空想小説「青鬼」 第27話 ハクモ
氷河「今の大声はなんですか…あ、皆さん!来てたんですね!」
4人の声を聞きつけた氷河が部屋の奥からやってきた。
卓郎「あぁ、すまんすまん。ひろし達には言ってなかったな。」
卓郎が顔の前で手をあわせて言った。
たけし「ま、まぁそれはいいけどさぁ…」
水刃「こ、この可愛い生き物は一体なんなの…?」
美香「ほんとに可愛いわねぇ♡モフモフ♪」
美香はもう既にハクモの事をモフっていた。
ハクモ「ハク〜」
ひろし「ですが、見た事も無い生き物ですからね。誰かに調べてもらったらどうでしょうか?」
ひろしは興味深そうにハクモを見つめながら言った。
氷河「そうですね…ここの古い本を読みまくった闇氷ならワンチャン分かるかもだけど…でも、とりあえずは自分と卓郎さんとで面倒を見ますよ。」
ハクモ「ママ!ヒョウ!パパ!タク!」
ハクモは美香の元を離れ、卓郎と氷河の所へ向かった。
たけし「そうだな。氷河と卓郎に懐いてるみたいだし。そういや、名前は…?」
卓郎「ハクモって言うぜ。」
水刃「ハクモって名前なのね、この子。」
氷河「あ、自分が名前を付けました!」
美香「ハクモちゃん〜♡私は赤水美香って言うの!よろしくね!」
たけし「お、俺は黄河たけしだぜっ…!」
ひろし「私は白河ひろしです。」
水刃「私は三上水刃よ。」
ハクモ「ミカ、タケ、ヒロ、ミズ!」
ハクモは笑ったような顔で言った。
美香「キャーッ、可愛いー!」
たけし「タ、タケ?何で?」
たけしは自分をタケと呼ばれた事に少し困惑した。
ひろし「わ、私もヒロですし…」
水刃「ミズ…?刃はどこにいったのかしら…?」
ひろしと水刃さんも同様のようだ。
卓郎「安心しろ。俺もタクだからさ。」
卓郎も苦笑いで言った。
氷河「ははっ。ハクモはまだ子供だから二文字までしか言えないんじゃない?」
たけし「ふ〜ん。じゃあ、何で氷河と卓郎はママとパパなんだ?」
卓郎「それが俺にも分かんなくてな…」
ひろし「一番初めに見た顔だからでは?ほら、鳥もそうでしょう?」
たけし「確かにな…」
美香「えぇ〜、じゃあ私も昨日ここにいれば良かったわ!私もママって呼ばれたい〜っ!!」
美香は悔しそうに腕を振った。
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一方その頃、氷河達がハクモの卵を見つけたところで昨日卵を落とした者がレオに乗って卵を探していた。
??「あっれ〜?おっかしいなぁ。昨日からずっと探してるんだけど見つからない…」
声の主はレオから降りて辺りを見回した。
??「ここら辺だと思うんだけどなぁ…仕方ない。探索技を使うか…探すものを示せ、サーチアイサイト。」
目を瞑り、探知魔法を詠唱すると、目の色が変わった。目線の先に赤い線が伸びている。
??「あっちか!」
声の主は即座にレオに乗り、その方角に飛んでいった。
??「待っててね、僕の新しいペットちゃん!」
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その頃、宿の外で皆でハクモと遊んでいた。追いかけっこやボール遊び、その他色々遊んだ。
美香「ふう、いい運動になったわね。」
美香が伸びをしながら言った。
水刃「ハ、ハクモちゃんって結構体力凄いのね…」
水刃さんが息を切らして言った。
ひろし「そ、そうですね。もしかすると、凄い動物の末裔なのかもしれませんね…」
ひろしは未だ興味深そうな目で言った。
