空想小説「青鬼」 第12話 第二ラウンド

1 2023/12/05 22:59

氷河「…あのさぁ…お前…勝った気でいるだろ…?だとしたら…お前は愚かだよ…」

樹木鬼「ほぉ?それはどういう事だ?」

氷河「自分は…使える、って言うか…お前に…ずっと…叩かれて…いる間…準備してたんだよ…この技をな…!ヴァルスノウ…!!」

氷河が両腕を上に上げると、雪が降り出した。その雪が氷河の体に当たると、赤く腫れた所がみるみる治っていくのだ。

樹木鬼「か、回復…だとっ…!?」

雪が止んだ頃には、氷河の傷の3分の2は治っていた。

氷河「さて…喉の調子もお前に打たれた腫れだの痛さもあらかた治ったし、リマッチと行こうじゃないか。」

氷河はナイフの先を樹木鬼に向けて言った。

樹木鬼「ふん、まぁいいだろう。もう一度捕まえてくれる!」

そう言い、素早く腕を伸ばし、氷河を捕まえようとした。

氷河「…氷霧(ひょうむ)。」

氷河の足元から氷のように冷たい霧が立ち込めた。その霧のせいで焦点が定まらず、樹木鬼の腕は霧を掴んだ。

樹木鬼「チッ、小癪な…!」

樹木鬼は寒さも相まって動きが鈍っていた。氷河は霧の中、ひろしを呼んだ。

氷河「ひろし!」

ひろし「な、なんでしょうか?」

氷河「お前のその分析能力、この霧を貫通して使えるか?」

ひろし「え、えぇ、一応使えます。氷河と樹木鬼の位置は把握できて…ん?何ですかあの右下の反応は…」

ひろしのその言葉に、氷河は反応した。

氷河「右下?右下に何がある?」

樹木鬼「…!!!」

樹木鬼は目を見開いた。

ひろし「先程樹木鬼が出てきた木の右下から妙な反応があるのです。何かの核のような物があるのですよ。」

氷河「分かった。右下だな!」

樹木鬼「ま、待て!!」

樹木鬼は制止したが、当然氷河は聞かない。右下に向けてナイフを構えた。

氷河「いけえぇ!」

低空飛行で飛んでいくナイフは右下に向けて飛んでいった。

樹木鬼「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

後ろで断末魔のような声が聞こえた。霧を消すと、青色の球体にナイフが突き刺さっていた。

氷河「これは…」

結界が、消えた。

卓郎「よっしゃあああああ!!!」

卓郎が歓喜の声を上げた。

美香「すごいじゃない氷ちゃん!」

美香は氷河の事を称賛した。

たけし「一時はどうなる事かと思ったぜ…!」

たけしも興奮した様子で言った。

ひろし「全く…また無茶をしてるじゃないですか…」

ひろしは呆れた声と心配した声が混ざったような声で言った。

氷河「いや〜、何とかなりましたよ〜」

卓郎「死にかけたのにのんきに言うなぁ、お前…」

卓郎は呆れながら言った。

氷河「あはは…」

美香「すごかったわよ、あの〜、あれ、何だっけ、何とかナイフ…」

氷河「霜符・サウザンナイフレインな。」

氷河は技の名前を言った。

卓郎「なぁ、俺もああいう感じの技出してみてぇんだけど、どうすれば出来るんだ?」

卓郎が言うと、美香も前のめりに言った。

美香「あ、私もやってみたいかも!」

たけし「俺もやってみたいかもな…」

ひろし「私も少し興味がありますね。」

ひろしとたけしも興味がありそうに言った。

氷河「あー、そうですね。折角なので、説明するのは苦手ですけど、軽く教えますよ。」

氷河は斯々然々説明していった。

卓郎「なるほどな。何となく分かった気がするぜ。」

氷河「説明疲れる…」

氷河は語彙力があまり無いので、説明に疲れてしまった。そんな中、どこかから声が聞こえた。

樹木鬼「お…前…ら…」

どうやら樹木鬼はまだ完全には死んでいなかったようだ。だが、幹の3分の1は凍っていた。

美香「あら、まだ死んでなかったのね。」

氷河「そうですね…上位種(青神)には効果がすぐには現れないのかな?」

氷河は少し首をかしげながら言った。

