空想小説「青鬼」 第40話 下位互換
氷河「…いくらでも…湧いて出る…」
氷河は未だ、青鬼の討伐を続けていた。
氷河「ったく…イタチごっこだな…」
氷河がそうぼやきながら刃を見つめていた時だった。
???「滑稽だのぉ…」
氷河「!?」
突如、後ろから声が聞こえた。氷河は飛び退き、振り向いた。そこには黄色い手を大量に持つ、千手観音のような青鬼がいた。
氷河「喋る青鬼…青神の類いか?」
千手観音鬼「いかにも。我は千手観音…誰よりも始祖様に近しい存在じゃ。」
氷河「あーいるよなーそういう思考の奴。」
氷河は関心がなさそうに棒読みで言った。
千手観音鬼「何を言う。貴様もその近しい存在の類いに入っているのじゃろう?」
氷河「悪いけど俺は青鬼でもなけりゃそういう類いにも入ってないね。」
千手観音鬼「ならば、その力は何じゃ?その力を我は近しい類いと言ったのだぞ?お前はさしずめ、後継者、なのじゃろうて?」
氷河「あの人は青鬼じゃねぇよ勘違いすんな。確かに俺は後継者ではあるよ。だが俺は前任者の足下にも及ばないね。俺もお前も所詮は本歌の下位互換。そうだろ?」
千手観音鬼「貴様こそ、勘違いをするでない。貴様は及ばなくとも我は及ぶのじゃ。」
氷河「でも本歌より劣ってるのは事実だろ。思い上がんなよ。」
氷河はナイフの鋒を千手観音鬼に突きつけた。
千手観音鬼「貴様は我の神経を逆撫でするのが好きなようじゃな…その四肢千切り去ってくれようぞ!!」
氷河「なら俺はお前の数多の腕、凍て斬ってやるよ!!」
両者の武器がぶつかり合い、騒音が鳴り響いた。
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ハクモ「………!ママ…!?」
深夜、ハクモは目が覚めた。妙な感じがしたのだ。
ハクモ「皆を起こさないと…!パパ!パパ!…卓郎お兄ちゃん!起きて!」
卓郎「…?どうした、ハクモ…?」
卓郎は寝惚け眼でハクモを見た。
ハクモ「ママが大変な事になってる気がする!皆を起こして!」
卓郎「は…!?それマジか!?」
ハクモの一声で卓郎の眠気はどこかに消えた。
ハクモ「そんな気がするの!もしかしたら違うかもしれないけど!」
卓郎「神獣の勘…か…そうだな…氷がマズい目に遭ってるかもしれないもんな…わかった。起こして来るぜ。」
ハクモ「できるだけ早くおねがいね!」
卓郎「えぇと、今寝てんのは…ひろしとたけしは起きてるって言ってたから…美香か!確か部屋は…こっちだな!」
卓郎は廊下を走り、美香とたけしがいる部屋に入った。
卓郎「入るぞ!」
たけし「うわぁっ!!?た、卓郎!?ど、どうしたんだ…!?」
卓郎「緊急だ!美香は俺が起こす!たけしはひろしに居間に来るよう言ってくれ!」
たけし「えっ、え!!?わわ、分かったぜ…!」
たけしは慌ててひろしのいる部屋へ駆けていった。
卓郎「美香!美香、起きろ!」
美香「う〜〜ん…?何よ…?」
卓郎「緊急だ!居間に行くぞ!」
美香「緊急…?内容は…?」
卓郎「事情は後だ!早く来てくれ!」
美香「えぇぇ…?わかったわよ…」
美香は目を擦りながら渋々居間へ向かった。
美香「それで…?緊急ってなんなのよ…」
闇氷「こっちとらまだ全開じゃねぇんだが?」
美香と闇氷はまだ眠いらしく、不満げに言った。
ひろし「何かあったのですか?」
卓郎「ハクモ、事情説明頼む。」
ハクモ「ママが大変な目に遭ってる気がする!蒼凪山行こ!」
美香「氷ちゃんが!?」
美香はそこで眠気が消えた。
闇氷「姉さんが…?あいつが散々な目に遭ってるのは今更だろ。」
ハクモ「多分やばいよ!多分行かなかったらほんとに死んじゃうかも!!」
闇氷「は…!?それマジで言ってんのか…!?」
闇氷もここで眠気が消え去った。
ハクモ「僕の勘だけど!」
闇氷「神獣の勘…か…しゃあねぇ、一回乗せられてやるか。」
ハクモ「じゃあ早く行こう!!
そういった時、闇氷が手を上げた。
闇氷「ただし。ハクモ、お前に頼みたい事がある。」
ハクモ「?なに?」
ハクモはきょとんとした顔で聞いた。
闇氷「蒼凪山に着くまで乗せてってくれ。ろくに走れるようなスタミナはねぇんだよ。ちゃんと殲滅軍に見つからねぇように目眩ましはかける。」
ハクモ「分かった!任せて!」
ハクモは快く引き受けた。
卓郎「じゃあ行くぞ!!」
ハクモは神獣の姿に変わると闇氷を背に乗せ、6人は蒼凪山へ走っていった。
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>>2
いかんせんハクモ復活編は後々作った新編だから打つのに時間がかかるんよ…
お疲れの言葉有り難い(´;ω;`)