空想小説「青鬼」 第56話 風の子の驚き
卓河「⋯で、どんな驚きをあいつは用意してんだか⋯」
闇氷「さぁな。良くないものだったらあいつをどつき回せばいいだけだろ。」
卓河「まぁそれはそう。じゃあ、行きますか⋯」
卓河は頑張って指で玄関を開けようとする。
闇氷「⋯足使えよ?」
卓河「そんな事をしたらもれなくバランス崩すし、足で開けるのはあんまりよろしくないだろ⋯」
闇氷「どの口が言ってんだ。」
卓河「この口が言ってますが?」
闇氷「⋯⋯⋯⋯」
なんてやり取りをしているとようやく玄関を開けれた。
卓河「やっと開いた⋯」
闇氷「やっぱ足使った方が早かっただろ。」
卓河「だからさぁ⋯」
水刃「あぁ、おかえり2人共!皆大丈夫?」
玄関が開いた音を聞きつけたのか、水刃さんがやってきた。
卓河「あぁ、水刃さん。みんな死んではないから大丈夫かと。」
水刃「そう⋯皆無事ならいいけれど⋯」
卓河『無事って言っていいのかなー、操られてた事を⋯』
闇氷「何か言いたげだな、お前?」
卓河「⋯いや別に?そういや、あいつが言ってた驚きってなんなんだ⋯?」
闇氷「さーな。まぁ、行きゃ分かるだろ。」
そう言い、闇氷は足を進める。
卓河「⋯どうなることやら⋯」
若干の呆れを見せつつ、卓河も足を進めた。
―――――――――
卓河「⋯重かった⋯」
室内にて、たけしと美香を降ろした卓河は脱力して座り込んだ。
闇氷「⋯それ、美香に聞かれたらしばかれそうだな。」
卓河「いや、疲れてるからそう感じるだけだって⋯別に美香さんの重量が重いなんて一言も言ってないよ⋯」
水刃「ふふっ。まぁ、もし美香ちゃんがそれに怒ってたらフォローを入れておくわ。」]
卓河「お願いします…ほんとに。」
闇氷「⋯で、ハクモはどうした?寝てんのか?」
水刃「あぁ、ハクモちゃん?⋯そうね、そろそろお披露目かしら?」
卓河「お披露目⋯?」
水刃「ハクモちゃーん!皆帰ってきたわよー!」
水刃さんがハクモを呼ぶと、向こうの襖が開かれた。
ハクモ「あ、おかえりー!みんなは大丈夫なのー?」
卓河「・・・は!!!??」
卓河は物凄く驚いた声を上げた。無理もない。
何故なら目の前にいるハクモは狐のような姿ではない。
耳と尻尾を残して、人の姿になっていたからだ。
闇氷「⋯ほーん、そんな感じの姿になったのか。」
卓河「いや闇氷知ってたの!!?」
闇氷「ハクモが人化したってことだけな。どんな姿になるかは知らなかっただけだ。」
ハクモ「どうどう?いい驚きでしょ!」
卓河「いやいやいやいやちょっと待て!?確かに驚いた!驚いたけど!!どういうこと!?いつから!?」
ハクモ「えっとねー、あの顔を隠した女の人いるでしょー?あの人が僕の姿を仕立ててくれたんだー!耳と尻尾は自分で出したり消したり出来るんだよー!」
闇氷「⋯さては、あの時俺を姉さんの所に行くという形で退出させたのは⋯」
ハクモ「そーゆー事!」
卓河「⋯ところで、何故にそんないきなり人の姿に⋯」
ハクモ「昔を思い出したから!」
卓河「昔って⋯」
ハクモ「⋯だめなの?」
卓河「いや、駄目とは一言も⋯」
闇氷「まぁ、色々思うとこはあるだろうが⋯とりあえず、ハクモの驚かせは成功だったな。」
卓河「はぁ⋯どっからツッコめばいいんだ⋯」
ハクモ「ふふんっ、ツッコむとこが多いってことは、それだけインパクトがあったってことだよね!」
卓河「いやまぁ⋯そうだな⋯うん⋯ごめん、自分休んでくる⋯」
それだけ言うと、卓河は部屋の外へ出ていった。
闇氷「⋯まぁ、そうなるか⋯」
ハクモ「え!?僕なんかよくないこと言っちゃった!?」
闇氷「いや、違うな。多分情報量のキャパオーバーだろ。今頃頭抱えてんじゃね?」
ハクモ「そ、そうなの…?じゃあ、怒ってはないの?」
闇氷「あいつが本気で怒ったら、もっと無言じゃ済まねぇよ、特に今の姿じゃな。あれは多分混乱して処理しきれなかった時の奴だ。まぁそもそもの話、元が狐っぽい姿だった奴がいきなり人型になっておかえりーなんて出てきたら驚かない方が変だろ。ま、落ち着いたら戻ってくるだろうよ。様子見に行きたいなら多分あいつは3階だから、そこ行け。」
ハクモ「分かったー!」
言うか早いか、もうハクモは廊下に出ていた。
闇氷「…あいつの行動力、時々ほんとすげぇな…」
