空想小説「青鬼」 第21話 堕ちた刃使い
卓郎「え?行けんのか?だが、これだけの数を殺るのは大変じゃ…」
氷河「…卓郎さん、お忘れですか?自分の持ち技を。」
たけし「あっ…!」
氷河「霜符・サウザンナイフレイン!!」
木鬼「ウワアアアアアッ!!!」
氷河のナイフの雨は、全ての木鬼に的確に当たり、全滅させた。
たけし「や、やった…のか…!?」
ひろし「えぇ、どうやらそのようです。」
氷河「それフラグ…」
アルト「お見事お見事。流石は今まで青鬼さんと戦ってきた皆さんです。」
アルトが上から手を叩きながら降りてきた。
卓郎「さぁ、約束だ。俺達と戦え!」
卓郎がアルトにクナイを向けて言った。
アルト「そうですね。では、この子と戦ってもらいましょう。」
氷河「…何か出してきましたね。」
奥から何かが歩いてきた。
たけし「な、何だあれ…?な、なんか…」
卓郎「…おい、これって…」
美香「ね、ねぇ…これってもしかして…」
ひろし「人間と青鬼の…キメラ…!?」
ひろしの言う通り、現れたのは人間のサイズでありながら、青い皮膚をした生物だった。目は虚ろで、生気すら感じられなかった。
アルト「いやー、使い物にならなくなってしまった部下が大勢いたものですから、折角なので有効活用したのですよ。本人もさぞ喜んでいるかと。」
たけし「こ、こいつ…頭がイカれてやがるぜ…!ガタガタガタガタ」
氷河「っ…ん?」
氷河はアルトに怒りを覚えながらも、キメラが持っている針に何か違和感を感じた。
美香「ちょっと、話が違うじゃないの!あんたが降りてきて戦いなさいよ!」
美香はアルトに大剣を向けて言った。
アルト「いえいえ、この子は私の戦力です。この子を倒す、という事は私の戦力を削る、という事です。では、頑張って下さい。」
そう言うと、またさっきの所へ戻って行ってしまった。
美香「うーん…今回はどうする?」
氷河「自分が行きますよ。」
氷河が小さく手を上げて言った。
ひろし「分かりました。気をつけてくださいね。」
氷河が前に進む中、氷河は少し考え事のようなものをした。
氷河『………』
考え事のようなものが終わった時、丁度線の内側に入った。
卓郎「氷、頑張れよー!」
卓郎は手を振って言った。
氷河「はい、頑張ります!」
氷河も手を振り返して言った。そして、キメラに向き合った。
氷河「…さぁ、来い!」
氷河はナイフを相手に向けて言った。その言葉を皮切りに、大量の針を投げつけてきた。氷河は針を弾きながら自分の中で呟いた。
氷河『…成分的にも、そうだね。案の定、自分の予想通りだったよ。』
氷河もナイフ一筋で応戦した。
美香「ねぇひろし、あの針、どんな効果があるか分かる?」
美香はひろしに聞いた。
ひろし「そうですね。調べて見ましょうか。」
ひろしは分析能力で調べようとした。…その時だった。
ひろし「…つっ…!?」
突然、分析能力で出していたパネルが砕けた。
たけし「ひ、ひろし…!?どうしたんだ…!?」
たけしが慌てて聞いた。
ひろし「分析能力を使おうとしたら…突然パネルが砕けて…」
ひろしが珍しく困惑した様子で言った。
卓郎「ん…?ちょっと待て、クナイが出ねぇ…!」
卓郎が手元を見ながら言った。
美香「ち、ちょっと、私もなんだけど…!」
美香が驚いた様子で言った。
たけし「お、俺も出ねぇ…!!」
たけしも驚く中上から声が聞こえた。
アルト「あぁ、あなた達の能力は雑談している内に奪わせていただきました。」
アルトの指の間には白、黃、桃、赤色の2cm程の玉があった。
美香「あぁいっつぅぅぅぅ!!!」
美香が拳を握りしめて積怒の声で言った。その声に反応した氷河は後ろを振り返った。
氷河「み、美香さん、そんな声を出してどうし…」
卓郎「氷!危ねえ!!」
卓郎が身を乗り出して言った。が、遅かった。針の1つが氷河の腕に刺さったのだ。
