空想小説「青鬼」 第35話 もっと早く気付いていれば
夜、5人は宿へ戻ってきた。外では全く帰ってこなくて心配していた水刃さんと闇氷が待っていた。
水刃「あっ、皆ー!」
闇氷「ったく、いつまで経っても帰って来ねぇから心配した…おい待て、何でしんみりしてんだよ?それと何で姉さんはそいつを背負ってんだよ!?」
闇氷は色々と問いかけを投げかけた。
氷河「放っておいたら青鬼の肥やしになると思ったから。永の事は闇氷に任せるよ。…それよりちょっと一人にさせて…」
氷河は永を下ろすと、フラフラと宿へ戻っていった。
水刃「ね、ねぇ…一体何があったの…?」
闇氷「それに、ハクモの姿もねぇし…」
ハクモという言葉を聞いた4人は、全員目を逸らした。
闇氷「…おい、まさか…」
卓郎「…あぁ…実はな…」
卓郎は、今までの出来事を全て話した。
水刃「う、嘘…」
水刃さんは口を覆って絶句した。
闇氷「な…マジ…かよ…」
闇氷も表情を歪めて絶句した。
闇氷「だが…」
闇氷は下を向いて考え込んだ。
美香「闇ちゃん、どうしたの?」
闇氷「そんなにやべぇ事をした永を何で姉さんは連れ帰ってきたんだ?そもそも、青鬼の餌にするのが嫌なら地面に埋めりゃよかったのに…」
卓郎「あっ…」
卓郎は何かに気づいた。
たけし「卓郎、思い当たる節があるのか…?」
卓郎「あぁ。ここじゃあれだから宿で話そうぜ。蚊に刺されまくれるし…」
水刃「あはは…それは言えてるわね。じゃあ、居間に行きましょうか。」
6人は宿の居間へ向かった。
ひろし「…それで、その思い当たる節がある、というのは?」
卓郎「氷、度々…永に同情している時があったんだ。」
美香「同情?あんな奴に?」
卓郎「それがなかったら、多分氷が永を背負った時、俺は猛反対していたと思うぜ。」
闇氷「どんな感じだったんだ?」
卓郎「そうだな…一番分かったのは、氷が『何で誰も信用しないんだ』って聞いたら、永は『自分の事は自分しか分からない』って言ったんだ。そしたら、氷は『分からなくもない』って言ったんだよ。まぁ、これは言ったって訳じゃなくて、氷が思った言葉だけどな。」
美香「つまりは、氷ちゃんもそんな思考になってた時期があって、それが自分と似てるな、って感じなのかしら。」
卓郎「多分な。」
闇氷「まぁ、そういう事だろ。」
卓郎「あっ、そうだ。もう1つあったぜ。」
ひろし「それは一体?」
卓郎「俺ら、永との一騎討ちになったんだ。当然、俺らが勝ったんだが、永を斬った時、氷はわざと急所を外していたんだ。」
美香「えぇ!?あの氷ちゃんが!?」
たけし「情報収集のためじゃないか…?」
闇氷「まぁ、その線もあるだろう。だが、1番の理由は、殺りたくなかったって理由だろう。」
ひろし「と言うと?」
闇氷「ほら、考えても見ろ。殲滅軍は出会ったのは全員殺ってる。だが、そいつらを殺ってるのは誰だ?」
卓郎「あぁ…アルトは闇氷が倒してる。永は自決だが、処理は闇氷がやってるな。オーヴァーは…?」
闇氷「姉さんがふっとばした後、最後は私が殺ってるよ。」
美香「えぇ…それってつまり闇ちゃんが汚れ仕事をしてるって事…?」
美香が複雑そうに言うと、闇氷は薄く笑いながら言った。
闇氷「おいおい、人聞きの悪い事言うなよ。私がしてぇからしてんだよ。」
たけし「で、何で氷河はやりたくなかったんだ…?皆氷河にとって敵のはずなのに…」
闇氷「ボコすのと殺るのとは訳が違う。いくら相手が非道でも、過去…環境が原因でそうなった奴までは手にまでは掛けたくないんだよ。…それ以外、つまりは救いようのない奴とか青鬼はバッサバッサ斬り伏せてるけどな。」
水刃「…この話はこのくらいにしましょう?そろそろ夜も遅いし…」
卓郎「そうだな…あ、俺どうしようか。氷のとこには行かないほうがいいよな…」
闇氷「あぁ、賢明な判断だな、卓郎。情緒不安定状態の姉さんは1人にさせたほうがいい。お前はひろしの部屋にでも行きゃいいんじゃねぇか?」
ひろし「闇氷はどうするのですか?」
闇氷「主のとこで寝る。」
水刃「えぇ!?」
闇氷「いいだろ?お前どうせいっつも1人なんだからさ。」
水刃「うぅ…分かったわよ…」
闇氷「…お前、その反応…さてはまた部屋散らかしたな?」
水刃「うっ…」
闇氷「…確定だな。行くぞ。」
水刃「は…はいぃ…」
水刃さんは立ち上がると、トボトボと部屋を後にした。
闇氷「ったく…姉さんもそうだが、主も周りの整理整頓くらいしろっての…」
闇氷は4人に聞こえないくらいの声でぼそっと呟くと、水刃さんを追った。
美香「…私達も行こっか。」
卓郎「…だな…」
4人は静かに部屋へ向かって行った。
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その頃、氷河は1人部屋でベッドの上に座っていた。
氷河「…ハクモ…」
氷河はハクモの事を助けれなかった事をかなり引きずっていた。
氷河「もっと俺が…早く気づいていれば…こんなことには…」
氷河は布団を握りしめ、怒りに満ちた声で呟いた。
氷河「…殲滅軍…あいつら…許さねぇ…!!」
その目には、光なんて存在していなかった。