氷河「でも、こんなに楽しいのは久しぶりですよ。」
氷河は心做しか懐かしそうな目で言った。
卓郎「ははっ、そうだな。」
たけし「俺も楽しいぜ…!」
そういった瞬間、何かが落ちてきていた。土煙が上がる。
ハクモ「ハクッ!?」
卓郎「な、何だ!?」
突如、強風が巻き起こった。その影響で土煙は晴れた。そこにいたのは翼の生えた白いライオンに乗った者だった。
??「わぁお!孵化させられちゃってるよ。しかも最悪の奴らに。」
6人は警戒態勢に入った。
ひろし「誰ですか?」
ひろしは静かに言った。
氷河「そんな羽生えた白いライオンに乗ってる奴なんか、十中八九殲滅軍だろ。」
氷河は嫌悪の感情を示し、呆れた声で言った。
永「せいか〜い!僕の名前は永(えい)!気軽に永ちゃんって呼んでね♪」
場違いな明るい声で永は自己紹介をした。
水刃「こんな時に…今度は何が目的なのよ!?」
水刃さんは永に鋭い視線を向けて言った。
永「いやだなぁ、分かってるくせに、隠しちゃって。それだよそれ!神獣だよ!それ僕のだから返してよ。」
永はハクモを指さして言った。
たけし「神獣…?ハクモの事か…?」
永「はぁ?ハクモ?あのさぁ〜、人のペットに勝手に名前付けないでもらえる?まぁ、いいや。孵化させられちゃったのは誤算だっだけど。さぁ帰るよ、神獣ちゃん!」
永は営業スマイルのような笑顔で言った。
ハクモ「ハ、ハク…」
ハクモはそれを感じ取ったのか、嫌がる素振りを見せた。
美香「ほら!ハクモも嫌がってるじゃない!あんたなんかお呼びじゃないのよ!さっさと帰りなさい!」
美香は強い口調で永に言った。
永「嫌がってるかなんて関係ないよ。それは僕のペットなんだから、僕の物さ。僕の意見意外いらないのさ。」
どことなく見下しているような声で言った。
卓郎「お前なんかに…お前なんかにハクモは渡さねぇ!!」
永「うるさいなぁ。じゃあいいよ。レオ、全員食べちゃって。」
永のさっきまでの笑顔は消え、レオを仕向けてきた。
ハクモ「ハク…」
黙って永の言葉を聞いていた氷河が痺れを切らしたのか、口を開いた。
氷河「…まだ、ハクモについては分からない事が多い。…だが、1つだけ確定したことがある。」
永「へぇ?それは一体なんなの?」
氷河「…お前にだけは…お前らだけにはハクモを絶対に幸せに出来ないって事だ!!」
そう言い放ち、美氷のカートリッジを髪に付けた。
美香「氷ちゃん、いつの間にカートリッジを!」
美氷「こんな時のために、作っておいたんです。用意周到ってやつです!」
美氷は鎌を構えて言った。
たけし「そうか…!」
美氷「水刃さんはハクモを守ってて!」
水刃「分かったわ!」
ひろし「行きますよ、皆さん!」
たけし「あぁ…!」美香「うん!」卓郎「あぁ!」美氷「オッケー!」
レオは上空に飛び、強風を巻き起こした。5人は飛ばされないよう踏ん張るのに精一杯で攻撃に転じれなかった。
美香「うぅっ…」
ひろし「くっ…」
美香「物凄い風ね…」
永「へへーん!レオは僕のペットの中でも五番目に強いんだ!お前らなんかに負ける訳無いんだよ〜!殺っちゃえ!レオ!」
永はもう既に勝ったような声で言った。
卓郎「か、風が強すぎて…動けねぇ…そういや氷は!」
美氷は結界のようなものを張り、レオをずっと見ていた。
ひろし「…なるほど。念力で体の周りにバリアを…」
美氷「止まれ」
美氷はレオを睨みつけ、念を込めて言い放った。すると、レオの動きは金縛りにあったかのように動かなくなった。それと同時に、レオが放っていた風が止んだ。
