空想小説「青鬼」 第10話 連戦
氷河「美香さん!」
卓郎「…氷。」
卓郎が心配する氷河の肩に手を置いて言った。
氷河「なんです、卓郎さん?」
卓郎「美香があれくらいでやられると思うか?」
氷河「いやまぁ、たしかに美香さんは強くて頑丈ですけど、壁にヒビ走るくらいの衝撃受けてるんですよ?流石の美香さんでもかなり痛いんじゃ…」
氷河が話していると、土煙から人影がゆっくり見えてきた。
美香「何だったのかしらぁ?今のはぁ?」
氷河「えええぇぇぇ!!?」
氷河は何食わぬ顔で出てきた美香を見て驚愕した。青鬼も心做しか驚いているように見えた。
美香「まぁでも、受け身を取ってたとしても、素の状態だったら無傷でいられなかったかもね。属性様々ってもんよ。」
美香はゆっくり歩きながら続けた。
美香「でも、その攻撃力じゃあ私を倒す事は出来ないわ。私が攻撃の手本を見せてあげる!」
美香は足を止め、腕を上に伸ばし、掌を上に向けた。すると、巨大な球体が出てきた。
美香「攻撃ってのは、こうするものよ!」
高らかにそういった瞬間、巨大な球体を青鬼に向かって投げつけた。当たった瞬間、途轍もない爆発が巻き起こり、青鬼は塵も残らず消えてしまった。そして、結界も消えた。
美香「あら、耐久面は無いのね…もっと試したかったのだけれど、残念ね…」
美香は少し物足りなさそうに皆の方に戻っていった。
氷河「美香さん、体大丈夫ですか?」
氷河は戻ってきた美香にすぐに聞いた。
美香「大丈夫よ、氷ちゃん。でも、何で聞いたの?」
美香は氷河に聞き返した。
氷河「いやだって、壁にヒビ走るくらいの衝撃受けたんですよね?あんなの、絶対痛いじゃないですか…!」
たけし「痛いどころじゃすまねぇと思うけどな…」
美香「素の状態だったらダメージは負ってたかもね。ほぼ無傷でいられた理由は属性のおかげよ。サイコキネシスで衝撃を和らげたのよ。」
氷河「あ、あぁ…」
氷河はいまいち理解していないような反応をした。卓郎は美香の事を称賛した。
卓郎「流石だぜ、美香!」
美香「ふふっ、当然よっ!」
美香は卓郎に褒められて照れながら言った。
ひろし「おっと、次が来たようですよ。」
見ると、青紫色のスライムのような奴がいた。しかし、その体には目が大量にあり、中々トラウマになりそうな見た目だった。
氷河「うわぁ…」
たけし「何だよあのグニグニした体に大量の目…トラウマものだぜ…ガタガタガタガタ」
卓郎「た、たしかにな…俺でも引いたぜ…」
氷河とたけしと卓郎は見た目にガッツリ引いていた。
ひろし「では、私が行きましょうか。」
ひろしが立ち上がって言った。
美香「あら、今回はひろしが行くのね。」
氷河「頑張って下さいね。」
ひろし「えぇ、任せて下さい。」
ひろしは優しい笑顔で言った。そして前へと進み、フィールド内に入っていった。
ひろし「私が相手です。」
ひろしは静かに、それでいてよく通る声で言った。
美香「あんな気持ち悪い目玉野郎なんかさっさと倒しなさいよねー!」
美香は拳を突き上げて言った。
ひろし「了解しました。正直、私もあまり見たくないビジュアルですからね…」
ひろしはスライム状の青鬼から目を逸らして言った。
氷河「やっちゃって下さい!そんなスライムなんか!」
氷河も腕を上に突き上げて言った。
ひろし「えぇ、任せて下さい!さぁ、勝負です!!」
ひろしは珍しく声を上げた。スライム鬼は自らの体を飛ばしてきた。
ひろし「この程度では当たりませんよ。」
そう言い、ひろしは軽い身のこなしで避けていく。
氷河「速っ!ひろしさん運動神経も抜群なんですか!?」
たけし「そうだぜ。ってか、ひろしの足の速さは前の下校と森まで走った時に見ただろ…」
卓郎「ひろしは俺と同等に走れるからな。頭も良い、運動神経も抜群。」
美香「つまりは欲張りハッピーセットって事よ!」
氷河「そ、そうですね…」
戦いを見ると、ひろしはまだ余裕そうな顔でいるのに対し、スライム鬼はかなりバテているように見えた。ひろしは溜息をつき、口を開いた。
