空想小説「青鬼」 第14話 神雷
たけし 氷河「全ての者達に祝福を…」
黄金色の髪の者が矛と剣を合わさせたような槍を体の前で構え、ゆっくりと降りてきた。
美香「わぁ…凄く綺麗だわ…」
美香はその神々しい姿に見とれていた。やがてたけしと氷河が合体した者が地に足をついた。その目は、鮮やかな黄緑色だった。
たけし 氷河「彼の者達に力を分け与えよ。ボルレイズパワー」
たけしと氷河が合体した者が、槍の鋒(きっさき)を3人に向けた。その先端から光の球が放たれた。それが3人に当たると、黄金色のオーラに包まれた。
美香「か、体が光ってるわ…」
美香は自分の掌を見て目を丸くしていた。
ひろし「何ですかこれは…体力が回復してきています…!」
卓郎「それだけじゃねぇ。信じられねぇくらいの力が湧いてくるぜ…」
たけし 氷河「当然さ。その技はいわゆる、バフ効果ってのを付与する技だからね。皆、これで戦える?」
その声は、たけしと氷河が同時に喋っているような二重の声だった。
卓郎「あぁ、たけし、氷河。感謝するぜ。」
ひろし「これでまた戦えます…!」
たけし 氷河「あぁ、これだと呼ぶのに少し困るね…そうだね…[神雷(しんらい) たひが]なんてどうかな?」
たけしと氷河…神雷たひがが言った。
美香「ふふっ、いいじゃないの、たひが!」
美香はたひがの事を褒めた。
たひが「あはは…褒めてくれるのは嬉しいけど、そろそろ戦いに戻らないとマズいと思うよ?」
たひがが苦笑いで言うと、美香は大剣を作り出し、やる気に満ち溢れた声で言った。
美香「そんな事、言われなくても分かってるわよ!じゃ、反撃と行こうじゃないの!行くわよ、皆!」
その一言で、4人は自身の影の元へと走っていった。
美香「…はっ!」
美香は一瞬で間合いを詰め、蹴りを入れた。影美香はとっさに飛び退くが、後ろにぴったりとくっついていた。
美香「遅いわよ。二人がくれた力、存分に使わせてもらうわよ…!この一撃で決めるわ…!!夕桜・黄昏の花びら!!」
美香は自分の大剣で居合斬りを決めた。渾身の一撃をくらった影美香はグリッチのようになり、消えていった。
美香「…決まったわね♪」
場が変わり、卓郎は力をためていた。影卓郎が炎を飛ばしたが、効いている素振りはなかった。
卓郎「この力、無駄にはしないぜ。」
影卓郎は後ろに飛び退き、さっきの黒い炎を放ってきた。
卓郎「今度は負けねぇ!獄炎・インフェルノファイア!!」
そう言い放ち、放った。紅い炎はさっきとは比べ物にならないほどの火力で、圧倒した。
卓郎「…しっかり倒せたようだな。」
また場が変わり、ひろしは上を見上げていた。
ひろし「ここからあの崖の上…8、90mという所ですか…普段なら射抜くのは難しいですが…今なら射抜ける気がします…!」
影ひろしは弓を構え、連射してきた。しかし、距離も相まって、当たることはなかった。
ひろし「流石にこの距離ではブレブレですね。さぁ、次はこちらの番です。…白夜・明け星の一矢!」
ひろしの白く輝く矢は急所に当たった。
ひろし「…ネーミングセンスは壊滅的ですが、倒せたので、いいとしましょうか。」
倒したのを確認すると、背を向け、苦笑しながらこの場を後にした。
たひがは、影たけしと影氷河を相手にした。氷河はたけしと精神世界で少し会話をした。
氷河『さて、2対1、か…なんてこともないな。早く終わらせようか。』
たけし『だ、大丈夫なのか…?』
氷河『大丈夫だ。ほら、やるぞ。』
たけし『あ、あぁ!』
たひが「…来い。」
影は即座に詰め寄ってきた。たひがは槍を構えた。
たひが「彼の者に天罰を。青龍氷雷!!」
空に槍を掲げると、天から青白い雷が落ちた。当然影は倒された。最早オーバーキルだ。
たけし『…き、決まったな…!』
たけしは嬉しそうに言った。
氷河『あぁ。後は…』
氷河…たひがは鋭い目つきで水刃さんの方向を向いた。黒いオーラを纒った水刃さんが球体を作り出していた。
卓郎「…!やべぇ、攻撃が来るぜ!」
美香「任せて!私が作った大剣で一刀両断するわ!」
飛ばしてきた球体は美香の大剣で斬られて無くなった。
ひろし「流石ですね…それと、たひがの力を抜きにしても、水刃さんの力が弱まった気がします。」
ひろしが分析能力を使いながら言った。
美香「きっと、影を作り出した時に膨大な力を使ったんじゃないの?」
卓郎「力が弱まったなら元の姿に戻」
オーヴァー「残念だが、ああまで変化したら無理だぜ。」
オーヴァーがあざ笑うかのように言った。
卓郎「お前が決めつけることじゃねぇだろ!!」
ひろし「…な……っ!!」
卓郎がオーヴァーに向けて怒声を上げると、ひろしが手を止めた。
美香「ひ、ひろし、どうしたの…?」
美香が不安げに聞いた。
ひろし「どうやら…本当のようです…」
