空想小説「青鬼」 第39話 風と共に舞い戻る

5 2024/06/23 11:11

たかが1秒、されど1秒。援助をやめた瞬間、とてつもない反動が闇氷を襲った。

闇氷「がはっ…!!ゲホッゲホッ…!!」

  『俺を殺す気かあんの野郎…!!』

辛うじて開けた目で辺りを見渡すが、女の姿はなかった。

闇氷『あ…あいつ、終わった瞬間即帰ったな…?最初にそんなの言って保険かけてたな…あぁくそ、動けねぇ…しかもろくに息できねぇ…』

反動でろくに動けず、咳き込み続ける。

闇氷『や…やべぇ…酸欠で頭ぼーっとしてきた…酸欠…さんけ…』

その瞬間、昔を思い出した。酸欠状態。状況は違うが、昔、同じ目に遭った事がある。

闇氷『うわっ…嫌な事思い出しちまった…や、やべぇ…マジで…』

視界が暗くなってきた。意識もぼんやりしてきた。

闇氷「ゲホッ…かはっ…」

  『もう…いいか…』

意識を完全に投げ、眠りに落ちようか―――そう思った時だった。

「ーーーーーー?」

どこからか、小さな男の子のような声が聞こえてきた。酸欠だからか声はほとんど聞こえない。

闇氷『…?誰…だ…』

闇氷は薄く目を開け、辺りを見渡した。こんな声は聞いた事がなかった。身を起こそうとしたが、体に力が入らない。

「ーーじょーぶ?」

闇氷『じょーぶ…丈夫…?何を言ってんだ、この声の正体は…ってかこれもしかして幻聴なのか…?』

もう訳が分からなかった。声を出そうとしても未だ息が安定しない。

闇氷『幻聴だったらもういいか…疲れたんだよ…俺…は…』

「だいじょーぶ?」

闇氷『大…丈夫…?俺の…心配…?だが…ここにそんな小さい男なんざ…いや…まさか…』

闇氷はもう一度目を開けた。目の前に狐のような動物がいる。闇氷を心配そうに前足でポンポンと叩いている。紛れもない、ハクモそのものだった。

闇氷「ハクm…ガハッゴホッゴホッ…!!」

ハクモ「わぁぁぁだ、だいじょーぶなの!?」

そんなくだりがかれこれ数十分続いた。

闇氷「はぁ……はぁ……はぁ……」

ハクモ「だ…だいじょーぶ…?」

闇氷「あ……あぁ……」

数十分経てば、反動もなくなってきて、酸欠状態も軽くなっていた。

闇氷「ってか…なんでお前…喋れるようになってんだよ…?」

ハクモ「僕にもわかんない!」

ハクモは満面の笑顔で答えた。

闇氷「…何だそれ…まぁいいか…さてと…うっ…」

闇氷は立とうとしたが、ふらついて膝をついてしまった。

ハクモ「わわ、まだゆっくりしてたほうがいいんじゃ…」

闇氷「そうはいかねぇよ…お前に会いたいって奴らがいるんだよ…俺が休むのはそれからだ…とりあえず来い…」

ハクモ「う…うん、分かったよ…」

闇氷は壁に手を付きつつも、ハクモを連れて居間へ降りていった。

_____________________________

居間では4人が待機していた。

美香「もう結構時間経ったよ…?闇ちゃん大丈夫かなぁ…?」

卓郎「大丈夫だとは思うが…流石に遅いな…」

ひろし「やはり、死者が復活なんて…」

ひろしがそう言ったその時、襖が開いた。

ハクモ「わー!」

ひろし たけし 美香 卓郎「!!!!」

少し開いた隙間から、ハクモが飛び出してきた。

美香「ハクモちゃん!!」

卓郎「ハクモ!!」

ハクモ「あー!パパー!美香お姉ちゃーん!」

ハクモは4人の元へ走っていった。

卓郎「ハ、ハクモお前いつの間に喋れるようになったのか!?」

ハクモ「なんかわかんないけどしゃべれるようになったー!」

美香「喋れるなんて最高じゃないの!またハクモちゃんをモフモフ出来て最高よ!!」

