…かあ…一応訓練ではやったことあるけど、できるかな…?
「うちの宿では、一階が食堂なんだ。宿泊客以外にもいろいろなお客さんが来るから、夕方は特に忙しいよ。」
「そうなんですか?」
私がそう言うと、マーサさんはニヤッといたずらっ子のような笑みを浮かべて、
「目が回るくらい忙しいから、覚悟しててよ〜?」
と言った。
私も笑い返して、
「はい!」
と言う。
「じゃああっちで着替えてきな!」
「はーい!」
叶わない恋に奇跡を【1話】
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叶わない恋に奇跡を【2話】
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