樹木鬼「我…を…コケに…した罪…その…命を持って…」

たけし「…なんか嫌な予感が」

樹木鬼「死ぬがいい!!!」

樹木鬼は巨大な蔓を壁に叩きつけた。その瞬間、蒼凪山にあったような揺れが起こった。

卓郎「うわっ、何だこの揺れ!?」

氷河「美香さん!今すぐ扉に突撃して下さい!!」

美香「えっ?わ、分かったわ…!」

美香はさっき壊せなかった扉に拳に属性を付与させて殴りかかった。何度も殴打すると、扉に穴が開いた。

美香「開いたわよ!」

氷河「分かった!行きますよ、皆さん!」

氷河は走り出した。ひろし達も後に続いた。

ひろし「氷河、これは一体どういった風の吹き回しなのですか?」

ひろしは氷河に聞いた。

氷河「水刃さんが言ってたろ!?『一度大きな衝撃を入れると、多分道中が全部崩れると思う』って!!」

卓郎「あぁ!そういやそんな事言ってた!!」

卓郎達は水刃さんの言葉を思い出した。

たけし「じじじじゃあ、いいい今すぐ出口が塞がれる前に脱出しようぜ!!」

美香「言われなくたってそうしてるってーの、たけし!!」

氷河「右に同じっ!!」

5人は出口まで全力ダッシュで出口へ向かった。

_______________________________________

出た頃には全員へたり込んでいた。

美香「こんなに…全力疾走したの…久しぶりだわ…」

氷河「な…何言ってんですか…昨日…蒼凪山で走ったばっかじゃないですか…」

氷河は息を切らしながら言った。

ひろし「入り口は…塞がれてしまいましたね…」

美香「うーん…もし青鬼が来たらここに来て倒すっていうのを考えてたけど…これじゃ無理ね…」

たけし「いや…距離遠かったら無理だろ…」

たけしは美香にツッコミを入れた。

美香「まぁ、確かにそうね…」

美香はあっさり納得した。

卓郎「なぁ、それより早く戻らないか…?さっきからまだ嫌な予感がするんだよな…」

卓郎が不安げに言うと、ひろしも口を開いた。

ひろし「私もまだ少し青光の効力が残っているから感じるのか、それとなく嫌な予感がしますね…」

たけし「ふ、二人の勘ってよく当たるからな…早めに戻ろうぜ…」

たけしは震えながら言った。

氷河「それなら早く戻りましょうか。」

5人は宿へ向かって走り出した。

卓郎「はぁ、はぁ…やっぱり遠いな…」

卓郎は少し辛そうな表情を浮かべながら言った。

たけし「そ、それにさっきも走ったからスタミナが…」

美香「つべこべ言わずに走るのよ!」

美香はへたれ掛けてるたけしを叱咤しながら走った。

氷河「…自分もなにか嫌な予感がして来ましたね…」

氷河は少し顔をしかめて言った。

ひろし「もうすぐ宿です!もうひと頑張り行きましょう…!」

ひろしも皆を鼓舞し、走っていった。

たけし「や、や、やっと着いたぜ…」

たけしがへたり込んだ瞬間、聞き覚えのない声が聞こえた。

???「やっと来たかよ、雑魚どもがよ。」

卓郎「!?誰だっ!!」

卓郎は声を荒らげて言った。

美香「…そこよ!」

美香は斜め上を指さした。その方向を見ると、ドクロのはちまきを付けた男が空中に浮いていた。しかも、腕を見ると、水刃さんが捕まっていた。

たけし「あっ、水刃さん!」

たけしは声を上げた。

水刃「み、皆!」

水刃さんは皆の方へ腕を伸ばして言った。

ひろし「く、空中に浮いている…!?」

ひろしは信じ難い目で男を見た。その男を見た氷河もまた、呆然としていた。しかし、それは驚きではなく、動揺だった。

氷河『あいつは…?いや、迷う必要はない。多分考えは合ってる。』

   「…お前、何者ですか。」

氷河は一瞬、動揺を顔に出したが、すぐに動揺を隠し、男を睨みつけて言った。

美香「名を言いなさい、そこの奴!」

美香は男に指をさして言った。

オーヴァー「あ?んだよ二人共怖い顔しちゃってよぉ。そんなに知りたいなら教えてやるよ。俺はオーヴァーだ。」

