[再UP]空想小説「青鬼」 第5話 凍てる刃使い

1 2023/11/21 23:24

ひろし「ん…おや、氷河…?」

深夜2時、なにかの気配を感じたひろしは目が覚めた。ひろしは真ん中で寝ていた。たけしは不安げな顔をして寝ていた。そして、氷河が隣に居ないことに気づいた。

_______________________________________

氷河はベランダで本来右眼につけていた眼帯を外してぼーっとしていた。右眼は月明かりの逆光や髪で隠れて見えなかった。

ひろし『氷河が眼帯を外すとは…珍しいですね…』

そして、氷河は独り言を呟いた。

氷河「……この村は一度壊滅させられた、か…あの野郎…!!」

ひろし「…氷河?」

呟きの内容はよく聞こえなくて分からなかったが、氷河が眼帯を握りしめて殺気立っているのを感じたひろしは放って置いたらマズイと思い、氷河に声をかけた。

氷河「うわああっ!ひ、ひろしさん…!」

案の定氷河は驚いた。こちらを向いた氷河の右眼は閉じていた。

ひろし「何をしているのですか、こんな時間に…」

氷河「すみません、真夜中に起きてしまって全く眠れなかったので…」

そう言いながら、眼帯をつけ直した。

ひろし「それと、氷河が眼帯を外すなんて、珍しいですね。」

氷河「付けてたら結構蒸れるんですよ。特に夏場とかは…だから、たまには外したいんですよ。」

ひろし「事情は分かりました。ですが、夏の夜は涼しいのでずっといると夏風邪を引いてしまいます。戻りますよ、氷河。」

氷河「分かりました、ひろしさん。」

ひろしに言われ、氷河はひろしと一緒に部屋へ戻っていった。

_______________________________________

氷河は5時にまた目が覚めた。そして、何か外に異変を感じた。

氷河「何だ、この違和感…気配…まるで…まさか…!?」

何かを察した氷河がベランダに向かって走り出した。その音でひろしと卓郎が目覚めた。

卓郎「ん〜…何だ…?今、誰かが走ったような音が…音からしてベランダ方向か…?」

ひろし「何ですか、騒がしいですね…また氷河がいない…ベランダでしょうか…?」

ベランダ方向へ向かうと、ひろしと卓郎が合流した。

卓郎「おぉ、ひろしか。今さっき、誰かがベランダ方向に走って行かなかったか…?」

ひろし「それは恐らく氷河でしょう。起きた時、隣にいなかったので。」

卓郎「そうか。まぁとりあえず、行ってみようか。」

ひろしと卓郎がベランダに着くと、氷河がいた。しかし、それは後ろ姿でも分かるほど普通ではない、という事が分かった。

卓郎「氷!どうした?」

卓郎が氷河に話しかけると、引きつった、というか絶句した表情をしながら卓郎に言った。

氷河「どうした、じゃないですよ…!!下見てください!!」

下を見ると、巨大な青い化け物が村を徘徊していた。

卓郎「待て待て待て待て!何だよこれっ!?」

ひろし「何ですか、あの青い化け物は…!?」

卓郎「まさか…水刃さんの言ってた青い化け物って」

氷河「間違いなく奴だ。」

あいつだよな、と卓郎が言い切る前に、氷河が間髪入れずに言った。

卓郎「あ、あぁ、だよな。」

戸惑いつつもそう肯定した。それを見たひろしは1つ疑問に思った。

ひろし『氷河…何故知っているように話すのでしょうか…』

氷河「とりあえず、たけしさんと美香さんを起こしに行きましょう!」

卓郎「お、おう!」

ひろし「分かりました!」

ひろしと氷河はたけしの所へ、卓郎は美香の所へ急いだ。

氷河「たけしさんたけしさん!起きてください!大変な事になっちゃいましたよ!」

たけし「うぇ〜…?何だよいきなり…」

たけしはまだ6割眠っていた。それもそのはず。5時に叩き起こされたのだから、仕方ない。

ひろし「早く起きてください。でないと、多分死にますよ。」

たけし「ファッ!?」

ひろしが声を低くして真面目な顔で耳元で静かに言うと、たけしはすっかり目が覚めた。時同じくして、卓郎は美香を起こしに向かっていた。

卓郎「美香、起きろ!ヤバい事になっちまった!」

美香「何?どうしたの卓郎!」

卓郎の切羽詰まった声を聞いた美香はすかさず飛び起きた。

卓郎「話は後だ!とりあえず3人と合流するぞ!」

美香「わ、分かったわ…!」

すぐに起きたが、寝ぼけていて何がなんだかまだよく分かってはいないが、美香は卓郎の後をついて行った。

