空想小説「青鬼」 第7話 卓郎の悩み事
氷河が清青中学校に入ってきて約1ヶ月経った。氷河はクラスに馴染…めてはいないが、自分を良くしてくれている白河ひろし、黄河たけし、赤水美香、赤城卓郎とはよく話すようになっていた。
卓郎「あー…どうしようか…」
ある日の昼休み、卓郎が何か考え事をしていた。
美香「卓郎、どうしたの?そんなに悩んで。」
氷河「よければ聞きますよ!」
そう言うと、卓郎が少し困った表情で話してくれた。
卓郎「サンキュ、美香、氷。実はな、ここ最近動画のネタで困ってんだよな…」
氷河「動画?卓郎さんって動画投稿者なんですか!?」
美香「あぁ、氷ちゃんは知らなかったっけ。実は卓郎って最近動画投稿を初めてね。チャンネル登録者数も500人位いてね!ちょっぴり有名人なのよ!」
驚く氷河に、美香は軽く解説を挟んでくれた。
氷河「へ、へぇ…すごいんですね、卓郎さんって…」
美香「ふふっ、そうでしょそうでしょ!卓郎ってすごいのよ!」
卓郎「で、何かネタになりそうな物ってあるか?」
氷河「うーん…これといった物はないですね…」
美香「そうね…いざ考えるってなると難しいのね〜…」
卓郎「うーん…ダメか…」
3人で考えていると、そこにひろしとたけしがやってきた。
ひろし「どうかしましたか?」
たけし「何か考えてるのか…?」
美香「ひろし、たけし!ちょうどよかったわ!実はね、斯々然々(かくかくしかじか)で…」
美香はひろしとたけしに状況説明をしてくれた。
卓郎「ひろし、たけし、何かないか?」
ひろし「そうですね…」
たけし「うーん…」
5人で悩んでいると、とある男子生徒が近寄ってきた。
男子生徒「なぁ、なに悩んでるんだい?」
卓郎「あぁ、実はな…」
卓郎は事情を説明した。
男子生徒「ふ〜ん…なら、一つ」
知ってるよ、と言う前に
卓郎「教えてくれっ!!!」
と、卓郎が前のめりに食いついていった。
男子生徒「お、オッケー。じゃあ言うよ。君達、青美山(あおみざん)って知ってるかい?」
ひろし「えぇ、知っていますよ。静水神社の奥の山ですよね。」
ひろしは淡々と話す。
男子生徒「流石は学年1の秀才。よく知ってるね。」
男子生徒はひろしの知識を褒めた後、こう続けた。
男子生徒「そこの細道を通って行くと森に出るんだ。で、そこをずーっと真っ直ぐ進んでいくとトンネルがあるんだ。そして、そのトンネルを抜けると廃村があるんだ。そこには化け物がいるって話だよ。まぁ、僕自身では事実か否か分からないんだけどね。その判断は君達に任せるよ。」
卓郎はしばらく考え込んだ後、
卓郎「そうだな。お前ら、行けるか?」
卓郎はひろし、たけし、美香、氷河に聞いた。
美香「私は行けるわよ!」
たけし「お、俺はちょっと…」
引き気味なたけしを見て、美香は
美香「いいじゃないのたけし!それに、化け物がいたって私がふっ飛ばすから大丈夫よ!」
たけし「う、うぅ…わ、分かったぜ…」
美香の勢いに押され、あっさり承諾した。
卓郎「ひろしと氷はどうだ?」
ひろし「そうですね…予定次第で決まります。」
氷河「私もそうですね。いつ行くんですか、卓郎さん?」
氷河が卓郎に聞くと、卓郎は
卓郎「そうだな…じゃあ、もうすぐ夏休みだろ?20日の終業式が終わって飯食べたら学校門前集合でどうだ?」
ひろし「初日からですか…全く、仕方ないですね。」
氷河「いいんだ…」
意外とすんなり承諾した事に少し驚いた氷河に、卓郎は
卓郎「氷は駄目なのか?」
と聞くと、氷河は、
氷河「そうですね…まぁ、これといった用事は無いですし、皆さんが行くのなら、私も行きましょう。」
そう言い、氷河も承諾してくれた。
卓郎「よし!じゃあ、決まりだな!予定忘れんなよ!」
美香「分かってるって卓郎!」
そういう中、氷河は少し考えていた。そして、
氷河「あの…1つお聞きしてもいいですか?」
と言い、先程の件を教えてくれた男子生徒を呼び止めた。
男子生徒「ん?何だい?」
氷河「その話…一体どこから聞いたんですか?」
そう質問すると、男子生徒はこう答えた。
男子生徒「…さぁ、どこからだったかな。ずっと前に聞いた話だからね。覚えてないね。」
笑顔でそう答えた。
たけし「氷河、どうした…?もうすぐチャイムが鳴るぜ…?」
たけしに話しかけられて、ようやく時間がヤバいことに気づいた。
氷河「あぁ、ほんとだ。サンキューな、たけしさん。」
そう言い、氷河は席に戻っていった。次の授業の用意をした後、氷河は少し考え事をした。
氷河『何でさっきの奴はあの村を知っていたんだ…?それに…まさか彼奴等がまた…?いや、流石にそんな事はないと思いたい。あの人のあれがこんなに早く終わるはずがない。きっと…大丈夫…だよ…な…?』
ひろし「…河…氷河…?大丈夫ですか?」
氷河「ふぇっ!?だ、大丈夫ですよ?」
ひろし「そうですか…表情が暗くなっていたものでしたから…」
考え事をしていたらいつの間にか表情が深刻な表情をしていたらしく、心配させてしまっていたようだ。
氷河「そ、そうだったんですか…ご心配ありがとうございます。」
ひろし「いえ、お気になさらず。」
そう言い終わった後、チャイムが鳴った。氷河は目を細め、誰にも聞き取れぬような小声で呟いた。
氷河「何事も起こってませんように…」
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