空想小説「青鬼」 第16話 カートリッジ
宿にて、皆が寝静まっている中、氷河は一人、作業をしていた。
氷河「えぇと、あれをこうして、っと…よし、できた!」
氷河は完成した物を持って言った。すると、卓郎が中へ入って来た。
卓郎「やっぱしなんかしてた。で、それなんだ?あの合体の勾玉とは違うっぽいが…」
卓郎は手に持っている勾玉を指さして言った。
氷河「これですか?前の戦いの時、この一体の勾玉が凄く役に立ってくれたから、一体の勾玉に記録したデータを元にして[カートリッジ]を作ってみたんです。」
氷河は少し解説を挟むと、机の上に置いてあった一体の勾玉を手に取り、解説を続けた。
氷河「こっちが一体の勾玉。んで、こっちが新しく作ったカートリッジです。」
卓郎「色が違うな。付けたらどうなるんだ?」
一体の勾玉は水色と白、カートリッジは白い所が黄金色になっていた。
氷河「じゃあ、やってみようか。これを付けると…」
氷河が髪にカートリッジを付けると、カートリッジが光り、氷河は光に包まれた。光が収まると、その姿は神雷たひがの姿になっていた。
卓郎「うおぉっ!あの合体の姿になった!でも、一体どうやって…?」
卓郎が疑問に思うと、氷河は…たひがは少し説明してくれた。ただ、合体はしていないからか、声は二重にはなっていなかった。
たひが「このカートリッジはさっきの戦闘のデータを元に作った物なんですよ。あ、もうこれ外しますね。」
そう言い、たひがは髪からカートリッジを外した。すると、たひがの姿は光に包まれ、氷河の姿に戻った。
卓郎「えっと…どういう事だ…?」
卓郎はまだいまいち理解しきれていないようだ。
氷河「さっきも言った通り、合体のデータは全部勾玉が記録しているからね。それを元にその力の源をこのカートリッジに詰め込んだって訳です。」
卓郎「じゃあ、たけしがいなくてもたひがの姿になれるって事か?」
ある程度理解した卓郎は氷河に聞いた。
氷河「はい。って言うか、さっき見せたばっかじゃないですか。でも、あくまでデータはデータ。合体した時ほどの威力は出せませんけどね。そうですね…大体80%ってとこですかね。」
卓郎「それでもすげぇじゃねぇか!じゃあ他の皆のやつも作ろうぜ!」
卓郎が明るく言うと、氷河は少し顔を曇らせた。
氷河「それがそうも行かないんですよね…カートリッジを作るのにも条件があるんですよ。1回も合体した事がない人とのカートリッジは作れないんですよ。」
卓郎「じゃあ、今俺と合体したら、俺と合体したカートリッジが作れるんじゃねぇのか?」
卓郎が言うと、氷河は首を振った。
氷河「いや、ただ単に合体すればいいってわけじゃないんです。合体してその上、本気の戦闘のデータがないとカートリッジは作れないんです。その件に関しては自分の実力不足です。すみません…」
卓郎は気落ちする氷河の肩を叩いた。
卓郎「気にするな、氷。これから彼奴等の戦いが続く以上、データもたくさん集まるって!」
氷河「…はい、そうですね。」
氷河は少し明るい笑顔で言った。
卓郎「そういや氷、その、カートリッジって言ったか?それ、どうやって作ったんだ?」
氷河「あー、それはですね…」
氷河が言い戸惑っていると、部屋の影から、黒い髪の者が現れた。その姿はまるで、氷河が鏡写ししたように瓜二つだった。違う所と言えば、氷河と対象的な髪型、黒い髪、赤みががった右目、左眼の眼帯、服の色くらいだった。
??「姉さん!…あっ…」
黒い髪の者は卓郎を見ると、しまった、という表情をした。
卓郎「え、誰!?」
卓郎も突然氷河の色違いのような者が現れ、驚いていた。
氷河「ちょっと前に言った自分の頼れる相棒だよ。」
氷河は冷静に言った。
卓郎「い、いやちょっと待て?今氷の事を『姉さん』って…」
卓郎がそれを指摘すると、氷河は目を瞑って言った。
氷河「…うん、自分の頼れる妹だよ。」
卓郎「お前、妹いたんだな…」
氷河「探索してきたんだよね?何か情報はあった?」
