空想小説「青鬼」 第63話 狐面

3 2025/12/11 20:24

「⋯ぁー⋯変な横入りしちゃったから闇氷に怒られちゃうか⋯ってあ、あれ!?闇氷は!?え、一緒じゃないの?」

振り返った女は闇氷がいないことに驚いてコハクの近くにしゃがんだ。

コハク「ぇ⋯?ぅ、うわっ⋯!!」

コハクは突然現れた狐面の女に驚いて後退った。

「え?あ、あぁごめんね!怖いやんねこんなよう分からん黒上着フードに狐面付けた不審者が目の前にいたら怖いな、ごめんな!」

慌てて両手を上げ、必死にフォローを入れる女。

コハクは喉を押さえながら、涙目で見上げる。

「う、うわぁぁぁ泣かんで泣かんで!ご、ごめんて驚かせたんはぁ!」

コハク「うぅ⋯あ、あの⋯怖くて⋯びっくりしただけです⋯」

「あ、あー⋯そう、なの?まぁとりあえず、自分は殲滅軍とかそういうのではないからね!まぁ見た目は不審者以外の何物でもないけど!」

コハク「⋯あ、あの⋯あなたは⋯誰、ですか⋯?」

「え?あー、自分?自分は⋯えぇとそうだな⋯んーよう分からん狐面の女って思っといて!まぁ適当に名前考えて呼んどいていいよ!」

コハク「えぇ⋯?じゃあ⋯霞さんって、呼ばせてもらいますね⋯?」

「⋯え?――あ、あっぶね⋯!」

女は驚いて手に持ってた刀を取り落としそうになった。

コハク「え⋯?ぼ、僕良くない事をしましたか⋯!?」

「あ、あぁいや、そういうのではないよ!ただ、うん⋯ちょっとね?驚いただけさぁ⋯」

女は袖で口元を隠すような素振りをして苦笑する。

「霞かぁ⋯ところでなんだけど、理由ってあったりするのかな?」

コハク「えっ、理由⋯ですか?」

「おう。自分を霞って呼ぼうとした理由。何か思い浮かんだんかなーって思ってね。」

コハクは少し考えるように視線を落とし、喉を押さえながらゆっくりと口を開いた。

コハク「⋯なんとなく、ですけど。霞みたいに、ふっと現れて、助けてくれたから⋯それに、なんだか優しそうな雰囲気もあったから。そんな感じが霞って、合う気がして⋯」

女はしばらく黙っていた。

風が木々を鳴らす音だけが響く。

「⋯っははは!なーんか君らしいなぁ。」

コハク「えっ、そ、そうですか⋯?」

「おぉ。なーんか、そーゆー素直なとことかがね。」

霞は肩をすくめるように笑いながら言った。

その声音はどこか照れくさそうで、けれど柔らかかった。

「ふっと現れて助ける霞、ねぇ⋯自分はそないかっこいい存在じゃないのだけれど⋯まぁ、悪くないか。」

コハク「⋯!じゃあ、霞さんって呼んでもいいんですか?」

霞「おん、いいよ。そもそもの話、自分から適当に名前考えて呼んでって言ったんだからさ。なんならずっと前からそう呼ばれてきた気すらしますわぁ。はっはっは♪」

コハクは少し安心したように微笑む。

霞はその表情を見て、狐面の下で小さく息を吐いた。

霞「⋯にしても君、なっかなかにボロボロだね。首の痕痛むだろ?」

コハク「あ、はい⋯でも、霞さんが来てくれたから、もう大丈夫です。」

霞「⋯っは。んな事言われたらまた世話焼⋯助けたくなるやないか。ってあ、そうそう闇氷は?合流してないの?闇氷もこっち来てるはずなんだけど⋯」

コハク「え、闇氷様も…!?」

霞「おう、来てるよぉ。あん時の闇氷、平静を装ってたけど内心中々に心配して焦ってたんだよ。口はまぁまぁ荒いだけどなんだかんだ優しいしねぇ。だからもう合流してるとてっきり⋯流石の闇氷でも樹海という自然の迷路相手にゃ苦労するか。ま、心配はしなくてもえいと思うよ。結構しぶとい子だし、いつか来るでしょう。⋯で、君はスタン時間が長すぎやしないかな?」