氷河「…!」
氷河は急いで針を抜き、キメラに切り掛かった。
アルト「やった!刺さった!…残念ですが、君達の勝ち筋は無くなりました。」
アルトは4人に不敵な笑みを浮かべて言った。
たけし「ど、どういうことだよ…!?」
アルト「直に分かるさ。」
そういい、また奥に行った。
氷河「じれったいな…さっさと終わらせるか。」
そう言うと、首筋を斬りつけた。キメラは氷漬けになって消えた。
美香「あっ、倒せたじゃないの!あいつが勝ち筋は無くなった、とか言ってたから心配したけど、やっぱりハッタリだったのね!」
美香は腕を組んで言った。
ひろし「ま、待って下さい!氷河の様子が変です…!!」
ひろしの言葉で氷河を見た。
氷河「っつ…!!何だ…これ…っ…!?」
氷河は膝をつき、左手で頭を抱え、苦しんでいるように見えた。
卓郎「ま、まさか、あの針、毒だったのか…!?」
アルト「いや、そんな生半可な物ではありませんよ。」
美香「ど…どういう事よ…!?」
たけし「お、おい…!氷河が…!!」
たけしが震えた指をさした。見ると、氷河の周りに黒いオーラが渦巻いていた。
卓郎「あれって…まさか…!!」
アルト「ようやく気づいたようですね。」
アルトが上からニッコリと冷たい笑顔で言った。
アルト「あれは、オーヴァーが使っていた薬ですよ。と言っても、あいつみたいに暴れたりはしませんよ。…私の忠実な下僕となるのです!」
そう高らかに言った後、氷河の周りに渦巻いていたオーラが消え、姿が変わった。服や髪は赤や黒に染まった姿をしていた。
卓郎『ん?あいつは…』
卓郎は変わり果てた氷河の姿に見覚えがあった。
美香「嘘…氷ちゃん、冗談でしょ…?」
美香が絶望したような声を出した。
アルト「そう、その声が聞きたかったのですよ、念花の大剣使いさん!さぁ、残りの3人も打ちひしがれてください!」
アルトは高らかに笑った。そしてアルトは黒く染まった氷河…堕氷河に命令をした。
アルト「そうだ。…闇に堕ちた雪華のナイフ使い。奴らを殺すのです。」
たけし「はぁっ!!?」
ひろし「こいつ…なんという事を…!!」
しかし、すぐには襲い掛かろうとせず、アルトに頼み事をした。
堕氷河「…アルト様。1つ聞き入れて欲しい願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
アルト「何でしょうか?」
堕氷河「私は1対1の公平な戦いがしたいです。故に、能力を一時的に返してほしいのですが、どうかこの願い、聞き入れてくださらないでしょうか?」
堕氷河はアルトの前で跪いて言った。それを見た4人は完全に絶望していた。…1人を除いて。
アルト「いいでしょう。では、誰と戦うのですか?」
堕氷河「…そいつだ。」
そう言い、ナイフを向けた相手は…卓郎だった。
卓郎「お、俺…!?」
卓郎は自分を選んだ事に驚いた。その選択に美香は激昂した。
美香「はぁ!?そんなの私が許さないわよ!卓郎を倒すのならまず私を」
美香が言い切る前に、美香の横すれすれにナイフがとんだ。
堕氷河「この程度のナイフに反応出来ない程度、所詮底辺の実力で物を言うな。お前に選択肢はない。無論、拒否権もない。身の程をわきまえろ。」
その口調は氷河とは別人のようだった。
堕氷河「…おい、さっさと来い。」
堕氷河はナイフを卓郎に向けて言った。卓郎は少し顔を伏せた後、意を固めた顔で歩き出した。
美香「卓郎…!」
美香が泣きそうな表情で名を呼んだ。
卓郎「大丈夫だ、美香。俺が絶対に氷を元に戻す。手助け出来ない代わりに、応援いっぱい頼むぜ?」
卓郎は美香の肩に手を置き、優しい笑顔で言った。
美香「わ、分かったわ!絶対氷ちゃんを助けてね!」
卓郎「あぁ、任せろ!」
美香にそう言い残し、戦いのフィールド内へと足を運んだ。
堕氷河「…来たな。」
