【小説】真夏の追憶《二話》
前話→ https://tohyotalk.com/question/544615
━━━━━
後ろの方から声がした。
振り返ると、そこにはホウキを持った子供が立っていた。長く美しい黒髪と、白い巫女服のようなものが綺麗に映える。同い年か…少し下くらいにも見える。少年とも少女とも見えるその子供は、俺をまじまじと見つめて
「……!あの」
その子供は俺に駆け寄ってきて
「さっきは……」
「あ、伊与くん!何してるの。」
若い男の軽快な声が背後から聞こえた。振り返ると、着物を着た青年がこちらに笑いかけていた。笑いかけていた─というより、単に目が細い人のようにも見える。伊与とは恐らくこの子供のことだろう。伊与は慌てて跪いた。この様子を見るに、結構なお偉いさんなのだろう。
「あれ?人間だ。どうやって来たの?早く帰るんだよ。」
「いや、無理なんやけど…」
帰れと言われても困る。川で足を滑らせて、気付いたら洞窟まで流されいて、その洞窟を通ってここへ来た。と言いたいところだが、その洞窟は見当たらない。跡形もなく消え去っている。帰る道が無いのだから早く帰れと言われても無理な話である。
何も言えないでいる俺を見た彼は言った。
「帰れないんだね?」
「そう!です!」
察してくれて助かった。
「…あの〜、てか、ここって、なんなん?…ですか。」
思い切って訊いてみた。
青年は一瞬「えっ?」というような表情をした。
「ここは龍の都だよ。わからないで来ちゃったの?」
「たつのみやこ?」
「うん。あれが龍宮城。もしかして、もう地上では龍宮城のことは忘れられちゃったのかな。」
青年は、あのバカでかい城のような建物を指差して言った。
──りゅうぐうじょう。……龍宮城…?
「え、浦島太郎のあれ?!」
俺が驚いてそう言うと、青年はもっと驚いて、彼の細い目を見開いた。
「え──?!なんで知ってるんだい!!」
互い予想外な状況に困惑している。隣の伊与も驚いているようだ。
「…ちょっと来てもらっていいかな?背中に乗ってね。」
「え、背中?」
彼は数歩離れると、急に発光した。よくあるアニメの変身シーンのようである。しかし光は思った以上に眩しく、手で光を遮りながら目を瞑っていたのでどのように変身していたのかはよく見えなかった。段々と光がおさまってきたのでゆっくりと目を開けると、そこには「龍」がいた。
巨大な青龍である。
龍は「乗って。」とでも言うように首を動かしたので、恐る恐る乗ってみた。乗り心地はちょっと悪かった。鱗がゴツゴツしていて乗りにくい。
「…伊与は乗らへんの?」
「の、乗るなんてできませんから…」
「そっか。」
やはり、かなり位の高い人…いや、龍なのだろう。
龍はゆっくりと飛び上がり、あの「龍宮城」に向かって飛んでいった。
「落ちそうなんやけど!!」
これからどうなってしまうのか恐怖心はあったが、それ以上に俺はわくわくしていた。
「龍宮城」の庭に着くと彼は「人間のような姿」に戻った。しかしよく見ると彼の右の側頭部には角が生えており、人間ではないことが伺えた。
「ここからは君ひとりで入るんだよ。事情はつたえておくからね。」
「待っ…」
彼はそう言って、どこかへ行ってしまった。
「龍宮城」は近くで見ると更に大きく見えた。この超巨大な建物にひとりで入れなど、いきなり言われても困る。心の準備というものがあるのに…。
━━━━━
こんにちは、どこもです。二話ですね。三話くらいまではやる気があるんですよ、三話くらいまでは。そこから続けられるかどうかですよね。
主人公のお名前、次はちゃんと出てきます。次が続いたらの話ですがね(笑)。
トピ画は龍宮城イメージのフリーAI画像です。
読んでいただきありがとうございます!
今回も面白かった〜!!!まさか竜宮城だとは…!✨主人公の名前気になるし…!wktk!!!