ひろし「さて、もうそろそろ終わりにしましょうか。最初に言った通り、あまり見たくないビジュアルですからね。貴方は水属性。最早、その体は水そのものと言ってもいいでしょう。それならばこちらにもうってつけな策はあります。まずは…内凍化・連弾(ないとうか・れんだん)!」
ひろしは細かな氷塊を大量に作り出し、それをスライム鬼目掛けて飛ばした。それがスライム鬼の体にめり込むと、そこから体が凍っていく。
ひろし「では、終わらせましょう。崩れ朽ちて下さい!!」
ひろしは巨大な氷塊を凍ったスライム鬼にぶつけた。スライム鬼は氷塊と共に砕けて無くなってしまった。
たけし 氷河「氷漬けにしたスライム鬼を叩き割って砕いたあああああぁぁぁぁぁ!!!?」
たけしと氷河は目を見開いて驚愕して言った。そして、結界が消えた。
ひろし「やるからには徹底的にやりますよ、私は。」
たけし「ひろし、一体どんな考え方をしたらあの倒し方になるんだよ…」
たけしは半ば呆れながら言った。
ひろし「スライムならば、水分が多いと思いましてね。それなら凍らせて砕けば手っ取り早く終わると思ったのですよ。」
美香「良かったわよ〜、ひろし〜!流石は学年1の秀才ね!」
美香はひろしの考えを称賛した。
氷河「まーた来ましたよ。一体どこから湧いて出てるんですか、あいつらは…」
正面を見ると、また青鬼がいた。それも、体がガッチガチの氷漬けになってる奴が。
たけし「あれでどうやって動けてるんだよ…」
たけしは呟いた。
卓郎「よし、ここは俺の出番だな!」
卓郎はやる気に満ち溢れた顔と声で言った。
美香「うん、氷に炎は効果抜群だからね!思う存分燃やして来なさい!」
たけし「ここだけ聞いたらすごい物騒だな…」
氷河「あはは…」
ひろし「では、気をつけて下さいね。」
卓郎「あぁ!任せとけって!」
卓郎はいつもの元気な声で言った。そして、フィールド内に入っていった。
卓郎「相手は俺だ!俺がお前を焼いてやるよ!」
氷河「燃やすじゃないんだ…」
美香「どっちにしろ同じでしょ?」
氷河「まぁそうなんですけど…」
たけし「本当にこの会話物騒だな…」
ひろし「今に知ったことではありませんがね…」
ひろしはため息混じりで言った。
たけし 氷河「あ、ひろしが諦めた…/あ、ひろしさんが匙投げた…」
たけしと氷河が同時に言った。
卓郎「さぁーてと、準備はいいな?初っ端から焼いていくぜ!さぁ、来い!」
氷鬼は氷の礫(つぶて)のような物を飛ばしてきた。
卓郎「ファイアグレイブ!」
卓郎は即座に技を見切り、技を展開した。
ひろし「直訳で炎の礫、ですか。」
たけし「向こうも礫っぽいし、礫は礫で返すってところか…?」
氷河「うまいこと言いますね…そういや見た感じ、卓郎さんは似たような技で戦っていますね。真っ向勝負が得意なのでしょうか?」
美香「あら、良いところに目をつけたわね、氷ちゃん!それでこそ卓郎なのよ!」
氷河「そ、そうなんですか。」
話してる間に、かなり氷鬼を追い詰めていた。
卓郎「さぁ、終わりだぜ!アンダーファイア・業火!!」
卓郎が両手を前に突き出すと、氷鬼に巨大な炎の渦が巻き起こった。渦が消える頃には、氷鬼は消えていた。卓郎が青鬼を倒した事を確認すると、美香は歓喜の声を上げた。
美香「イエーイ!やっぱり卓郎は最強よ!!」
氷河「最強は美香さんだと思うけどな…」
氷河は苦笑しながら言った。
卓郎「…次の鬼がこねぇな。」
卓郎は正面を見ながら言った。
氷河「言われてみればそうですね…」
たけし「お、終わったのか…?」
ひろし「もしそうなら、そこの扉が開くと思いますが…私も先程から周りを見渡しているのですが、見つかりませんね…」
ひろしは閉じた扉を見ながら言った。
氷河「いた!」
氷河が声を上げた。
美香「どこ!?氷ちゃん!」
氷河「そこです!あの木の中です!」
一角に1つだけあった幹を指さした。そこから、赤い2つの光がぼんやり見えた。
たけし「ひぃっ、何だあの赤いの、目か…?」
そこから手のようなものが隙間から現れ、ミシミシと音を立て、その姿があらわになった。その姿は木のようだった。が、色はやはり青紫色、腕のようなものが数本あった。
