空想小説「青鬼」 第32話 激怒

4 2024/04/28 19:31

永「な、そんな怖い顔したって無駄だよ!ほらゴーレムちゃん!行け!」

ゴーレムは卓河に向かって突撃してきた。しかし、指を鳴らすと、炎の渦が現れ、ゴーレムを跡形もなく灰化させた。

永「は??くっ…クッソー…ホントはこんな所で使いたくなかったけど…しょうがない。来い!」

永が呼ぶと、2体の龍が現れた。1体は翼を持ち、空を飛ぶ龍、もう片方は三つ首の龍だった。

永「聞いて驚け!こいつらが僕の奥の手さ!僕の知識を全て注ぎ込んで作った最高傑作だよ!さぁ、行け!」

2体の龍は卓河に向かって火炎放射をした。

永「アハハ!流石の君でもこの2匹を相手にしたら手も足も出ないよね?ちなみに、この2匹は君達人間の死体を利用して作ったのさ!死体だとしても君に同族を傷つけられるのかい?」

卓河「黙れ」

そう冷たく突き放すと、弓を構えた。

卓河「黄昏ノ弓・バーニング」

矢を打つと、その火力の前に2体ともふっ飛んでいった。

永「な…!!」

3人は卓河の様子を静かに見ていた。

美香「氷ちゃん…卓郎…」

たけし「二人の怒りがこっちまで伝わって来るぜ…」

ひろし「奇しくも、ハクモ君の死が、二人の…卓河の力を完成させたと言う事でしょうか…」

美香「なんだか私には怒りに任せて遠くに言ってしまう気がするわ…」

永は三つ首龍を立たせていた。

永「早く立てよ!!あんな奴にいいようにやられてんな!!行け!!」

卓河「邪魔だ」

そう言い放ち、黄昏ノ弓の真ん中を切り離し、短刀二刀流になった卓河は、こちらに向かってきた三つ首龍を居合斬り。真横に一刀両断した。

永「は…はぁ?訳わかんないよ…!たかが遊びになのに本気になっちゃってさ!つ、付き合ってられないよ!お前みたいな化け物に!!!」

永は空を飛ぶ龍の背に乗った。

永「く〜、もったいないけど、仕方ない。」

永は赤いボタンを押した。すると、建物内から爆発音が聞こえた。

たけし「な、何だ…!?」

たけしは周りをキョロキョロして言った。

永「爆破装置を起動させたのさ。もうすぐここは木っ端微塵になるんだよ!」

美香「なんですって!?」

永「君達に僕の大事な研究所を荒らされたくないからね〜神獣ちゃん達には悪いけど、ここは廃棄させてもらう事にしたよ。今までの研究のバックアップはちゃんと用意してるし、別の場所でまた作ればいいだけだからね。後、一応言っとくけど僕は負けた訳じゃないからね!戦略的撤退だから!じゃーねぇー!」