氷河「あっ、卓郎さん!」

卓郎「美香起こしてきたぜ!」

ひろし「これで全員揃いましたね。」

氷河「いや、まだ水刃さんがいない!」

たけし「それより、状況を教えてくれよ…!」

美香「私もよ!卓郎からヤバい事になった、としか聞いていないもの!」

氷河「だったらベランダ行ってきてください!秒でヤバいって分かりますから!」

たけし「わ、分かったぜ…」

たけしと美香は2人でベランダへ行った。そして約30秒後、速攻で戻ってきた。

美香「これは…マズイわね…」

たけし「ガタガタガタガタ」

美香も険しい表情をしていた。たけしは恐怖のあまり、震えていた。

水刃「皆!大丈夫!?」

水刃さんが息を切らして戸から入ってきた。

美香「あっ、水刃さん!」

たけし「み、水葉さん、あの化け物って…」

水刃「ここを襲って村を壊滅させた化け物よ…!!」

ひろし「やはり、そうでしたか。」

美香「これ、もしかして彼奴等ここにも来るかもしれないわよね?」

氷河「確かに、その可能性は大いにありますね…」

たけし「じ、じゃあどっかに隠れようぜ!!!」

たけしはすっかり逃げ腰になっていた。

美香「でも、どこに隠れるのよ?」

氷河「…そこの襖はどうですか?」

氷河が布団の入っていた襖を指さした。

卓郎「それだ!流石だ、氷!」

氷河「い、いや、別に…」

褒められて照れたのか、氷河はそっぽを向いた。

美香「じゃあ、早く入りましょ!」

ひろし「ちょっと待って下さい、これ、全員入れますか?」

たけし「あっ…」

卓郎「一人…入らねぇ…!?」

ひろしの一言で気がついた。襖は以外にも狭く、どう頑張っても一人入れなかったのだ。

水刃「今から別の部屋に移動しようとしてもであいがしらになってしまうかもしれないし…」

氷河「…じゃあ、自分がここに残るよ。」

氷河が自殺行為とも呼べる事を言うと、卓郎と美香は猛抗議した。

卓郎「な、何馬鹿な事言ってんだよ!!」

美香「氷ちゃん喰われちゃうのよ!!?」

氷河「じゃあ、貴方達はあれに立ち向かえるんですか?」

美香 卓郎「っ…………」

氷河に言われ、2人はなにも言い返せなくなってしまった。

氷河「自分には1つ策があるので。さぁ、早く!」

卓郎「…絶対に死ぬなよ…!!」

そう言い、卓郎は襖の戸を閉めた。

水刃「は、入ってきたわ…!」

襖をミリ単位で開けて覗いていた水刃さんが言った。外で見たあの青い化け物が2体も部屋に入ってきたのだ。

たけし「に、2体っ…!?ガタガタガタガタ」

氷河「…お前ら。」

氷河が低い声で言うと、その2体が氷河の方向を見た。

氷河「今すぐここから消え去れ。でなけれはお前らをここでやる。」

卓郎「え、氷河?」

たけし「く、口調が…」

自分達と接している時と全く違う口調で卓郎とたけしが啞然としていた。

氷河「お前らに選択肢を出す。今すぐ自分の視界から消え失せるかここで戦うか。戦う判定は自分のいる部屋の範囲内に入った時とする。入った瞬間仕掛けるからな。2つに1つ、どちらを選ぶ?」

美香「な、何をいいだしてるの氷ちゃん…!」

戦うという選択肢を出した氷河に美香は驚きを隠せなかった。

氷河「引き下がらない、という事は殺るんだね…そう…最悪の道を選んだな…」

ひろし「氷河、本気で戦うつもりなのですか…!?」

たけし「丸腰であんなの無理だよっ…!!」

そして、青い化け物は雄叫びを上げて氷河に襲い掛かって来た。

卓郎「ひ、氷…!!」

誰もが終わったと思ったその時、氷河は腰に巻いた上着のポケットから何かを取り出した。そして、瞬く間に青い化け物2体の首筋を斬りつけた。

美香「な、ナイフ…?」

氷河の手元を見ると、青い液体で汚れたナイフを持っていた。

氷河「自分、こう見えてナイフ使いなんだぜ?」

氷河は青い化け物の方向に向き直り、笑顔で言った。

卓郎「そ、そうだったのか…」

美香「策ってこの事だったのね…」

氷河「あ、そうそう、自分のナイフに切りつけられられたら…あ、もう話す間も無いね。」

ひろし「それはどういう…」

たけし「お、おい…!あれ見ろ…!あの青い化け物が…!」

見ると、さっき斬りつけた2体の青い化け物がうめき声を上げ、斬られた首筋から凍っていっているのだ。そして、断末魔を叫びながら全身氷漬けになり、砕けて跡形もなくなった。