水刃「ふふ、まぁそれはいい事じゃない?」
闇氷「⋯それもそうか。ってか、こいつらさっさと起きてくんねぇかな⋯」
闇氷はソファーに乗せた4人を見やって言う。
水刃「まぁまぁ⋯今は休ませましょ?」
闇氷「はぁ⋯寝る。」
そう言い、闇氷はソファーを背凭れにして目を閉じた。
水刃「あらそう?なら、これ被っておいてね。冷房の効いた部屋だから、体冷やしちゃうわよ?」
水刃さんは薄い掛け布団を手渡した。
闇氷「⋯どうせ起きたら剥がれてるっての⋯」
なんて言いつつ、きっちり布団を被ってまた目を閉じた。
水刃「⋯ふふ、やっぱり素直じゃないのね。今のうち簡単なに甘味でも作ろうかしら。疲れたには甘い物、っていうものね。」
水刃さんはすっと立ち上がり、キッチンに赴いた。
―――――――――
氷河「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
その頃、氷河は部屋の中で卓河の姿から戻り、ベッドに凭れてぐったりしていた。
氷河『正味、危なかった⋯』
影を見せつけられた時。あの時、自分の中で黒い炎が表に出掛けていた。
氷河『⋯なんとか止めれたからいいけどさ⋯あいつでも消しきれなかったのか⋯』
扇風機の風が髪を揺らす。
氷河「これあづい⋯不快だわ⋯」
そう呟きながら眼帯を外し、ベッドにもたれた氷河は、扇風機の風をただ受けながら目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは、発端の記憶。
ハクモが殺された。へらへらとしている永。憎悪に満ちた黒い炎。
そこまで思い出した瞬間、軽いノックの音が響いた。
氷河「⋯なにかな。」
ハクモ「氷河お姉ちゃん!」
入ってきたのは、先ほど人の姿になって驚かせてきたハクモ。狐耳と尻尾を揺らしながら近づいてきた。
氷河「⋯はぁ⋯さしずめ、闇氷の仕業でしょ⋯」
ハクモ「うん!闇お姉ちゃんが3階にいるって教えてくれたから!」
氷河「…大体そんな気はしたよ…」
ハクモは氷河の横にちょこんと腰を下ろした。
ハクモ「⋯疲れた顔してるよ?」
氷河「⋯まぁ⋯うん⋯色々とやったからね⋯」
ハクモ「色々ってー?」
氷河「色々は色々。」
それだけ言って、氷河は黙る。
ハクモ「…そっか。じゃあ、色々ってことで、深くは聞かない。」
氷河「…あぁ、助かるよ。今は言葉にすると逆に疲れるから⋯」
ハクモ「うん。でも、横にいるのはいーい?」
氷河「⋯それくらいなら。」
ハクモ「やったー!」
声を上げながら、ハクモは嬉しそうに氷河の隣へすり寄る。
狐耳がぴょこぴょこ揺れ、しっぽがふんわりと氷河の脚に触れた。
氷河「…悪い、あんまり騒がないでほしいかな⋯」
ハクモ「分かったー。」
ハクモはそう静かに返すと、ぽすっと肩に凭れかかってきた。
氷河「⋯何さ?」
氷河がぼそりと尋ねると、ハクモは肩に凭れたまま、小さな声で答えた。
ハクモ「…なんとなく。氷河お姉ちゃん、今放っておくとどこかに飛んで行っちゃいそうだから。」
氷河「⋯なんだそれ⋯」
氷河は呆れながらも、肩に凭れることは嫌がらなかった。
そのまま数十分が経過した。
ハクモ「⋯氷河お姉ちゃん?」
返事はない。どうやら寝ているようだ。
ハクモ「⋯寝ちゃったかー。⋯掛け布団もないし、1人にするのもあんまりだと思うしー⋯」
ハクモは少し考え、1つ方法を思いつく。
ハクモ「あ、そうだ!」
ハクモの周りに風が逆巻く。
ぱぁっと光で見えなくなると次の瞬間には、ハクモの背丈が物凄く伸びていた。
ハクモ「⋯僕が、運べばいいんだね。」
そう言って、軽く息を吐いたハクモの姿は先程の可愛らしい姿ではなく、どこか凛々しく神秘的で落ち着いた、大人の姿になっていた。
身長は氷河はおろか、水刃さんよりも高い。
まるで壊れ物でも扱うかのような手つきで、ハクモは氷河を抱きかかえ、1階の居間の方へ向かった。
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霞「⋯可愛いですね。」
闇氷「感想それだけかよ。」
霞「これ以上言うととんでもない長文になるからね〜」
>>2
可愛いと言ってくれるのは嬉しいですな〜
ちなみにハクモを擬人化した理由は動物を描くのが苦t((殴