たけし「と、止まったぜ…!」
永「チェッ、これはオーヴァーも苦戦する訳だ。だけどこっちだって!レオ!!!しっかりしろ!!!」
永はレオに向かって声を発した。すると、レオの動きの制御がなくなった。
美氷「…!」
美氷も声こそは発しなかったが、少し動揺していた。
卓郎「あの技を打ち破った!?」
ひろし「ですが、相手も弱っています!私達も攻撃を!」
卓郎「ファイアグレイブ!」
美香「サイコカッター!」
ひろし「アイシクルショット!」
たけし「エレキスピア!」
ひろしと美香と卓郎は各々の属性の遠距離技、たけしは大量の槍ををレオに投げた。しかし、効いてる様子はなく、美氷に突進してきた。
美氷「っ…うわっ!」
突進攻撃は無言でテレポートで上空に回避した。が、追撃の火球を食らってしまった。
ひろし「うあっ!」
美香「きゃあっ!」
地上の4人もレオの火球を食らってしまった。
たけし「つ、強い…」
卓郎「氷は無事なのか!?」
美氷のいる所は土煙が舞って見えなかった。
永「レオ!あいつがそう簡単に死ぬわけがない!!追撃しろ!!」
その言葉と共に美氷がいるであろう場所に火球を放ち続けた。
たけし「美氷…!!」
永「ヘヘっ、これなら流石に死んじゃったかな?」
土煙が晴れる。しかし、そこに美氷の姿はなかった。
永「あれ〜?まさか…」
永はサーチアイライトを使い、場所を特定した。
永「レオ!上だ!!」
その声を聞いたレオは上空を見上げた。5人も上空を見上げた。目線の先では、美氷が目を瞑り、鎌を構え、力を溜めていた。
永「く〜!しぶとい!!」
美氷は力を溜めながら言った。
美氷「流石にさっきのをくらったらやばかったかもね。でも、追撃までの隙時間でなんとか逃げれたよ。…さて。」
美氷が紫ががった目を開いた。と同時に、鎌の刃が紫色に輝き出した。
美氷「これで終わりだ。玄武冥斬!!」
美氷がレオに一瞬で詰め寄り、斬りつけた。レオは黒く染まり、灰化して消えていった。
永「チェッ、結構お気に入りだったんだけどな〜、そいつ。まぁいいや。もうい〜らない。やっぱり僕は君が欲しいなぁ。」
ハクモ「ハ、ハク…ハ…」
永はハクモに怪しげな術をかけた。それを食らったハクモは倒れ伏してしまった。
美氷「ハクモ!!」
美氷は瞬時にハクモの隣に降り立った。
美氷「ハクモに何をした!!!」
4人もハクモの側にきた。
水刃「っ…夜風・和風(よかぜ・わふう)」
水刃さんがハクモに回復技を使った。
永「あれ〜?おかしいな。僕のペットは皆僕に従うように出来てるんだけどなぁ。隷属化が上手くいかないみたい。う〜ん、何が原因だろ?調べて見ないとなぁ。」
美香「何をごちゃごちゃ言ってるのよ!!ハクモにこんな事してただで済むと思わない事ね!!」
美香が永を睨みつけて言った。
永「えぇーっと、悪いけど僕は今から調べなくちゃいけないことがあるからもう帰るよ。あっ、またすぐに来るから心配しないで!それに今度はあんなのよりもっと強い奴連れてくるから覚悟しておいてよ!アルトやキメラ君の敵もあるからね!じゃーねぇー!」
卓郎「待ちやがれ!!!チッ…あいつらいっつも何で消えるように逃げられんだよ!?」
卓郎が拳を握りしめながら言った。
たけし「た、卓郎!彼奴の事はまた後で考えようぜ!今はハクモを…!!」
ハクモ「ハ、ハク…」
氷河「…そうだね。」
美氷はカートリッジを外し、氷河の姿に戻って言った。
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