霞は斬られた腕を握りしめる八目を横目に言う。

コハク「スタン⋯?ってなんですか⋯?」

霞「まぁ簡単に言うと行動不可な状態って感じかな。流石に腕ちょっと斬り落とすだけで終わってはくれないよねぇ⋯」

そう言って霞は軽く刀を持ち直す。

コハク「⋯ち、ちょっと待ってください…!」

霞「うん?」

コハク「や、八目君を斬ったんですか⋯!?」

霞「まぁ⋯そうでもしないとその首絞め状態どうにもできなかったからねぇ。流石に首絞め状態をそのままボーッと見てるわけにもいかないしさ⋯おっと。」

コハクは霞の上着を握って顔を見上げる。

コハク「でも、八目君は⋯!僕の、友達で⋯!あの、あんまり手荒い事は⋯」

霞「⋯⋯⋯」

霞はじっとコハクを見下ろす。

雨が狐面の縁を伝い、滑り落ちて地面に落ちる。

霞「⋯じゃあ聞くけどさ。君は、[あれ]が八目君とやらに見えるのかな」

コハクは目を見開いた。

コハク「え⋯っ?あ、あれって⋯」

霞「⋯もう1つ聞こうか。八目君はあんな逆恨み紛いな事をする性格なのかな」

コハク「う、ううん⋯あんなこと⋯あんなことは、八目君は⋯しないです⋯!」

霞「だろう?自分からトンネルに行こうって誘っておいて君のせいで死んだなんて逆ギレされるなんて⋯君のよく知る八目君ならあり得ない話だよ。」

コハク「⋯霞さんは、八目君に会った事があるんですか⋯?」

霞「⋯⋯まぁ⋯間接的にね」

霞はフードを少し深く被って言う。

霞「ま、この話は一旦置いといて。じゃあ、最後に聞こう。[あれ]は君の知る八目君とはかけ離れた行動をしている。それ即ち、[あれ]は何だと思う?」

コハク「⋯八目君じゃ、ない⋯?」

霞「ま、そうだね。辛辣な事言うけど⋯そもそもの話、あのトンネルで溶けたはずの本物の八目君がここにいるわけがないんだよ」

コハク「⋯⋯じゃあ⋯あれは一体何なんですか⋯?」

霞「⋯暴いてみるか?あれの正体」

コハク「え、えぇっ⋯!?でも⋯そんなことして大丈夫なんですか⋯!?」

霞「大丈夫も何も⋯もう目の前にいるんだ。あれの正体を知るのも、君が納得するためには必要な事だろう?」

コハク「⋯わ、分かりました⋯でも、あんまり⋯怖いことはしないでください⋯!」

霞「⋯怖くないって保証は出来ないかもなぁ。⋯じゃ、まずは下準備だね。」

姿勢を低くすると、ざっくり[あれ]の両腕を根本からざっくり斬った。

コハクは思わず声を上げた。

コハク「ひゃっ⋯!?そ、そんな⋯!」

霞は狐面の奥から落ち着いた声音で答える。

霞「すまんね。正体を暴くのに暴れられちゃ困るからさ。もっかいスタンさせてきた。さ、暴くぞ、あれの正体を」

コハク「は、はい⋯!」

霞「それじゃまぁ⋯1つ聞くけど、狐の窓ってご存知?」

コハクは首をかしげる。

コハク「狐の窓⋯ですか?聞いたことは⋯ないかもです⋯」

霞「狐の窓ってのは、指で窓を組んで作って、その穴から呪文を唱えて覗くと、目に見えない存在や本当の姿を暴いたり不思議な世界が見えるっていう⋯簡単に言えばそう⋯世界の裏側とか普通じゃ見えないものを覗ける窓みたいなもんさ。多分、君なら視えると思う」

