空想小説「青鬼」 第22話 瓜二つの氷姉妹
卓郎「つっても、俺は最初からこいつが敵意持ってないってのは知ってたんだけどな。と言っても、前に少し会話を交わしたくらいだったから、絶対ないとは最初は分からなかったぜ。」
卓郎がそこまで言うと、闇氷が口を開いた。
闇氷「それは私も考えた。だからあの時、卓郎が私のナイフを受け流してすれ違ったような感じになった時、私はこう言ったんだ。」
闇氷は口元に人差し指を立てて言った。
闇氷「…俺の演技に乗れ…ってな。アルトの野郎は見事にノセられて笑いそうになったぜ。第一姿が変わった時、服の色とか眼帯の位置まで変わったのに違和感を覚えなかったのか?」
ひろし「え、演技…!?なら氷河、その姿は一体…?」
ひろしが驚いた様子で言うと、闇氷は不機嫌そうに言った。
闇氷「おい白髪、卓郎も言ってるが、私は氷河じゃなくて闇氷だ。別人だぞ。」
美香「ちょ、ちょっと待って、思考が追いつかないんだけど…え?」
闇氷「…姉さん、そろそろ種明かししても良いんじゃねぇのか?」
闇氷が誰もいない左を横目に見て言った。
氷河「うん、そうだね。」
3人が声の方を向くと、闇氷の隣から、吹雪のエフェクトのような物が現れた。それが消えると、そこには氷河がいた。
たけし「えええええっ!!?氷河が…二人いるうううぅぅっ!!?」
たけしの言う通り、氷河と闇氷、身長も服も顔も瓜二つの2人が並んで立っていた。
ひろし「ドッペルゲンガー…なのですか…!?」
ひろしもかなり驚いた様子で言った。
卓郎「いや、氷の妹だ。」
卓郎はポケットに手を入れて言った。
たけし「な、何で知ってるんだ、卓郎!」
卓郎「俺、実は闇氷に一度会ったことがあるんだ。」
たけし「えぇっ、そうだったの、卓郎!じゃあ何で教えてくれなかったのよ?」
卓郎「氷に『後々皆に話すから言わないで下さい』って言われてたんだ。」
氷河「その理由の1つが今回の件ですけどね。」
ひろし「というと?」
闇氷「じゃ、そろそろ種明かしとしようか。」
そう言うと、氷河が語り始めた。
氷河「自分は最初、あのキメラが持っていた針に目が行ったんだ。どうせ殲滅軍の事だ、ヤバい細工してんのは秒で分かる。実の所、自分もひろしさんのような分析能力があるんだ。精度は劣るけどね。で、調べた結果…オーヴァーが使ってたあの薬のような反応、そして洗脳効果がある成分があった。」
美香「え、嘘でしょ!?氷ちゃん1回刺さってたわよね!?大丈夫だったの!?」
闇氷「それに関しては全く問題ねぇよ。ああいう洗脳系のって、精神攻撃に値することが多いんだ。私も姉さんも、精神攻撃の耐性の1つくらいあるよ。姉さんはメンタルガラスだがな。」
氷河「闇氷、余計な事言わないで?」
たけし「精神攻撃耐性あるってチートじゃねぇか…」
呆れるたけしに、闇氷がたけしを横目に言った。
闇氷「別にチートじゃねぇよ。お前らもやろうと思えば習得出来るぜ?」
卓郎「マジで!?」
闇氷「あぁ。大抵はやろうと思えば習得可能だ。もしかしたらその過程で、自分しか使えない技を作り出す事もあるかもな。」
卓郎「ゲームで言う、固有スキルみたいなもんか?」
氷河「まぁ、そうだね。話を続けるよ。自分が向こうに歩いてってる間、闇氷に作戦を言ったんだ。」
ひろし「一体どうやって言ったのですか?」
たけし「能力を使ったのか…?」
氷河「まぁ、そうだね。で、作戦伝えた後、あのキメラとの戦いに挑んだってわけだ。針に刺さったのはわざと。あの黒いオーラも全部それっぽく見せてただけなんだよ。」
アルト「なん…ですって…!?」
アルトは唖然とした様子で言った。
闇氷「姉さん、こっからは私と卓郎に代わってくれ。」
闇氷が氷河の肩を叩いて言った。
氷河「分かった。じゃあ、続きお願いね。」
そう言い、氷河は引き下がった。
闇氷「…で、その黒いオーラで私に代わった後、1対1の戦いを申し出た。卓郎を指名したのは、私の事をお前らの中で唯一存在を知ってたからだ。そして、卓郎に俺の演技に乗れって言った後、何度も鍔迫り合いをしたよな?」