??「あぁ。オーヴァーは『殲滅軍』って所に所属しているぜ。フード被った奴が『僕ら殲滅軍の名に泥を塗るな』ってたからな。他にも仲間らしき奴が何人かいたぜ。」
黒い髪の者は淡々と話した。
卓郎「物騒な団体だな…そういやお前、名前は?」
卓郎は氷河の妹に名前を聞いた。
闇氷「私か?私は夜桜闇氷(よざくら やひょう)。姉さんの妹的存在だ。…で姉さん、私はコイツ…卓郎って言ったか?卓郎の前に現れて大丈夫なのか?」
闇氷は氷河の方を向いて言うと、氷河はあ、という感じの顔になった。
氷河「あー…卓郎さん、この件はあまり皆さんには言わないで下さい!お願いします!」
氷河は手を合わせて小声で言った。
卓郎「あ、あぁ、分かった…」
卓郎は少し気に食わない様子だったが、承諾した。
氷河「じゃあ闇氷、引き続きお願い。何かあったら言いに来てね。」
闇氷「あぁ、任せとけ。」
そう言うと、また闇の中に消えていった。
卓郎「き、消えた…!?」
卓郎は目を丸くして驚いた。
氷河「ここに来て知った事だけど、どうやら闇氷はあの青い光がなくても能力が使えるんだ。」
卓郎「ま、マジで…!?じゃあ何で闇氷は一緒に同行してくれないんだ?」
卓郎が言うと、氷河は苦笑しながら言った。
氷河「闇氷も自分に似て、複数行動を苦手とするからね。何なら闇氷の方が苦手なまである。」
卓郎「氷って複数行動苦手なんだな。意外だぜ。」
氷河「そうなんですよね〜…じゃあ、自分そろそろ寝るから。」
卓郎「OK。おやすみ。」
卓郎は部屋から出て行った。
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卓郎が元の部屋に戻った事を確認すると、氷河は水刃さんの所へ行った。
氷河「入りますよ、水刃さん。」
水刃「…!氷河ちゃん、どうしたの?」
水刃さんは椅子から立ち上がり、氷河の元へ来た。
氷河「実はですね、斯々然々…」
氷河はさっき上で交わした事を話した。
氷河「それで、その辻褄合わせをやってもらいたいんです。」
水葉「なるほどね。じゃあ、『書物の中に書かれていた』と言っておくね。」
氷河「ま、まぁ、事実っちゃ事実だからそれでもいいけど…」
水葉「氷河ちゃんが不安がる事はないわ。任せてよ!」
水葉さんは我が子を見るような笑顔で言った。
氷河「…分かりました。じゃあ、自分も寝ますね。おやすみです、水刃さん。」
水刃「えぇ、おやすみ。氷河ちゃん。」
氷河は水刃さんのいた部屋から出て行った。
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ひろし「おはよう御座いま…おや、氷河じゃないですか。珍しいですねこんなに朝早く。」
朝、ひろしが居間へ入ってくると、珍しく氷河がいる事に気づいた。
氷河「あ、ひろしさん!水刃さんが書物を読んでたらオーヴァーらに関するかもしれない情報を少し手に入れたんです!」
水刃「そこから先は私が言うわ。」
水刃さんが居間に顔を出して言った。
水刃「おそらく、オーヴァーは殲滅軍ってとこに所属していると思うわ。」
ひろし「殲滅軍?どういった組織なのですか?」
水刃「さぁ…そこまで詳しい内容は書かれていなかったのよ。でも、何かを崇めているとか何とか書かれていた気がするわ。」
ひろし「なるほど。とりあえず、物騒な団体というのは分かりまし…」
ひろしが言い切る前に、鈍い爆発音が鳴り響いた。
水刃「何!?今の音!?」
ひろし「分かりませんが、良い事ではないことは確かですね。」
氷河「まさか殲滅軍…オーヴァーが…!?こうしちゃいられません!皆さんを起こしましょう!」
3人はたけし、美香、卓郎を起こしていった。3分も立たないうちに、全員が揃った。
美香「皆揃ったわね!行きましょう!」
美香はやる気満々の声で言った。
たけし「さ、さっきから何度も爆発音が聞こえるぜ…ガタガタガタガタ」
たけしの言う通り、何度も爆発音が響いていた。
卓郎「あぁ!急ごう!」
卓郎は拳を握りしめて言った。
氷河「方向は青雅洞窟方面です!」
