空想小説「青鬼」 第19話 片鱗

3 2023/12/20 21:33

オーヴァーは氷河に鎌を向け、切り裂こうとした。が切り裂いた先には、氷河はいなかった。あったのは、氷河が付けていた眼帯だけだった。

オーヴァー「あぁ?何であいつがいねぇでこれがあんだよ!?あいつはどこ行った!?」

そう言い放ち、眼帯を踏み潰そうとすると、氷のように砕けてしまった。

氷河「後ろだよ、お前なら分かるだろ?」

氷河の声を聞いたオーヴァーは振り向いた。そこにいたのは眼帯を付けてなく、今までにない鋭い目つきをした氷河だった。だが、右眼は髪で隠れて見えなかった。

氷河「…久々にこの刃を使おうか。」

氷河は手に持ったナイフを見て言った。

氷河「…雪刀・氷華ノ剣(せつとう・ひょうかのつるぎ)」

そう言い、ナイフを振ると、刃が伸び、刀になった。

オーヴァー「今更姿とか武器とか変えようがもう遅ぇよ!!今の俺は青神様より強い!!」

大声で言う中、氷河は少しホッとしていた。

氷河『…こいつはあの時の自分を知らない。それを知らなかったっていうのはありがたいね。』

オーヴァー「てめぇのそんなもん…」

氷河「氷華一閃・散氷(ひょうかいっせん・ちりごおり)」

オーヴァー「…!!?」

オーヴァーは氷河の攻撃をもろに受けた。その刃は、吹雪のように素早く、氷河の一太刀の他に沢山の氷塊が砕け、破片となった氷のような刃が飛んだ。

氷河「悪い、聞いてなかった。」

氷河はオーヴァーに背を向け、言った。

氷河「お前はどこかに飛ばされてな。」

そう言い、指を鳴らすと、オーヴァーが倒れている所から氷塊が突き上げてきた。

オーヴァー「あ、が…?」

オーヴァーは何が起こったのか分からず、どこかへ飛ばされていった。

氷河『…さて。後はあっちに任せるか…』

ひろし「氷河ー!」

氷河が刀をナイフに戻し、替えの眼帯を付けていると、ひろしが走ってきた。

氷河「だいぶ遠くまで飛ばされてましたよね?大丈夫でしたか?」

ひろし「えぇ。木の枝が衝撃を和らげてくれましたので。そういえばオーヴァーは…」

氷河「あぁ、自分が制裁しておきましたよ。」

ひろしが周りを見渡しながら言うと、氷河は笑顔で言った。

ひろし「そ、そうですか。…やはり、氷河は強いですね。」

氷河「え、そうですか?」

ひろし「えぇ、そうですよ。」

氷河「ははっ、嬉しい事言ってくれるじゃないですか。」

二人で会話する中、氷河は自分の中で呟いた。

氷河『…ったく、何言ってんですか。本当に強いのはひろしさん達なんですよ?自分の事、信じてくれてありがとうな。それに宿の時の不思議な空間、自分を助けに来てくれたんですよね。ありがとうございます。…また会いましょう。』

ひろし「…そうだ!皆さん!」

ひろし達は石化していた仲間達の所へ向かった。皆、石化は解けていた。

美香「ふう〜…二度と石になるなんてゴメンだわ!体のあちこちがバッキバキよ…」

美香は肩を回しながら言った。

たけし「信じてたぜ、ひろし、氷河!」

たけしは明るい声で言った。

卓郎「またお前らに助けられちまったな。ひろし、氷、お前らを信じて良かったぜ。」

卓郎は2人の肩を叩いて言った。

ひろし「皆さんが無事なら何よりです。」

ひろしは笑みを浮かべて言った。

氷河「今回の件で殲滅軍が一人減りましたが、次またいつ襲撃して来るか分からない以上、油断は出来ませんね。」

氷河は笑いつつも、鋭い表情で言った。

美香「じゃ、帰って休みましょ!」

たけし「そ、そうだな…もう帰ろうぜっ…!」

5人に揃った皆は、宿に向かって走っていった。

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月のない新月の夜の中、氷河の攻撃を受け、氷塊で突き上げられて、飛ばされたオーヴァーはかなり遠い所へ飛ばされていた。その場所は森で、円形状の平地があった。