堕氷河は薄く笑って言った。
アルト「じゃあ、能力を返しますね。」
そう言い、赤い玉を差し出した。赤い玉は卓郎に触れると、光の粉になり、消えた。卓郎が手を開くと、自分がいつも使っているクナイが手のひらに現れた。
アルト「それでは、頑張ってくださいね。まぁ、ジリ貧になって終わりそうですが。」
アルトはあざ笑いながら上の方へ戻っていった。堕氷河は左手にナイフを構えた。
卓郎「…行くぜ。」
卓郎もクナイを構えた。
堕氷河「…あぁ。力の限り抗ってみろ!!」
そう言い放ち、堕氷河は速攻で間合いを詰めた。
卓郎「っ…!」
『早い…!!』
卓郎は何とかクナイで防いだ。しかし、堕氷河は攻撃の手を緩めない。卓郎がクナイの角度を変え、堕氷河のナイフを受け流した時、卓郎と堕氷河はすれ違ったような描写になった。その瞬間、卓郎が何かに反応した。
卓郎「はぁっ…?お前、それ、どういう」
卓郎の言葉を遮るように大きな鍔迫り合いの音を出した。その後、何度も鍔迫り合いを繰り返した。4回目程鍔迫り合いをしたが、ついに状況が動いた。
堕氷河「…っだあぁもうじれってぇ!!さっさと死にやがれぇぇ!!!」
その怒声と共に、卓郎を袈裟斬りにした。卓郎はクナイを落とし、倒れ込んだ。地面が赤く染まっていく。
ひろし「卓郎!!」
たけし「卓郎…!!」
美香「卓郎っ!!」
3人は卓郎が殺された事に啞然としてしまった。
アルト「所詮はこの程度。選ばれた末路ですね。さて、次はどうしますか?」
堕氷河「…1つ提案があるんだが、いいか?」
堕氷河はアルトに提案をしてきた。
アルト「何でしょうか?」
堕氷河「その能力玉、私にくれませんでしょうか?その力を使えば、速攻で終わらせられそうな気がするのですよ。」
アルト「おや、公平な戦いというのは…」
堕氷河「さっきの奴のせいで気分害されたので。」
アルト「あなたも中々ですね…まぁ、いいでしょう。どうぞ。」
アルトは残りの3つの能力玉を渡した。しかし、それを使おうともせず、じっと眺めている。
アルト「…どうしまし」
堕氷河「かかったな!!」
突然堕氷河が近寄ってきた主であるはずのアルトを蹴り飛ばした。そして、上から身を捻りながら飛び降り、声を上げた。
堕氷河「受け取れ!卓郎!!」
堕氷河が声を上げると、殺されたはずの卓郎が身を起こした。
卓郎「その言葉を待ってたぜ、闇氷!!」
堕氷河、ではなく、闇氷が投げた能力玉を卓郎は全部キャッチした。
卓郎「お前ら、受け取れ!」
卓郎は闇氷から受け取った能力玉を3人に投げた。
美香「卓郎っ!!わぁぁぁぁん!!」
結界が消えた瞬間、美香は泣きながら卓郎に抱きついた。
卓郎「悪ぃな、美香。心配させちまって。お前らも悪かったな。」
卓郎は苦笑しながら言った。
たけし「そ、それより卓郎、さっきの怪我は…?」
卓郎が心配しながら言った。
卓郎「あぁ、それは後で話すぜ。」
卓郎は笑顔で言った。闇氷は微笑を浮かべ、腕を組んでその会話のやり取りを見ていた。
アルト「お前っ!!」
アルトが後ろから闇氷を蹴り飛ばした。闇氷は卓郎達の横の壁に打ちつけられた。
闇氷「っつて…」
卓郎「おいおい、大丈夫か?」
卓郎は闇氷を心配した。
アルト「なぜ私に攻撃をしたのですか!?あなたは私の下僕になったでしょう…!?」
闇氷「はぁ?お前まさかあれで下僕に出来たと思っていたのか?それならお前は本当に馬鹿だぜ?」
闇氷は腕を組んで、何言ってんだこいつ、という感じの表情と声で言った。
卓郎「こいつはわざと悪役を演じてたんだよ。」
卓郎は闇氷の隣に立ち、肩に手を置いて言った。
闇氷「ちょ、やめろって。」
闇氷は卓郎の手を振り払った。
卓郎「あ、あぁ、悪ぃ、闇氷。」
卓郎は闇氷に謝り、話を続けた。
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