【小説】真夏の追憶《一話》
日光が激しく照りつける、真夏。
今日は猛暑日との予報があった。しかし俺は、熱中症の危険があるにも関わらず近所の山へ来た。
蝉の大合唱と共に、川の流れる音や木の葉の擦れあう音が聞こえてくる。あれから5年ほど経ったが、自然はあのときと変わっていない。変わらないものがあるとなんだか安心するものだ。
毎年、夏はここへ来るようにしている。あのときのことが鮮明に思い出せるから──
小学五年生の夏休み、俺は3人の友人と共に近くの山へ遊びに行った。
「おわ、亀や!」
川で遊んでいたところ、あまり見かけない大きさの亀を見つけた。
「…海亀?」
ひとりの友人が言った。
「ほんまや、足が陸亀とちゃうな。でかいし。」
「でもここ山やで。」
「流れてきたんとちゃうんか。」
山の川の上流に海亀がいるという異様な光景を目にした俺たちは興味津々に海亀を突く。
「……なあ、亀って…菌とかやばいんちゃうん。」
あまり亀に触りたがらなかった友人がそう言った。
「あー、確かに。やめよか。」
「せやな。なんか亀も可哀想やし。」
俺たちの亀への興味は段々と薄れていき、川遊びへと戻っていった。
しかし放置しておくのも可哀想なので、俺は亀を下流まで返してやろうと思い、友人たちにこれを告げ下流まで歩いて行った。
「あんま遠くまで行ったらあかんでー!」
という友人の声は、既に遠くになっていた。
下流までは結構な距離があり、俺が亀を下流へ戻したときには既に陽も落ちてきて、空に段々と黄みがかってきた。戻るのが遅い俺を心配したのか、遠くの方で友人たちが俺を呼んでいた。
「すまーん!今戻るー!」
俺はそう言って、友人たちのもとまで帰ろうと後ろを振り返った瞬間、
俺は岩のコケで足を滑らせた。
顔に何か冷たいものが当たって、俺は目を覚ました。身体はびしょびしょに濡れている。目の前は真っ暗で何も見えないし肌寒い。外にいるわけではなさそうだ。
「わーっ」と声を上げてみると響く。洞窟かなにかかもしれない。
暗闇に目が慣れてくると、前方になんとなく明かりが見えた。俺はそのかすかな明かりの方へ向かって進んでいった。
洞窟を抜けた瞬間、眩しくて咄嗟に目を閉じた。ドプンと水中へ入ったような感覚がしたが、息はできている。
ゆっくりと目を開けると、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。
やけに古い町並み。室町時代へタイムスリップしたかのようだ。建物は全て木造、ぎゅうぎゅうに建てられた寄棟型の家々。大河ドラマのセットかと疑ってしまう。
しかも、遠くの方には見たこともない巨大な建物がある。寺?神社?城?何にしろでかい。混じり気のない美しい朱で染められた壁と、差し込む光で輝く青銅の屋根がハッキリと見える。
さらに驚いたことに、なんと目の前を魚が泳いでいるではないか。やはり水中…いや、海中なのか。息はできている。いつの間にか、濡れていた服も乾いているし、何より身体がフワフワと浮いている感覚がした。
しかも、ここが海中だと仮定すると、足が地についているということは海底だ。つまり深海のはずなのだが天上からは光が届いている。光が届くほど浅くない、むしろ海面が見えないほど深いのに。
──もしかして、俺、死ん───…
最悪のことを想像してしまったが、そんなことは絶対ない、と首をぶんぶん振った。死んだ記憶は無いし、足だってちゃんとある。
あたりをキョロキョロと見回していると、少し地面が揺れた気がした。地震だろうか。しかし、そんなことも気にならないほどこの場所は不思議な魅力に包まれていた。
───せや、さっきの洞窟通って帰ろう。
俺はすぐさまさっきの洞窟へ戻ろうと、後ろを振り返った。
しかし、そこに洞窟へ繋がる穴は無かった。綺麗な朱の鳥居と、苔むした…海藻の生えた岩の壁がそこに鎮座しているだけであった。
さっきまであった。あったはず──
「……え、あ…」
後ろの方から声がした。
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こんにちは、どこもです。最近暑いですね。僕は外に出ないインドアを極めた人間ですが。
夏なので真夏から始まる小説です。小説は超初心者なので、暖かい目で見守ってくれたら嬉しいです…。もしかしたら急に消えて無くなるかも。恥ずかしいので(笑)。
トピ画は…冒頭の川のイメージですね。フリー画像です。
読んでいただきありがとうございます!
え〜!!めちゃくちゃ面白い!!心に染みる…。設定が性癖にぶっささってるのでぜひ次話も書いて欲しいです!主人公に声をかけたのは果たして誰なのか…!