美香「う、うん。もしかして、その時に卓郎に作戦を話していたの…?」
闇氷「察しがいいな、その通りだ。じゃ、順を追って話そうか。まずは1回目。」
闇氷『悟られるな。自然な状態で聞いてくれ。私が誰かは分かるな?』
卓郎『お、おぉ。闇氷…だよな。』
闇氷『あぁ。今からこの鍔迫り合いの度に作戦を説明する。いいな?』
卓郎『わ、分かったぜ。』
闇氷『今回はこれを伝えたかっただけだ。次から言うぞ。』
卓郎「んで、2回目。」
卓郎『で、作戦ってのは?』
闇氷『まず、私がお前を袈裟斬りにしたふりをする。で、そしたらお前はやられて死んだように振る舞ってくれ。』
卓郎『袈裟斬りって…だ、だが、袈裟斬りにするって事は、本来血が流れるだろ?それはどうするんだ?』
闇氷『悪ぃ、1回離れるぞ。次に話す。』
卓郎『あぁ、分かった。』
闇氷「3回目。」
闇氷『さっきの話の件だが、私がそれっぽい幻覚を見せる。今、この空間には私が幻影の結界ってのをを張っている。そこでは、私とお前が見ている景色、外の奴らが見ている景色は違う。外の奴らにどう見せるかは私が決めれる。だからその件は大丈夫だ。一回離れるぞ。』
卓郎「4回目。」
闇氷『一応こんなとこだ。質問はあるか?』
卓郎『あぁ…じゃあ…今、氷はどこにいるんだ?』
闇氷『姉さんか?姉さんなら透明化してどっかで見てるよ。まだあるか?』
卓郎『いや、もうないぜ。』
闇氷『そうか。じゃ、私が離れた後に始めるぜ。お前の演技力にもかかってるからな。頼むぜ。』
卓郎『あぁ、任せろ!』
闇氷「…で、卓郎を斬ったふりして能力玉を絶賛騙され中だったアルトからもらって現在に至る、ってわけだ。」
闇氷が腕を組んでドヤ顔っぽい笑顔で言った。
アルト「な…何という卑怯な事を…!!」
氷河「お前ら殲滅軍に卑怯も何もあるかよ。そっちこそ俺を洗脳して皆を殺るっていう卑怯で姑息な事してるだろうが。」
氷河は氷のような冷たい表情を浮かべ、苛立った声でアルトに言った。
闇氷「実際、演技とはいえお前ごときに敬語使うの癪なんだよ。」
闇氷も嫌悪の感情を示して言った。
アルト「くっ…!!こうなったら…!!」
アルトが地面に手をつくと、地面が光り、さっきのキメラが現れた。しかも、その口は後頭部まで裂けていた。
美香「うわぁ…なにあれ…」
美香が引いてる様子で言った。
闇氷「さしずめ口裂けキメラってとこだろ。」
闇氷も嫌悪の表情のまま言った。
氷河「じゃ、さっさと終わらせちゃおっか。」
氷河がナイフ片手に言った。
たけし「え゙、まさか戦うのか!?体は…」
氷河「さっき言ったろ!全部演技だって!」
そう言うと、速攻で走っていった。
闇氷「ったく、姉さんらしいぜ…」
闇氷が半分呆れた声で言った。
ひろし「ところで貴方は何者なのですか?」
闇氷「あぁ、まだちゃんと言ってなかったな。私は夜桜闇氷。姉さんの妹的存在だ。」
闇氷がひろしを横目に見て言った。
ひろし「妹的存在…?どういう事ですか?」
闇氷「だから姉さんの妹って事だよ。」
闇氷は少し苛立った声で答えた。
美香「まぁまぁ、細かい事は気にしなくて良いじゃない!」
卓郎「そうだぜ、ひろし!」
たけし「この状況でそれ言うのか…?てか、あの口裂けキメラ怖いな…」
たけしは少し表情を歪めながら言った。
闇氷「そうか?私は全くだが。」
卓郎「初見じゃ絶対ビビるぜ、あれは。」
そんなこんな言ってたら、いつの間にか口裂けキメラの四肢は氷漬けにされていた。
氷河「霜符・サウザンナイフレイン!!」
そして大量のナイフの雨に打たれてやられていった。
美香 卓郎「決まったあああ!!」
美香と卓郎が腕を上げて喜んだ。
アルト「そ、そんな…」
アルトは落胆した。
闇氷「…流石だ。」
たけし「うん、氷河は凄いや…!」
ひろし「えぇ。申し分ない程の火力ですね。」
3人は氷河を称賛した。
氷河「おい、アルトって言ったか?お前に聞きたいことがある。」
アルト「…何でしょう。」
氷河「お前は俺を洗脳して皆殺しにしようとした。だが、さっき木鬼と戦った時に皆の強さは大体分かってたろ。俺があのキメラと戦ってる間に待機組を洗脳して殲滅も出来たはずなのに何故俺だけを狙った?」