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一夜明け、6人はまた居間に集まった。
美香「氷ちゃん…やっぱりいないわね…」
美香は辺りを見回して言った。
闇氷「姉さんは病みやすいからな。…にしては立ち直りが遅い気もするが。」
卓郎「おい闇氷、仲間がやられて1日やそこらで立ち直れるかよ!俺だって、いや、皆もだが、未だ辛ぇってのに…」
水刃「流石に、ちょっと様子を見に行ったほうがいいんじゃないかしら?」
闇氷「…まぁ、そうだな。ちょっと様子を見るだけならまだいいか。」
卓郎「じゃあ、俺が行くぜ。」
闇氷「そうか。手短に済ませてきてくれよ。」
卓郎は二階へ上がっていった。
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卓郎は氷河のいる部屋にきた。ノックをしたが、返事はない。
卓郎「…氷…入るぜ?」
卓郎はゆっくりと戸を開けた。だが、卓郎は何か違和感を感じた。
卓郎「…?氷…いるか…?」
卓郎はベッドの所を見た。氷河の姿がない。
卓郎「…氷?氷!?」
卓郎は部屋の中に入り、辺りを見渡すがどこにも氷河の姿がない。
闇氷「どうした?そんな騒いで…」
卓郎の後をなんとなくついてきていた闇氷が上がってきた。
卓郎「氷が部屋にいねぇんだ!」
闇氷「は!?マジで言ってんのか!?」
そう言い、闇氷も部屋の中を見た。
闇氷「姉さんの奴…!どこ行きやがったんだよあいつはあぁぁ!!?」
苛立った声で闇氷は叫んだ。
美香「ちょっと、何をそんなに騒いでるの?」
闇氷の声を聞いた5人が上がってきた。
闇氷「姉さんがいねぇんだよ!!」
水刃「ええぇ!?ホントなの!?」
闇氷「あぁ!ちょ、早く探しに行くぞ!!病んだ姉さんが、何するかなんて分かったもんじゃねぇ!お前らは2人2組で探せ!私は単独で探す!」
闇氷は早口で言うと、影の中に落ちるように消えた。おそらく移動技を使ったのだろう。
卓郎「美香!俺らも行くぞ!」
美香「えっ!?わ、分かったわ!」
卓郎は美香を連れて下へ駆け下りて行った。
ひろし「私達も行きましょうか。」
たけし「お、おうっ…!」
ひろしとたけしも急ぎ足で階段を降りていった。
水刃「…私はどうしようかしら…」
闇氷「お前は部屋の片付けをしろ!」
1人残された水刃さんが呟くと、闇氷が顔だけ影から出して早口に言った。そしてすぐに消えた。
水刃「…片付け…やりますかぁ…」
水刃さんは嫌そうな声で呟いた。
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卓郎「氷ー!氷、どこだー!」
美香「氷ーちゃーん!」
美香と卓郎は走り回って氷河の名前を呼んでいた。
卓郎「ハァ…ハァ…流石にあてもなく探すのは無謀か…」
美香「そ、そうね…じゃあ、どこを探すの…?」
卓郎「蒼凪山に行こうぜ。あそこは雪山、道中も外よりは涼しい。暑いのが嫌いな氷なら行きそうなとこだ。」
美香「確かに!さっすがは卓郎ね!じゃあ、早く行きましょ!」
2人は蒼凪山へ走っていった。
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その頃、ひろしとたけしは歩いて場所を検討していた。
たけし「氷河がいそうな所ってどこだ…?」
ひろし「そうですね…蒼双火山は確実に無いとして、他は…」
たけし「あと行けるとこと言ったら青雅洞窟か蒼凪山だな…」
ひろし「では、蒼凪山へ行きましょう。あそこは雪山でもありますから、もしかするといるかもしれません。」
たけし「じゃあ、行くか…!」
2人も、蒼凪山へ向かって行った。
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ひろしとたけしが蒼凪山の入り口前に着いた。そこには、美香と卓郎も来ていた。
美香「ひろし!たけし!」
ひろし「美香、卓郎!2人もここに来ていたのですね。」
卓郎「あぁ。氷河行きそうな所ってどこだってなって、結果的に雪山のあるここに来たんだ。」
たけし「考え全く同じだな…」
闇氷「何だお前ら、ここにいたのか。」
闇氷が影の中から現れた。
卓郎「あぁ。氷がいそうな所を考えたんだ。結果的に雪山のある蒼凪山なんじゃないかってなったんだ。」
闇氷「ほぉ、考えたじゃねぇか。お前らの予想通り、姉さんはここにいる。」
闇氷は腕を組み、笑みを浮かべて言った。
たけし「なんでわかったんだ…?」
たけしが問うと、闇氷は蒼凪山の入り口を横目に言った。
闇氷「ちょっと気配を探ってたんだ。結果、ここにいた。」
美香「えぇ〜、そんな事が出来るなら最初からやってよ〜、闇ちゃん〜!」
闇氷「私の宿での様子見ただろ!?それどころじゃなくって頭になかったんだよ!」
美香「あ、確かに!」
闇氷「納得するのかよ…」
卓郎「じゃあ、早く行こうぜ。早く氷を見つけねぇと…」
闇氷「そうだな。だが…良くない事が起こってる気がする。警戒して行くぞ。」
5人は蒼凪山へ入っていった。
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