そう言い、永は龍に乗って飛んでいった。20m離れた時、永は大声で行った。

永「あっ!君達も早く逃げた方がいいよ!まぁ、この上空から逃げれたらの話だけどね!」

永は笑いながらそう言った。きっと脱出する術がないからそこで死ぬとでも思ってるのだろう。

ひろし「マズイですね…ここまで連れてきてくれたハクモ君はもう…」

美香「私の念力でもこの人数と高さじゃ無理があるわ…」

たけし「くそぅ…どうする…?」

『爆発まで残り一分』

卓河「…クリエイト」

卓河がそう言うと、ロープが現れた。

美香「卓郎、氷ちゃん…どうする気なの?」

卓河「お前ら、このロープを体にしっかりと巻き付けておけ。」

卓河は美香の問に答えず、命令だけをした。卓河は何やら矢にロープを縛り付けている。

ひろし「え?わ、わかりました。」

たけし「こ、こんなもんか…?」 

卓河は全員がロープを付けれたことを認識すると、弓を永が乗っている龍に向けた。

卓河「…シュート」

打った瞬間、自分は矢に捕まって飛んでいった。

たけし「うわあああぁ!!!」

美香「きゃああ!」

矢は一直線に、龍の元に飛んでいく。

永「ふんふ〜ん♪」

永は呑気に鼻歌を歌っていた。

永「ん?」

後ろに何か感じた永は、振り向いた。そこにいたのは…

卓河「逃がすと思ってんのか?」

永「へ?」

卓河は永を一蹴りし、龍の背中に乗った。

卓河「死ぬ事なんてどうだっていいんだろ?望み通りにしてやるよ。」

そう言い、永を殴打し始めた。

永「ガッ…グッ…ガフッ…ガァッ…!!や、やめ…」

たけし「氷河、卓郎…」

卓河「お前にはハクモが味わった以上の苦しみを与えてやる。簡単に死ねると思うなよ?」

卓河は刃の先を向けて無機質に言った。

永「ハァハァハァ…」

『何か…なにか手は…これで…』

永は小さな玉を取り出し、足元に投げつけた。白い煙があたりを包む。

ひろし「ゴホッ…煙幕!?」

永『…危険だけど、もう飛び降りるしか手がない…』

永が一歩進んだ瞬間だった。

卓河「小賢しい」

指を鳴らすと、煙幕の煙は瞬く間に消え去った。

永「なっ…!!」

卓河「クリエイト」

動揺する永に即座に距離を詰め、永を結界の中に閉じ込めた。指を鳴らすと、結界の中は業火に包まれた。

永「ギャアァァァァァ!!!」

卓河「…ハクモの…いや…今までお前が苦しめてきた生き物達の痛みを知れ。」

永「ギャアァァァァァ!!!」

永の絶叫が響く。

美香「ひ、氷ちゃん、卓郎!も、もういいわ!もう十分よ!いくらコイツが悪い奴だからって、これじゃこいつらと同じになっちゃうわ!」

たけし「氷河、卓郎、俺も美香に賛成だぜ…!こんな奴でも、殺したら奴らと同じに…」

卓河「……………」

卓河は何も言わず、炎の火力を上げていく。

永「ギャアァァァァァ!!!」

ひろし「氷河、卓郎!」

ひろしが制止しようと足を踏み出した。

卓河「お前らは黙ってろ!!」

卓河は3人の元に熱気を飛ばした。

卓河「…いくらコイツを痛めつけようが…ハクモがもう帰って来ねぇのは分かってる…分かってるけど!!どうしてもこいつを許せねぇ…俺達の怒りの炎はこいつを焼き殺すまで消えてくれねぇんだよ!!」