アルト「…貴方がこの中で一番強いからですよ。」
アルトは氷河を見て言った。
氷河「は?どこが?目腐ってるのか?私より美…念花の大剣使いさんの方が強いだろ。」
氷河は美香を見て言った。
アルト「いえ、貴方の強さは本当はその程度ではありません。ですから私は貴方をこちら側の戦力にしようとしたのです。話はこれで終わりです。では、私はこれd」
闇氷「逃がすと思ってんのか?衣の闇。」
見ると、アルトの周りを黒いモヤが纏わりつき、動きを封じていた。
アルト「がっ…!?何をするんですか!」
闇氷「生かして帰らせるわけがねぇだろ。ま、殺る前に聞きたい事がある。青鬼や殲滅軍の現状知っている事を全て話せ。」
アルト「言いません!あなた達みたいな人に言う事ではありません!」
アルトは闇氷を睨みつけて言った。
闇氷「そうか、じゃあ死ね。忘却・滅び闇」
アルト「ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!」
アルトに纏わりつくモヤがアルトの体を覆い、消し去った。
たけし「え゙っ…跡形もなく消えんたんだけど…」
たけしは棒立ちで言った。
ひろし「さ、流石にそこまでやる必要は…」
闇氷「ある。あんな奴を野放しにしておいたらここだけでなく、街にも被害が出る可能性がある。悪の芽はさっさと摘み取るのが善だ。」
ひろしの問いかけに白けた声で言った。
美香「そ、それはそうだけど…」
卓郎「ん、青光が消えたな。」
美香が戸惑っていると、青光が消えた事に気づいた。
ひろし「熱く…なってきましたね…」
闇氷「そ、そうだな…ってそしたら姉さんが…!」
闇氷は慌てて氷河の方を向いた。
たけし「あっ…」
氷河「ア゙ヅい…」
氷河は案の定バテて壁にもたれ掛かっていた。
ひろし「そういえば…氷河は暑いのは苦手でしたね…」
ひろしはマフラーを巻き直しながら言った。
美香「じゃあ早く先に進まないと!」
卓郎「そうだな。氷、行けるか?」
氷河「は、はいっ…!」
氷河はよろよろと立ち上がって言った。
闇氷「無茶すんなよ、姉さん…?」
10分後、ようやく火山から抜ける事が出来た。
卓郎「っしゃ、抜けたああ!」
卓郎は伸びをしながら言った。
氷河「うぐぅ…」
闇氷「やっぱりこうなるか…」
結局、氷河は道中の暑さで歩けなくなり、闇氷に背負ってもらっていた。
氷河「すまん、闇氷…」
たけし「じゃあ、早く宿に帰ろうぜっ…!」
美香「そうね。ところで闇ちゃんも宿に来るの?」
闇氷「闇ちゃん!!?ま、まぁ、私も行くか…」
闇氷は唐突にあだ名呼びされたことに驚いたが、ついて行く事にした。道中、闇氷に背負われてる氷河が口を開いた。
氷河「あっ、そうそう…なぁ皆、青雅洞窟で自分が樹木鬼に捕まってた時、突然樹木鬼の腕が斬れたの、覚えてる?」
美香「あぁ、あれね。覚えてるわよ。それがどうかしたの?」
闇氷「あの斬撃、私がやったんだ。」
卓郎「え、マジで!?あれ、闇氷がやってたのか!?」
氷河「うん。闇氷の事も皆に周知されたから、言っておこうかなって。後、自分がやったって勘違いされないようにね。」
闇氷「ほんとは私の手柄なのに手柄横取りされたらたまったもんじゃねぇよ…ったく…でも、姉さんならあれぐらい斬れたと思うけどな。」
氷河「ちょ、ちょっと闇氷、無謀な事言わといてぇさ…」
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>>1
挙手!士郎VS氷河達の模擬戦小説おねしゃす。まず士郎は折り紙で様子見。何回か強い攻撃ヒットして煙が立つ。晴れたところには。ディケイド!準備運動が始まる。まず青鬼メンバーは簡単。ちょっと長引いたら戻る。そして数分で今度は準備運動が終わり50%で始まる。後はフル活用でディケイドの勝利かな。俺トピ画設定出来ない
ということでよろしく
>>2
りょーかーい
いつも通りコメントでやりあう感じかな?
それともこっちでまとめる感じ?