ひろしが現実を信じたくないような表情で言った。
卓郎「な、冗談だろ…?」
卓郎が絶句した表情で言った。
美香「じゃあ水刃さんは…」
ひろし「……………」
美香はひろしの方を向いて言うと、ひろしは目を瞑り、顔をそらした。
美香「そ、そんなのって…」
美香は泣きそうな表情になっていた。それはたひがも…たけしと氷河も聞いていた。
たけし『じ、冗談だろ…?氷河!早く皆のとこに行って詳しい情報を…』
氷河『…冗談じゃねぇ。』
たけし『ひ、氷河…?』
氷河『あんな奴にこっちの何が分かるってんだよ…あの野郎…!!』
氷河は歯を食いしばり、槍の柄を握りしめた。
たけし『な、なぁ氷河。何とか水刃さんを助けられる方法はないのか…?』
氷河『…考えはある。やってみるよ。』
卓郎「もし戻らねぇのならせめて楽にしてやらなきゃいけねぇな…」
卓郎は辛そうな表情を浮かべながら言うと、「待ってくれ!」と声が上がった。
たひが「僕に…僕らに少し時間をくれないか?」
たひがが…氷河が言った。
卓郎「…え?あ、あぁ…分かった…でも、何をするんだ…?」
たひが「それは見たほうが早いから言わないでおく。」
たひがは静かにかつ、早口で言うと、前へ進んだ。
氷河『水刃さん、待っててくれ…すぐに元に戻すから…!』
たひが「…彼の者を…在るべき姿へ…!奇跡・リバースリザレクション!!」
たひがの持つ槍から光の粉が溢れ出てきた。その光は、黒いオーラを消し去り、本来の水刃さんの姿に戻したのだ。
美香「も、元に戻ったわ…!」
美香が前のめりに言った。
オーヴァー「冗談だろ!?あの劇薬を飲んで豹変したやつは助からねぇはずだってぇのに…!!」
オーヴァーがどことなく苛立った声で言った。
ひろし「ほ、本当の奇跡ですね…!」
ひろしは目を見開いて言った。
たひが「皆…水刃…さんの…所…へ…行っ…」
跡切れ跡切れに言葉を発するが、言い切る前に倒れてしまった。限界だったのか、合体が解け、たけしと氷河に分離した。
オーヴァー「チッ…今回は大人しく帰ってやる…俺達に勝てると思うなよ、下民が…!」
そう捨て台詞を言い残すと、どこかに消えていった。
美香「ま、待ちなさい!下民ってどういうことよ!?」
卓郎「こっちはすごいって言ってるようなもんだな…」
卓郎は半分呆れて言った。
美香「あ、水刃さんは!」
3人は水刃さんの元へ駆け寄った。
ひろし「水刃さん、大丈夫ですか?」
水刃「み、皆…」
ひろしが水刃さんの体を起こして言うと、水刃さんは片目を開けて反応した。
ひろし「どうやら、大丈夫そうですね。それより、これから先ああいうのが出てこられると厄介ですね…」
卓郎「大丈夫だ!今の俺達はたひがからもらった力のおかげで無敵なんだぜ!」
ひろしが少し考え込むと、卓郎がひろしの肩を叩いて言った。
美香「そうよそうよ卓郎の言う通り!今なら誰がきても負ける気がしない…わ?」
美香が相槌を打ったその時、自信達を纏っていたオーラが消えた。
美香「あ、あれ?何で?効果が消えちゃったわ…!」
氷河「ごめん…」
氷河の掠れた声が聞こえた。見ると、氷河とたけしがこちらに歩いて来ていた。
卓郎「氷、たけし!ひろしと美香は水刃さんといててくれ。」
卓郎はそう言うと、二人の元へ走っていった。
氷河「さっきので力を使い果たしてしまって…もう力が…」
卓郎「氷!」
倒れかかる氷河を卓郎は受け止めた。
氷河「ごめんな…肝心なとこで役に立たなくて…これくらい耐えれないといけないのに…」
卓郎「何言ってんだ…さっきの戦いに勝てたのだってお前とたけしがいてくれたからなんだぞ…氷のおかげでもあるんだ…」
氷河「そっか…嬉しいな…」
そう言うと、氷河は目を閉じ、力が抜けたかのように卓郎にもたれ掛かった。
卓郎「ひ、氷…!?」
美香「ちょっと、氷ちゃん!しっかりしてよ!」
慌てる美香を横目に、水刃さんは氷河の元に寄った。
水刃「…大丈夫。気を失ってるだけよ。しばらく宿で休ませておけばきっと大丈夫よ。」
美香「よかったぁ…」
水刃さんの言葉で美香は安心して地面に座り込んだ。
ひろし「そういえば…たけしは大丈夫なのですか?」
ひろしはたけしの方を見て言った。
たけし「あぁ…合体していたとはいっても、あくまで俺は力を貸していただけで、ベースは氷河だったから…」
ひろし「なるほど。」
たけし「でも、だからといって全然疲れてないってわけじゃないけどな…」
たけしは軽く首を振った。
水刃「それじゃあ、宿に戻りましょう。氷河ちゃんを休ませないといけないからね。」
水刃さんは氷河を背負いながら言った。
美香「そうね。反省も兼ねてゆっくり休みましょ。」
6人は宿へ入っていった。
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