空想小説「青鬼」第26話 卵の孵化
たけし「うーーん…水刃さんにいろんな図鑑を持ってきてもらったけど…そんな卵、どの図鑑を見ても載ってないなぁ…」
卓郎「じゃあ、恐竜の卵とか!?」
目を光らせながら言う卓郎に、ひろしは正論を投げた。
ひろし「流石にそれはないでしょう。もう絶滅していますし、現在まで卵が孵化せず、生き残っている物はないでしょう。」
美香「もう、夢のない事言わないの!」
美香はひろしの腕をペシペシと叩いた。
卓郎「流石にな〜…まぁ、孵化させてみたら分かるか。」
たけし「た、卓郎、そんなサラッと言ってるけど、大丈夫なのか…?もしかしたら危険な生物かもしれねぇのに…」
美香「まぁ、雲から降ってきた時点でちょっと怪しいっちゃ怪しいけどね。」
美香は少し苦笑いで言った。
卓郎「いや、きっと大丈夫な気がするぜ。」
氷河「何でそんな事が分かるんですか?」
図鑑を捲(めく)っていた氷河が顔を上げて言った。
卓郎「何か分かんねぇけどそんな気がするんだぜ!」
ひろし「卓郎はたまによくわからない時がありますよね…」
氷河は図鑑を閉じ、呆れた声で言った。
氷河「…仕方ないですね。気乗りはしませんが、自分も手伝ってあげますよ!」
たけし「氷河も楽しみなんじゃねぇか…!」
たけしは心做しかニコニコしている氷河にツッコミを入れた。
卓郎「んじゃ、先に行ってるぜ!」
卓郎が卵を抱えて2階へ上がっていった。
氷河「あっちょっ、待ってくださいよ!」
氷河も慌てて卓郎の後を追った。
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その夜、卓郎と氷河は卵を座って取り囲んで見つめていた。
氷河「…で、孵化させるって言ってましたけど、どうするんです?何か方法でもあるんですか?」
氷河が立ち上がって言った。
卓郎「んー、分かんねぇ。」
卓郎の言葉に、氷河は思いっきりコケた。
氷河「んがっ!た、卓郎さん…」
卓郎「でも、卵だから温めればいいんじゃねぇか?」
氷河「えぇ…そんなんで」
卓郎「そうと決まれば!」
氷河「えっちょっ…」
卓郎「これでどうだ!ヒートエリア!」
卓郎が両腕を広げると、部屋がどんどん暑くなっていった。
氷河「ま、まぁ確かに暑いですけど…こんなんで孵化させられるんですか…?」
卓郎「きっと大丈夫だぜ!」
氷河「これ自分大丈夫かなぁ…」
暑いのが苦手な氷河は、小声で呟いた。
氷河「うぅ…」
氷河は辛そうに寝返りを打った。やはり、かなり寝苦しいようだ。
卓郎「早く元気に生まれてきてくれよな…うーん…」
卓郎は寝言でそう呟いた。
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AM2:00、卓郎は目が覚めた。
卓郎「ふあぁ…まだ夜なのに目が覚めちまったか…ん…?」
ふと、卵に視線を送ると、なんとヒビが入っていた。
卓郎「あああああっ!!?」
これには卓郎も声を上げずにはいられなかった。
氷河「なっ!?な、なんですかいきなり…」
卓郎の声で目覚めた氷河は、寝ぼけた声で言った。
卓郎「氷!見てくれ!卵が!!」
卓郎に言われて、初めてそれに気づいた。
氷河「わぁ!卵にヒビが!!」
見た途端、氷河の眠気は明後日の方向へ飛んでいった。
卓郎「きっともうすぐ生まれるんだぜ!!」
卓郎が嬉しそうに言った。
氷河「部屋を暖かくするのって意味があったんですね…」
半分呆れた声で言った。
卵がピシピシと音を立てた。2人が見守る中、突然強い光が溢れた。2人は思わず、顔を伏せた。
「ハク!ハク!」
鳴き声がした。目を開けると、そこには白色ベースに、所々が鮮やかな緑がかった青色に染まった、とても可愛い生き物が座っていた。