空中に浮いている男、オーヴァーはニヤリと笑いながら言った。

卓郎「おいオーバー、水刃さんをどうする気だ?」

卓郎はオーヴァーを睨みつけて言った。

オーヴァー「オーバーじゃない!オーヴァーだ!上唇を噛んで発音するのがコツだ!」

オーヴァーはしょうもない事でキレた。

ひろし「そんな些細な事…」

氷河「んな些細な事でキレんなよ…」

ひろしと氷河が同時に言った。

オーヴァー「まぁいい。んじゃ…」

水刃「ちょ、な、何するの…!?」

ひろしと氷河が呆れる中、オーヴァーは水刃さんに強引に何かを飲ませた。

卓郎「ちょ、何してんだ!!」

美香「今何か飲ませてたわよね!?」

たけし「ぜ、絶対やばいやつだって…!!」

ひろし「い、一体何を…!?」

氷河「あいつ…まさか!?」

水刃「き…キャアアアアアアアアアアアアア!!!!」

5人の嫌な予感は的中し、水刃さんが悲鳴のような奇声を上げ、黒いオーラのような物が水刃さんから出てきた。その影響か、土煙が辺りに広がった。

たけし「う、うわぁっ!」

たけしは突然の土煙に腰を抜かした。

氷河「な、なっ!?」

氷河も驚き、周りを見渡した。

卓郎「な、何も見えねぇぜ…!」

卓郎は突然の展開で困惑していた。

ひろし「皆さん、バラバラにならないように一箇所に固まりましょう!」

ひろしは最初こそは戸惑ったが、すぐに的確な選択肢を出した。

美香「分かったわ!」

ひろしの言葉で、4人はひろしの元へ集まった。数十秒後、ようやく土煙が晴れた。

たけし「や、やっと煙が晴れたぜ…って…あれは…」

土煙が晴れた後、目の前には影のような人型が5体いた。しかしそれをよく見ると、とんでもない事に気づいた。

美香「わ、私達の…影…!?」

美香の言った通り、その影をよく見ると、ひろし、たけし、美香、卓郎、氷河の姿だった。

氷河「…それだけじゃない…水刃さんを見ろ…!」

氷河は上を見上げて言った。

美香「えぇ…!?何よあれ!?」

卓郎「な、何だよあれ…!?」

氷河「あれはマジでヤバい…!!」

空を見上げると、禍々しいオーラに包まれた水刃さんが浮いていた。

たけし「な、何だあの禍々しいオーラは…!?ガタガタガタガタ」

たけしは恐怖で満ちた声を上げた。

オーヴァー「んじゃ、俺は高みの見物でお前らが殺される所を見ておくとするかよ。無様に死ねよ?」

そう言い、宿の屋根であぐらをかいて座った。その様を見た氷河は形容し難い苛立ちを感じた。

氷河『あの野郎…とことんクズ野郎だな…!!!』

   「ん…?青光…?」

周りを見渡すと、いつの間にか青雅洞窟にあった青色の光が漂っていた。

オーヴァー「あぁ!?何でこれがあんだよ!?」

オーヴァーも想定外の事らしく、驚いていた。

美香「これで戦えるんじゃ…!」

美香はやる気に満ち溢れた声で言った。

氷河『何でここに青光が…あいつがやったわけじゃ無さそうだし…ご都合主義ってホント素敵…って奴か…』

そんな事を考えていると、黒いオーラを纏った水刃さんが氷河達に腕を向けた。すると、5体の影が襲い掛かって来た。

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その他2023/12/05 22:59:17 [通報] [非表示] フォローする
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氷河「…とてつもなくマズイ事になった…」


>>1
なにやら大変そうだな。手伝うか?

@tukuru の本アカウント


>>2
霞「…いや、氷河達なら大丈夫です。ここの戦いがあれの初使用ですから。正確には次の回が初使用回だけど…」


>>3
ならそれを楽しみに待っている


>>4
霞「じゃ早速サムネ描いて来ます!」


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