美香「二人共…そんな事ハクモちゃんだって望んでないはずよ!」

卓河「そんなのもう分かんねぇよ…!!」

卓河は一気に終わらせようとした…その時。

たけし「ん…?今何か光った…?」

光った物の正体は、ハクモが消滅する際に残った羽だった。

ひろし「これは…」

美香「ハクモちゃんの…?」

卓河「ハクモ…」

突如、羽がまばゆい光を放った。4人は目を伏せた。

―――――――――

目を開けると、そこは真っ白い空間だった。

氷河「…え?ここどこ?」

卓郎「合体も溶けてるじゃねぇか…!」

ひろし「何なのでしょうか…この空間は…仮想空間…?」

たけし「でも…ここ、何か落ち着くな…!」

美香「ん?あそこにいるのって…もしかして…」

4人は美香の方向に向いた。そこにいたのは…

ハクモ「ハク!」

氷河「あ、あ…」

卓郎「ハクモ…」

ひろし「ハクモ君…!」

5人はハクモの元へ走った。

氷河「ハクモ…ごめんな…絶対守るって約束したのに…俺……」

ハクモ「ハク!」

ハクモは氷河にスリスリした。

卓郎「でも、お前の敵は絶対取るからな!」

卓郎がそう言うと、ハクモは卓郎の元に歩み寄ってきた。

ハクモ「ハクッ!!」

膝に前足をポンッと叩いてそんな事しなくていい、というような声で鳴いた。

卓郎「ハクモ…」

ハクモ「ハク。」

ハクモは続けて、首を振った。

卓郎「でも、それじゃお前が…報われねぇじゃねぇか…!」

ハクモは真ん中に戻り、笑顔で言った。

ハクモ「ハクハク!君達に出会えて僕は幸せだったよ。だから悲しまないで。僕はずっと皆と一緒にいるから。」

氷河「ハクモ…うわあぁぁぁん!!」

卓郎「うぅ…ハクモ…」

美香「グスッ…ハクモちゃん…」

ひろし「ハクモ君…!」

たけし「ハクモォ…!」

―――――――――

卓河「ハクモ…」

卓河は炎を消し、結界を解いた。永はその場に倒れ伏した。

ひろし「氷河…」

美香「卓郎…」

4人は身を寄せ合い泣いた。後ろでは、永が意識を取り戻していた。

永「ガハッ…!!ハァハァハァ…」

『何がなんだか分かんないけど、とにかく助かった。今なら…』

永はナイフを忍ばせ、そのまま倒れたフリをした。

たけし「さぁ、もう帰ろうぜ…!」

美香「彼奴はどうするの?」

美香は永を横目に見て言った。

ひろし「そうですね…とりあえず闇氷の所に連れて行って、殲滅軍の情報を聞き出せるだけ聞き出してみましょうか。」

美香「そうね。…卓河も…それでいい?」

卓河は目を瞑ったまま、何も言わずに頷いた。

ひろし「では、このロープを使わせてもらいますね。」

ひろしは卓河が出したロープを手に取り言った。

美香「彼奴を縛るの?」

ひろし「えぇ。先程の卓河の攻撃で暫くは動けないと思いますが、念の為に。」

たけし「じゃあ、頼むぜ、ひろし…!」

ひろしはロープを束ね、永の元へ歩いていった。

美香「ほら!いつまでも落ち込んでてもしょうがないでしょ!ハクモちゃんの分まで私達がちゃんとしないと!」

卓河「あぁ…そうだな…ありがとう、美香。」

たけし「おうっ…!」

ひろし「うああっ!」

突然、ひろしの声が響いた。

卓河「ひろしっ…!?」

声の方を見ると、ひろしは顔にさっきの炎の影響で火傷傷がある永に捕まり、首筋にナイフを突きつけられていた。

永「ハァ…ハァ…ハァ…甘いね、残念だけど形勢逆転だよ。」

美香「お前…!!いい加減に…!!」

美香が一歩足を進めた時だった。

永「おっと!気を付けなよ?このナイフは僕の特別製でね。僕にしか解毒できない毒がたっぷりと塗ってあるのさ。切り傷一つで即お陀仏ってわけさ。君達がこれ以上僕に近づいたら雪矢の弓使い君は死んじゃうよ?」

たけし「ひ、卑怯な…!」

永「感謝するよ。君達が甘かったお陰で僕は助けられたんだ。さぁ、もう話はおしまいだよ!雪矢の弓使い君を助けたかったら、君達3人共今すぐここから飛び降りて。」

卓河「チッ、こいつ…!!」

卓河はまた少し怒りを滾らせた。

ひろし「たけし、美香、卓河!こうなったのは私の責任です!ですから私の事は気にせず」

ひろしの言葉を永は遮る。

永「うるさい!君は黙っててよ!今はこの3人に聞いてるんだから!さぁ、どうする?僕を捕まえるために雪矢の弓使い君を見捨てるかい?」

永は首を傾げてにっこり笑って言った。

美香「卓河、彼奴の言う通りこうなったのは私が甘かったせいだわ。だから、私があいつのナイフをどうにかするわ。その隙にひろしの事をお願い。」

卓河「美香…いや、こうなったのは俺達皆の責任だ。だから一人で背負い込むな。大丈夫だ。きっとどうにか出来る。」

卓河はそう言ったが、その表情のどこかに後ろめたさを感じた。

永「何ごちゃごちゃ言ってんの?もういいよ。最初からこうすれば良かったんだ。」

永はナイフを降ろした瞬間、ひろしを突き落としたのだ。

ひろし「うわあああぁっ!!」

ひろしは声を上げて落ちていく。

たけし「ひ、ひろし!!あ、彼奴ひろしを突き落としやがった…!!」

永「あははは!!ほら!追いかけなよ!早くしないと雪矢の弓使い君死んじゃうよ?」

美香「チッ…たけし!行くわよ!!」

その瞬間、美香は中々の行動をした。

たけし「うえええぇぇ!!?」

美香はたけしの腕を掴み、自ら飛び降りたのだ。

美香「卓河!ひろしの事は私とたけしに任せて!!そいつの事は2人に任せるわ!!」

美香はそう言い残し、たけしと共にひろしの元へ向かった。

卓河「美香、たけし!!」

卓河は想定外の行動に驚き後を追おうとした時、美香の言葉を聞いた卓河は全てを理解した。

永「ほら君も行かないと!」

卓河「………」

卓河は龍の端から一歩踏み下がった。

永「ん?いいの?仲間を見捨てて。」

卓河「…俺は、俺の仲間を信じている。ふt…少なくとも、美香は任せろって言ってくれた。そして任せてくれた。だから、俺は…」

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その他2024/04/28 19:31:43 [通報] [非表示] フォローする
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霞「卓河の覚醒姿描きますか〜」


ブシニャン「鰹節!鰹節はどこでござる!」

スタープラチナ「落ち着け!今用意するから!ってどこ行くの~!?」


>>2
霞「…鰹節でも斬るの?」


>>3
スタープラチナ「フルーツや鰹節を一定時間斬らない状態だと暴走するからね。ほいこれ鰹節。」


>>4
霞「なんやそれ…まぁどっかの誰かもさっき暴走してたし…」


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