卓郎 氷河「か、か、か、かわいいっ…!」
2人がそう言ってしまうほど可愛かった。
「ハク!」
卓郎「一体何の生き物何だ?」
卓郎が可愛い生き物を見て言った。
氷河「んー…例えるなら、猫と狐を足して2で割った感じですかね?」
卓郎「例え方よ…ま、いっか。はじめまして、だな。俺は赤城卓郎だ。それでこっちが、」
氷河「雪原氷河です。これからよろしくお願いします!」
氷河は正座の状態で礼をした。
「ハク?ママ、パパ!」
可愛い生き物は笑顔のような顔で言った。2人はそんな呼ばれ方をしたことにかなり驚いた。
卓郎「パ、パパ!!?」
氷河「マ、ママ…ですか…!?で、出来れば氷河と呼んで欲しいのですが…」
卓郎「そ、そうだな…俺も出来れば卓郎って呼んでほしいな…」
「ハク?ヒョウ、タク!」
可愛い生き物は言葉を理解したのか、名前で言った。しかし、二文字までしか言わなかった。
卓郎「タ、タクって俺の事か?俺は卓郎だぜ?タ・ク・ロ・ウ!」
「ハク?」
可愛い生き物は可愛い目で卓郎を見つめた。
卓郎「うっ…やめてくれ。俺、その目には弱ぇんだよ。」
卓郎は少し目を逸らして言った。
「ヒョウ!タク!ハク!」
卓郎「ハクって何なんだろうな?」
氷河「この子の鳴き声なんじゃないですか?そんな鳴き声で鳴く生き物は見た事無いですけど。」
氷河は可愛い生き物を見ながら言った。
卓郎「じゃあ、折角だから名前をつけてあげようぜ!」
氷河「あ、いいですね!じゃあ、卓郎さんが決めて下さい!」
卓郎「え!?あ、そ、そうだな…ハクって鳴いてるからハクでいいんじゃねぇか?」
氷河「ん〜…何か単調ですね…」
卓郎「わ、悪かったな!じゃあ氷が考えてくれよ!」
氷河「うーーん、そうですね…」
氷河は経緯を振り返った。雲から落ちてきた卵、見た目、鳴き声…
「ハク!」
氷河「そうだ!じゃあハクモはどうですか?雲から落ちてきましたし、鳴き声もハクですし!」
卓郎「ハクモなぁ…いいんじゃねぇか?」
氷河「君もそれでいい?」
「ハク!」
氷河「じゃあ、決まりだね!」
ハクモ「ハク!ハク!」
ハクモが氷河の元へ飛びついた。氷河はくすぐったさそうな声を上げた。
氷河「ははっ、くすぐったいよ、ハクモ!」
卓郎「だが、流石にまだ夜だからな。眠い…」
卓郎はあくびが混じりつつ言った。
氷河「そうですね…」
氷河も眠そうに目を擦った。
ハクモ「ハクゥ〜…」
卓郎「ハクモも眠いのか?」
ハクモ「ハク…」
氷河「んー…じゃあ、自分のベットで寝る?」
ハクモをしばらく横目で見た後、そう言った。
卓郎「え、氷はどうするんだ?」
氷河「自分は座って向こうで寝るよ。ハクモ、ここで寝てもいいよ。」
ハクモ「ハク…?」
心配そうな顔で見上げるハクモに氷河は優しく言った。
氷河「そんな目しないで。大丈夫だからさ。」
ハクモ「ハク…」
氷河「じゃあ卓郎さん、ハクモ、おやすみ。」
そう言い、静かに部屋の奥へ向かった。
卓郎「あぁ、おやすみ。」
ハクモ「ハクゥ…」
ハクモはちょっぴり不服そうな声を出した。卓郎は部屋の奥を見つめて呟いた。
卓郎「…氷の奴、大丈夫かな…あいつ、よく悪夢見るからなぁ…」
ハクモ「ハク…?」
卓郎の発言を聞いたハクモは不安そうな顔で卓郎を見上げた。
卓郎「ん?あ、きっと大丈夫さ。まぁ、もしかしたらハクモに心配をかけまいっつう氷なりの気遣いなのかもしれねぇけどな…」
ハクモ「ハク…」
数十分後、卓郎は眠りについていた。そんな中、ハクモは卓郎の言葉が不安で眠れなかった。
氷河「ううっ…」
ふと、ハクモの耳に苦しそうな氷河の声が聞こえてきた。
ハクモ「ハク!ママ!」