コハク「そ、そんなものが⋯僕に視えるんですか⋯?」

霞「多分な。だけど、ただ見えるだけじゃなくて、覚悟も必要だよ。見たくない存在や、知りたくない真実が見えるかもしれないからね⋯」

雨の雫が狐面に伝い、冷たい音を立てて地面に落ちる。

霞「じゃ、[あれ]の正体を暴くために、窓を開けようか⋯まずは、両手で狐の手を作って。」

コハク「狐って⋯これですか?」

霞「そうそう。次に、人差し指と小指、狐の耳に当たる所を重ね合わせる。右手の甲がこちら側に向かないようにね。」

コハク「こ、こうですか⋯?」

霞「うん。最後に、両手の親指、中指、薬指を開く。これで窓は完成。」

コハク「後は呪文⋯ですよね?」

霞「そうだね。⋯覚悟はよろしか?」

コハクは少し唇を噛み、震える指先を見つめながら小さく頷いた。

コハク「⋯はい。覚悟は、あります。」

霞「おう、えい返事だね。じゃ、肝心の呪文をば。『けしやうのものか、ましやうのものか、正体をあらはせ』⋯呪文を唱えてから窓を覗くんだよ」

コハク「分かりました⋯けしやうのものか、ましやうのものか⋯正体をあらはせ⋯!!」

コハクは意を決したように発し、窓を覗き込む。

コハクの窓の向こう、八目の姿がゆっくりと歪んでいった。

皮膚の色が灰のように濁り、瞳は墨汁を垂らしたように黒く染まる。

形の定まらない何かが、人の形を保ちつつもぐずぐずと崩れかけていた。

コハク「──っ⋯!?」

霞「ありゃ、その反応⋯あれ見た事あるの?」

コハク「あれ⋯あの日⋯僕を追ってきた⋯!!」

霞「⋯君、あれに追っかけ回されたのか⋯よく生きれたな⋯」

コハク「で、でも、あれは⋯!ラゼ⋯じゃなくて、闇氷様が斬ってくれて⋯!!」

霞「へぇ⋯なら、別個体がいたか斬った奴が復活したかの2択だね。まぁ他にも可能性はあるかもだけど⋯それでもここにこいつがいるのはおかしいにも程があるんだが⋯」

コハク「ど、どういうことですか⋯?」

霞「⋯そのトンネルってさ、どこにあるか分かるかな?」

コハク「え、えぇと⋯円口町、でしたか⋯?」

霞「その円口町とここ、青美村とはどれほど離れてると思ってるのかな?」

コハク「え、えぇと⋯?」

霞『⋯いや、[繋がってない]が正しいのかなぁ⋯この世界って、所詮は継ぎ接ぎの世界だし⋯』

 「ま、つまりは転移とかそんなんでもせん限りこいつはここに現れる事は出来ないってこった。あれはただ八目君の姿を騙っただけのヤツメのバケモンさ。」

コハク「ヤ、ヤツメってなんですか⋯?」

霞「⋯すまん、説明は後でいいかな?とりあえずこいつは討伐しとかんと⋯変にここら一帯を溶かされても困るし。」

コハクは少し戸惑いながらも、霞の言葉にうなずく。

霞「おう、いい子だ。さぁ、下がってなよ!」

構えた刀がギラリと輝く。

2mほどの人形のどろどろ溶けた化物の拳を斬ろうとした瞬間だった。

「ウラァッ!!!」

上から黒い刃が霞の刃より早く拳を断ち切った。

いいねを贈ろう
いいね
3

このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)
画像・吹き出し

タグ: 空想小説「青鬼」

トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する
その他2025/12/11 20:24:52 [通報] [非表示] フォローする
TTツイートしよう!
TTツイートする

拡散用



霞「あああああやらかしたぁ!!10日になる前にサムネ描けたのに投稿ド忘れしたあぁぁ!!」

闇氷「乙」

霞「うあぁぁぁぁ⋯」(´;ω;`)

闇氷「さっさと次描いてどうぞ」

霞「もちっと慰めの言葉とかあっていいじゃぁん⋯」

闇氷「お前に言った所で意味ないだろこのアホ」

霞「辛辣ぅ!!」(`;ω;´)


>>1
「安心しろよぅ、こっちなんかテラーノベル更新サボってるんだぜ()」

カービィ「さっさとエアライダーの続き書けー!」

デデデ大王「そーだぞ、エアライダーやってないで書くんだ!」

「黙らっしゃいヘイラッシャ」

メタナイト「しょうもないぞ…」


>>2
霞「⋯へ、ヘイラッシャ⋯?なぜポケモン⋯」←理解力D

闇氷「安心しろこいつも最近pixivの方ばっかやっててテラーもとーとも進んでない奴だから」

隠「とうらぶにばっか時間費やしてんじゃねーぞこの三日坊主」

霞「言い返すこともできないべ⋯」(´・ω・`)


画像・吹き出し

トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する