氷河は青雅洞窟の方向に指を指して言った。
ひろし「では、直ぐに向かいましょう!」
ひろしの言葉を皮切りに、5人は駆け出した。
水刃「気をつけてねー!」
水刃さんは皆に向けて手を振って言った。
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青雅洞窟の前では、オーヴァーが持ち前の鎌で辺りをボロボロにしていた。そのせいか、周りに青光が舞っていた。
オーヴァー「ハハハッ!こうやって騒いでりゃ彼奴等から現れてくれるだろうなぁ!オラァ!!」
オーヴァーは笑いながら周りを鎌の斬撃で更にボロボロにした。
オーヴァー「ハハッ、こういうのも悪くねぇなぁ!…ん?」
オーヴァーは向かい側から気配を感じた。
ひろし「オーヴァー…と言いましたね。」
氷河「何を荒らし散らかしているのかな?」
ひろしと氷河が静かに言った。
オーヴァー「ハッハッハッハ!随分と早く釣れるもんなんだなぁ!今回はこの俺が全力で直々にぶっ頃してやるよ!!」
オーヴァーは高らかに笑いながら言った。
氷河「やれやれ…」
氷河は呆れた声を出すと、カートリッジを指に挟んだ。
美香「え、氷ちゃん、その勾玉は…?」
氷河「説明は後か卓郎さんに聞いて。」
美香の質問を丸投げしてオーヴァーの所へ走り出し、カートリッジを髪に付けた。すると、光に包まれ、たひがの姿となり、神槍・雷霆を片手に、オーヴァーに応戦した。
たけし「えっ!?何で俺と合体した姿になってるんだ!?」
たけしが驚くと、卓郎が説明してくれた。
卓郎「氷がたひがのデータが入ったカートリッジを作ったんだとよ。」
たけし「へ、へぇ…」
たけしは相づちを打つも、まだ驚いていた。
オーヴァー『んだと!?コイツ、前の戦いより強くなってやがる…!』
たひが「どうした?全力で来るんだろ?」
たひがはオーヴァーに槍の鋒を向けて言った。
オーヴァー「舐めんな!」
オーヴァーも負けじと、鎌片手に応戦した。
ひろし「すごい、そのカートリッジとやらの力をフルに引き出してますね…!」
ひろしは目を見開いて言った。
卓郎「氷自体も強いから本当に80%なのか疑うほどだぜ…!」
美香「80%って?」
美香が卓郎に聞くと、卓郎は軽く解説を挟んでくれた。
卓郎「あくまでデータだから、合体した時の力は出せないらしい。その最大の力が80%って言ってたっけな。」
美香「そういう事ね。」
そうこう話していると、オーヴァーは中々押されていた。
オーヴァー「クソが、ふざけやがって!有象無象のゴミどもが!!」
オーヴァーが逆上する中、美香が口を開いた。
美香「もう諦めて帰ったらどうなの?この人数相手に一人じゃどうにも出来ないでしょ!もう二度と悪さしないって約束するなら見逃してあげてもいいわよ?」
オーヴァー「どいつもこいつも俺の事を舐めやがって…!!ゴミがいくら増えても変わんねぇんだよ!!全員ぶっ殺してやるよ!!闘気全開!!」
美香の言葉を聞いてますます逆上したオーヴァーは、波動のような物を飛ばし、雰囲気が変わった。
卓郎「くっ、何だ!?」
ひろし「奴の力が急激に上がりました…!気をつけて下さい!」
たひが「…どうやら、ここからが本当の戦いのようだね。」
氷河「美香!」
美香「え、な、何?」
氷河「これ、頼めるか?」
氷河は白い勾玉を美香に渡した。
美香「これって…もしかして…」
氷河「行けるか?」
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>>1
なんだったっけ、暴走雪さんと戦ったときに使ってたカートリッジだよな...
>>2
霞「あの時に使ったのは17話(サムネ完成次第投稿予定)で登場する死花 美氷のカートリッジだね。」
>>10
霞「毎回O段([こ(ko)]とか[も(mo)]とかの子音にOが付くやつ)を打とうとした時にiかpかlが乱入するからね〜」
>>12
霞「自分の小説はあまり誤字は今のとこないけど、後々見たら誤字があったり字が抜けてたりするからね〜」