ひろし「な、な…」

美香「さ、さっきの化け物が…」

たけし「こ、氷漬けに…」

卓郎「し、しかも粉々になったんだが…」

氷河「ふう…もう出て来てもいいですよ、皆さん。」

4人が唖然とする中、氷河はナイフを拭いて片付けると、皆を呼んだ。

たけし「ひ、氷河…さ、さっきのナイフは一体…」

氷河「あぁ、これ?自分の愛用ナイフ、氷雪のナイフの事だね。これがどうかした?」

氷河はさっき片付けたナイフを取り出して言った。

ひろし「そのナイフは一体どういう構造になっているのですか…!?」

氷河「自分の愛用ナイフ、氷雪のナイフは特別製でね。これで切られたら、切られた対象は細胞から氷漬けになって砕け散るんだ。一言で言うと凍結消散って感じかな?」

卓郎「いや怖えよ…後そのまんまだし…」

ひろし「その工程はどうやってしているのですか…?」

氷河「あー…自分でそういう毒作りました!」

たけし「ここにとんでもない人がいた〜…」

美香「それ、人には効果無いわよね…?」

氷河「あ、無いです無いです!人には効果無いです!」

美香が聞くと、氷河は手を振ってちゃんと言ってくれた。

ひろし「何故言い切れるのですか?」

ひろしが質問すると、氷河は少し苦笑いしながら言った。

氷河「実体験だったからです…。」

たけし「え、ズバっていったのか…?」

氷河「うん…で、自分は氷漬けにならなかったから言ったんです。」

卓郎「…傷跡は残らなかったんだな。」

氷河「はい、怪我が治るまではずっと家で安静にしてたので。」

氷河は苦笑しながら言った。

美香「それで、ここからどうするの…?」

氷河「うーん…!?」

氷河が突然周りを険しい表情で見渡し始めた。

卓郎「どうした!?氷!」

卓郎が氷河に聞くと、険しい表情のまま言った。

氷河「いや、なんだろう…まるでどこかを遮断されたような感じがして…」

ひろし「どこかを遮断…?まさか、トンネルの出口ではないですよね…?」

水刃「もしそこが閉じられてしまったのなら、最悪ここから出れなくなってしまうわ…!」

たけし「えええっ…!?出れなくなるのか…!?ガタガタガタガタ」

水刃さんの一言でたけしはすっかり恐怖状態になってしまった。

水刃「最悪の話よ。対応策があればなんとかなるわ。」

美香「じゃあ、トンネルへ行ってみましょ!」

6人は宿から出てトンネルへ向かった。

いいねを贈ろう
いいね
1

このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)
画像・吹き出し

タグ: up 空想小説「青鬼」 5話

トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する
その他2023/11/21 23:24:52 [通報] [非表示] フォローする
TTツイートしよう!
TTツイートする

拡散用



氷河「どうするんだよ…これ…何であいつらが…」


>>1
レイン「青鬼の残党か。俺に任せろ!〘実力70%!〙ハァ!ハァ!オラァ!喰らえ!なんだ。雑魚じゃんか。余裕じゃん。の割に数が多いな。それなら!〘ギャラクシーブラックサンダー!〙」


>>3
霞「うわぁぁ!待って待って!」

レイン「ん?誰だお前?氷河に似てるが…」

霞「自分は氷河の昔の姿兼リア主です!戦うのはいいんですけど、あんまりひろしさん達にバレないようにお願いします!今回は自分が防音結界と視覚結界張ったから良かったですけど、やり過ぎは注意して下さいね…!」


>>4
レイン「OK。ってまだいんじゃん!本気モードじゃ気配でバレる。仕方ない。〘無音技!〙〘視覚遮断!〙よし!ハァ!ハァ!ハァ!オラァァ!よし。これで片付いた。」


>>5
霞「…強すぎません…?」

レイン「この姿は青鬼特攻だからな。」

霞「なるほど…本気じゃなくても強い訳ですね…」


>>6
レイン「そろそろ場所変わるかな?とりあえず気配消して追いつくか。」


痛い…

共感性羞恥心が痛い…!


画像・吹き出し

トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する