ひろし「しかし、本当に復活するとは…」

たけし「な、なぁハクモ、闇氷はどうしたんだ…?」

ハクモ「闇お姉ちゃんの事?闇お姉ちゃんなら…」

ハクモが襖の方を振り返ると、襖が更に開き、顔色が悪い闇氷が壁にもたれかかって現れた。

闇氷「はぁ…はぁ…おま、速ぇんだよ…」

美香「や、闇ちゃん!?闇ちゃん大丈夫!?」

闇氷を見た4人はハクモを抱えて駆け寄った。

闇氷「仮にも死者を復活させたんだ…その反動なんざ言うまでもないだろ…」

卓郎「と、とりあえず休んだらどうだ?疲れただろ?」

闇氷「あぁ…言われなくともそのつもりだ…ハクモ連れて来たら即部屋に行く気だったし…じゃ…」

闇氷は壁から手を離し、立ったかと思うと、倒れるように姿を消してしまった。

たけし「闇氷…大丈夫…なのか…?」

ひろし「しばらくはそっとしておきましょうか。」

ハクモ「ねーねー!ママはー?」

たけし「ママ…?あっ…」

ママ、と聞いて4人はハッとした。ハクモがママと言う人物は…

美香「ママって…氷ちゃんの事…だよね…」

ハクモ「おでかけ中なのー?」

卓郎「あ、あぁ、そうなんだよなー。氷は今出かけてんだよなー…」

卓郎は笑って言った。が…

ハクモ「…なんでそんなにわざとらしく言うの…?」

ハクモには生半可な言い文は効かなかった。

卓郎「あー…そのーだなー…」

ハクモ「ほんとの事言って!ママは…氷河お姉ちゃんはどこ行ったの!」

卓郎「あ、あー…一応…蒼凪山にいるはずだが…」

ハクモ「じゃー早く行こ!早く会いたい!」

卓郎「いやー、あー…」

ハクモ「…もー!あーとかいやーじゃないの!全部教えて!今どうなってるのっ!!」

たけし「さ、流石に神獣を怒らすのはまずいよな…?」

ハクモ「僕、怒ったら怖いよっ!」

卓郎「わ、わかったよ。じゃあ、話すぞ…?」

卓郎は今氷河がどんな状況かを全て伝えた。

ハクモ「え、えぇ…?じゃあ、今ママは今もずっと戦ってる…って事…?」

卓郎「そうだな…俺らの声もまるで聞いちゃいねぇ…」

ハクモ「そんなの良くないよ!僕がめーってする!」

ひろし「流石に闇氷が不調の今行くのは戦力的に良くないでしょう。闇氷が動けるようになってから行きませんか?」

たけし「それまで氷河がもつのか…?」

美香「氷ちゃん気力すごいから大丈夫じゃない?」

卓郎「そういう問題か…?まぁでも、そうだな…闇氷があらかた回復してから行くか。」

ハクモ「むぅ〜…早く行きたいよー…」

卓郎「ま、今は休もうぜ。さっきまで色々と張り詰めてたから俺は少し仮眠を取りてぇ…」

美香「まぁそうね…私も寝よっか。」

ひろし「私は起きておきます。もしかすると何かが起こるかもしれませんから。」

たけし「お、俺も起きとくぜ。」

ハクモ「むぅ〜…」

ハクモは不服そうだったが、正直眠かったらしく、スヤスヤと眠った。

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その他2024/06/23 11:11:12 [通報] [非表示] フォローする
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闇氷「めっちゃ辛ぇって…」


>>1
藤「ハクモ無事復活!でここにレインを突っ込んで雪さんも復活の行はやったか」


>>2
闇氷「あいつは10話のIFでやってるよ…」


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