卓郎「な、突き破ってきやがった!!」
青鬼「相手は…誰だ…」
なんと、青鬼が言葉を発した。
卓郎「うおっ、こいつ喋んのか!」
卓郎は青鬼が喋った事に驚いた。
ひろし「今回は誰が行くべきでしょうか…」
卓郎「俺がもう1回燃やそうか?」
卓郎が指先から小さい火を出しながら言った。
美香「そうね、それが良いわ!」
美香はすっかりその気のようだ。すると、氷河が「待って下さい。」と制止した。
氷河「今回は自分が行きますよ。まだ戦っていませんし。」
氷河は目を細め、口を笑わせて言った。
たけし「氷河、気をつけろよ…?」
たけしは氷河を心配すると、
氷河「勿論ですよ。任せて下さい。」
氷河はいつもの声で言った。
青鬼「…相手はお前か。」
氷河「あぁ。お前の事はさしずめ、[樹木鬼]と言った所か?」
氷河は目つきを鋭くして言った。
樹木鬼「ふん…その名も悪くないな…」
そう言い、氷河の顔を見た瞬間、態度が変わった。
樹木鬼「ん…?お前は…俺の同士を殺した奴じゃねぇか!!」
氷河「同士?まあ大量に青鬼は狩ってるけど…後性格豹変しすぎだろ。」
氷河は呆れながら言った。
卓郎「いや氷もバトルになると性格変わってるからな…?」
卓郎は「お互い様だろ」と思いながら呟いた。
樹木鬼「青凪の蜘蛛鬼だ!!」
樹木鬼は怒りをあらわにして言った。
氷河「あぁ〜、あいつね。」
氷河はヘラヘラとのんきな声を出してみせた。
氷河「じゃあ、そろそろお前を永久凍結させようか。」
氷河は指先から雪の結晶ものような物をだして言った。
樹木鬼「我は青鬼の中の上位、青神なのだぞ。貴様のような小娘にやられるような我ではない!!」
氷河「関係ねぇよ。聞いた感じだと、あの蜘蛛鬼も青神の一体なんだね。ま、なんにしろ、お前が死ぬ運命は変わらねぇよ。」
樹木鬼「お前を殺す…お前を殺し、同士の敵を取る!」
氷河「殺ってみなよ。俺もお前を殺るよ。」
氷河と樹木鬼はひろし達に分かるほど殺気立った。
樹木鬼「魅毒胞子(みどくほうし)!!」
樹木鬼は紫がかった黄色の胞子を飛ばしてきた。
氷河「礫の氷!」
氷河も即座に攻撃を飛ばした。
美香「ちょ、ちょっとまって、あの胞子…」
たけし「氷…溶けてねぇか…?」
見ると、相殺はしているものの、氷河が飛ばした氷が胞子で溶け、それが水滴となって落ちてきているのだ。
美香「あの胞子、高温なのかしら?」
ひろし「いえ、あれは…猛毒の胞子ですね。触れれば溶かされます。」
ひろしは分析能力で性能を見抜いた。
たけし「つ、つまり当たれば…」
卓郎「一発アウトだな。」
たけし「って、それ猛毒の水が今落ちてきてるって事じゃねぇか!!」
たけしが大慌てで言った。
卓郎「氷!何か上方向に技を」
氷河「分かってる。アイロクス!」
卓郎が言い切る前に、氷河が上方向に腕を伸ばすと、結界が張られた。水滴は全て凍りつき、消滅した。
樹木鬼「チッ、小癪な奴め…!!」
氷河「はぁ、この程度ですか?青神って言うから少しは身構えましたが、所詮はこんなもんですか。」
氷河は生意気な口調で言った。
美香「氷ちゃん…煽り上手なのかしら…?」
樹木鬼「こ、この青神である私をコケにするとは…!!」
案の定樹木鬼はキレた。
氷河「じゃあ、次はこっちのターンだぜ。」
樹木鬼「…!!?」
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氷河「喋る青鬼なんか見た事無いんだが…」
霞「サウスパーク編なら喋ってた気がするけどね〜」
>>4
霞「あぁ、はい。ここのリア主やってます、雪谷 霞と申します。ところで、[ケミー]とは…?」
>>10
霞「だーいぶ先にその展開はありますよ。氷河がどう反応するかは想像に容易いと思いますけどね…」
>>18
霞「…え?ティーレックスなら知ってるけど、Xレックス…?ケモーの1体ですかね?」
>>20
霞「誤字は多分ないはず…って何とんでもないのを連れてこようとしてんですか!?」