オーヴァー「ハァハァ…クソが…死んでたまるかよ…あいつら…ぜってぇ殺してやる…」

オーヴァーは鎌を杖に、よろよろと歩いていた。

「往生際が悪いぜ?」

氷河のような声が聞こえたや否や、攻撃が飛んできた。

オーヴァー「がっ…!!ハァハァ…誰だてめぇ!!」

オーヴァーは人影に怒鳴った。その影の正体は、闇氷だった。

闇氷「何言ってんだよ。姉さんの事を知ってるなら私がどの立ち位置か分かるだろ?まぁでも、一応言っておこうか。お前は姉さん達の事を舐め過ぎだ。」

闇氷は冷徹な顔で言った。

オーヴァー「ざけんな…俺は油断したんだ、負けてねぇ…おい、さっさと俺を助けろよ!!」

闇氷「はぁ?おま、何言ってんだよ?それにまだ分かんねぇのか?だからな…」

闇氷はオーヴァーの近くで屈み、ナイフの峰(みね)でオーヴァーの顎を持ち上げて目を見開いて言った。

闇氷「お前はここで死ぬんだよ。」

オーヴァー「あ゙ぁ゙!?」

闇氷「『あの日』お前達は姉さんの師に何をした?『あの日』お前達は私に何をした?」

オーヴァー「何言ってやがんだ…!!」

闇氷「しらばっくれても無駄だ。お前も殲滅軍である以上、同罪なんだよ。まぁいい。これで私と姉さんの復讐も一つ達成される。」

闇氷は立ち上がると、左手をオーヴァーに向けた。

オーヴァー「てめぇ!!なにすんだ!!」

闇氷「忘却・滅びの闇」

オーヴァーの問いかけに何も答えず、オーヴァーに黒い炎のような物を飛ばした。

オーヴァー「グァァァァ!!グゾが…下民共が青神様に逆らってんじゃねぇぞ!!!グァァァァ!!!」

オーヴァーは藻掻くが、体はどんどん崩壊していき、体も、魂さえも、滅ぼした。

闇氷「…最後まで馬鹿丸出しだな。下民はそっちだぜ。さて…」

_______________________________________

宿にて、氷河はベッドで横になっていた。

氷河「今回は流石に疲れたな…」

氷河が眼帯を外し、右眼に手を置いていると、闇氷が入って来た。

闇氷「姉さん。」

氷河「闇氷か。どうした?」

氷河は体を起こして言った。

闇氷「後処理、終わったぜ。」

氷河「終わった?サンキュ。」

闇氷「あと、姉さん。そろそろうるさいことになると思うぜ。」

氷河「…そうだな。警戒しておくよ。」

闇氷「じゃ、私は引き続き奴らを監視する。必要になったら呼んでくれ。」

氷河「よろしく頼んだ。」

そう言うと、闇氷は影に消えていった。

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美香「おはよー!」

美香が居間へ入って来た。

水刃「あら、美香ちゃん!ところで、皆はちゃんと休めたの?」

たけし「結構しっかり休めたぜ!」

卓郎「俺もゆっくり休めたぜ…!」

美香「私もよ!」

水刃さんが皆に聞くと、たけしと美香と卓郎は明るく言った。

ひろし「少し体は痛いですが、まぁ大丈夫でしょう。」

氷河「頭思いっきりぶつけたからまだちょっと頭痛いんだよなぁ…」

一方、ひろしと氷河はまだ少し負担が残っている様子だった。

卓郎「まぁ、ひろしと氷はずっと戦ってたからな。それはしゃーねーな。」

たけし「俺、一番最初に石化されちまったからな…」

美香「気に病むことはないわよ。私だって石化されちゃったんだから…」

卓郎「そういや…あれ、やってみないか?」

たけし「ん、あれって?」

卓郎「部屋替えだよ。」

美香「えぇっ!?私絶対嫌よ!」

美香は猛抗議した。

氷河「まぁまぁ、一回やってみようよ、美香さん。」

美香「むぅ…分かったわ…」

美香は渋々受け入れた。

たけし「ひ、一人は絶対イヤだからな…!?」

美香「じゃあ私が一緒にいてあげるわ!」

たけしが言うと、美香が立候補してくれた。

たけし「えっ…」

美香「どうしたの?嬉しくないの?」

美香は笑顔で言った。

たけし「ウウウ嬉しいよっ!あああありがとう美香っ!」

氷河「あー…」

氷河は美香の怖さを改めて感じた。

ひろし「では、今回私は単独と行きましょうか。」

卓郎「じゃ、氷は俺と一緒だな!」

氷河「そうですね。」

ひろし「では、部屋替えも終わりましたし、次の行き先を決めましょう。」

ひろしは地図を広げて言った。

卓郎「次行く所は…蒼双火山だな。」

氷河「か、火山ですか…」

氷河は表情を歪めて言った。

たけし「すごい嫌な顔してるな、氷河…」

氷河「暑いのは苦手ですからね…」

美香「それでも行くからね?」

氷河「それは分かってますよ…」

氷河は諦めた表情で言った。

たけし「じ、じゃあ、行くのか…?」

卓郎「勿論だ!行くぞ、皆!」

水刃「火山に行くの?」

ひろし「えぇ、蒼双火山に。」

水刃「そう。あそこはかなり危険だから十分気をつけてね。」

水刃さんは少し心配している様子だった。

ひろし「火山という時点で既に危険な場所ですがね…」

氷河「あはは…」

ひろしは少し目を逸らして言うと、氷河も少し苦笑した。

卓郎「じゃあ、出発するぜ!」

美香「おー!」

5人は蒼双火山へ向かった。

_______________________________________

卓郎「ここだな。」

卓郎は足を止めて言った。

たけし「うわ、暑い…」

たけしが言った。たけしの言う通り、入口付近から既に熱気が飛んでいた。夏の暑さも相まって、かなり暑かった。

ひろし「当然でしょう、火山なのですから…」

ひろしは半呆れで言った。

美香「それよりも氷ちゃん、大丈夫なの?」

美香は氷河に視線を見て言った。

氷河「暑い…溶ける…」

氷河はかなりうなだれており、かなりバテている様子だった。

卓郎「暑いのさっさと終わらせるのと氷のためにも、手短に終わらせるか。」

5人は蒼双火山内に入っていった。

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その他2023/12/20 21:33:55 [通報] [非表示] フォローする
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氷河「一難去ってまた一難とはこの事か…」


wwwwwおもしれぇw


>>2
そう思ってくれたなら嬉しいね♪


あ氷河〜これまったりのサブ垢な~よろ!


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