ハクモはベットから飛び降り、声の方へ走っていった。
氷河「うう…くっ…」
ハクモは氷河を見つけた。氷河は壁にもたれ掛かって寝ていた。が、表情がかなり苦しそうだった。やはり卓郎の言う通り、悪夢に魘されていた。
ハクモ「ハ、ハク!ママ!」
ハクモは氷河を心配して周りをウロウロしたり、前足でポンポンと叩いたりするが、当然、なんの進展もない。
氷河「つっ…あぐっ…」
ハクモ「ハ、ハク…ハクッ!!」
ハクモは意を決して、氷河の腕にカプッと噛み付いた。
氷河「い、痛っ…!」
おかげで氷河は悪夢から開放された。
氷河「ま、また悪い夢見てたな…それに今、噛まれたような…ん?ハクモ?どうした?」
しょんぼり…というか反省してそうなハクモを見つけた氷河は小首を傾げて言った。
ハクモ「ハク…」
氷河「ん…?何落ち込んで…」
そう言い、ふと右腕の噛み跡を見た氷河は、なんとなく察した。
氷河「もしかして、自分を起こしたの、ハクモか?」
ハクモ「ハク…」
ハクモはしょんぼりした様子で頷いた。
氷河「…俺を悪夢から覚ましてくれたのか…?」
氷河は少し半信半疑で言った。
ハクモ「ハク。」
ハクモは氷河を見上げて言った。
氷河「…そっか。ありがとな、ハクモ。」
そう言い、氷河は優しくハクモの頭を撫でた。
ハクモ「ハク…!」
ハクモは嬉しかったのか、肩に飛びついてスリスリした。
氷河「ははっ、くすぐったいって…」
氷河は卓郎や皆を起こす訳にはいかないので、小さな声で笑った。その時の氷河の目は少し寂しそうだった。その後、氷河はハクモを抱えてベットに送った。さっきの場所に戻ろうとした時、ハクモが氷河の服の裾をくわえた。
氷河「ん、どうしたのさ?」
ハクモ「ハク!ハク!」
ハクモがベットの上で鳴いた。
氷河「…まさか、一緒に寝て欲しいの…?」
ハクモ「ハク!」
氷河「いやでも、最近マシになったとはいえ、自分、寝相悪いからハクモの事蹴っちゃうかもしれないし…」
遠慮がちに言うと、ハクモは続けて鳴いた。
ハクモ「ハクッ!」
氷河「それでも来てほしいの…?」
ハクモ「ハクッ!ハクッ!」
結局、氷河はハクモに押し負けた。
氷河「…しょうがないな。文句言わないでね?」
ハクモ「ハク!」
氷河はベットの中に入った。
氷河「よいしょっと…じゃあおやすみ、ハクモ。」
ハクモ「ハク!」
氷河とハクモは深い眠りに落ちていった。
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翌日、居間にはひろし、たけし、美香、水刃さんの4人がいた。
美香「卓郎と氷ちゃん、遅いわね…いつもならもう降りてきてると思うんだけれど…」
水刃「そういえばそうね…卓郎君と氷河ちゃん、それに卵も大丈夫かしら。」
ひろし「きっと大丈夫ですよ。それに卵が一日やそこらで孵化する事はありませんしね。」
たけし「それもそうだな…!じゃあ、とりあえず二人の部屋へ行くか…!」
4人は卓郎と氷河の部屋へ向かった。
ひろし「入りますよ。」
卓郎「はいよー!」
ひろしが戸を開けると、そこには卓郎がいた。
卓郎「お、皆揃ってどうしたんだ?」
たけし「お、起きてるなら降りてこいよなっ…!」
卓郎「悪ぃ、すっかり忘れてたぜ。」
水刃「卵の事が心配で来ちゃったわ。」
ハクモ「ハク!」
ハクモがベットの影から現れて鳴いた。
たけし「そうそうハクなんだよ…!」
美香「確かにハクね!」
ひろし「そうでs…えっ…?」
ひろし たけし 美香 水刃「ええええええええっ!!?」
4人はハクモを見て吃驚仰天。4人はハクモの所へ集まった。
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