空想小説「青鬼」 第59話 予想できない来客
水刃「皆手伝ってくれてありがとう!おかげでいつもよりずっと早く終わったわ!」
氷河「ほんとに早く終わったんですかね⋯終始結構ドタバタな気がしましたけど⋯」
水刃「早いわよ!人手があるとないとじゃ雲泥の差よ?」
闇氷「まぁ確かに、宿主1人で全部やってた時と比べりゃ早かった気もするけどよ⋯」
美香「途中でたけしが包丁落としかけた辺りで私はヒヤッとしたけどね!」
たけし「あ、あれは…ちょっと手が滑っただけだって…!すぐキャッチしたし⋯!」
闇氷「いやハクモが咄嗟に包丁浮かせてなかったらお前の足スパッといってたぞ」
ハクモ「えへへー!僕反射神経自信あるもん!」
ひろし「ともかく、無事に準備できたことが何よりです。」
水刃「そうそう!だからこそ、こういう時は楽しく食べましょう?」
氷河「包丁落としかけた事を無事って言っていいのかなー⋯」
卓郎「今回は、まぁ⋯結果オーライ⋯って事にならないか?」
氷河「実際そんな感じだけどー⋯」
ひろし「それでは、そろそろいただきましょうか。折角の朝食が冷めてしまってはいけません。」
ハクモ「じゃあー手を合わせてー!いただきまーす!」
そうして皆でご飯を食べる。
数刻後、ひろしが口を開いた。
ひろし「⋯さて、ここで深夜での状況整理をしたいのですが、よろしいですか?」
全員が箸を止め、ひろしの言葉に自然と注目が集まる。
たけし「深夜での状況整理って⋯攫われ云々の情報共有、って事か⋯?」
ひろし「そうですね。まず、私が覚えてる事としては、暗く、声が響く程の広い空間、そして何かに見られていたような感覚を覚えています。」
たけし「あ、それ俺も覚えあるぜ⋯!」
美香「私もよ!」
卓郎「あぁ、俺もだ。他はなんかあったか⋯?」
闇氷「⋯そっちはなんか知ってるか?」
氷河「ニドルをしばき上げた、以上。」
闇氷「他もっとねぇのかよ?」
氷河「いやー⋯4名が倒れてて、それに近づこうと思ったらニドルの奴が現れて、としか⋯」
氷河はさもそうだったかのように言うが、勿論嘘だ。
氷河『流石にあの事実は⋯4名が操られて一時的に戦ったなんて言えんって⋯』
闇氷「⋯なんか言いたげだな?」
氷河「言いたげって⋯何もないよ⋯」
ひろし「本当ですか?」
氷河「本当だよ。あー、でも⋯あいつ、鏡を使ってきたなぁ⋯」
美香「鏡?」
氷河「そうそう、薄気味悪い鏡。破片を集めて歪な大剣作ってたよ⋯」
ハクモ「それはどうしたのー?」
氷河「炎で融かしてやった。」
卓郎「融かしたって鏡の融点って何度なんだよ?」
ひろし「そうですね⋯少なくとも1300℃から1600℃は必要だったかと。」
たけし「そんな高温出せるのか⋯?」
氷河「意外にも出せるよ?青い炎ってやろうと思えば10000℃は出せるらしいから。」
たけし「えぇぇ⋯」
ひろし「まぁ、通常ガスコンロの青い炎部分は1700℃から1900℃程で、10000℃にしようとなるとプラズマバーナーなどの特殊な物が必要になりますね。」
氷河「後は太陽の外側の彩層ってとことかだね。」
たけし「よく知ってるな⋯」
氷河「昔の賜物だよ。」
なんて会話が続き、ご飯を食べ終わった時だった。
氷河「⋯ん?」
氷河が反応する。他の人達も聞こえたようだ。
たけし「な、何だ⋯?」
美香「今、戸を叩く音がしたわね?」
ひろし「しましたね。」
水刃「⋯もしかして来客さん?」
闇氷「いや絶対碌でもない奴だろ。」
氷河「堂々と正面突入かー⋯?」
卓郎「いやそれなら玄関壊してくるだろ⋯」
ハクモ「うーん…とりあえず見に行ってみるー?」
闇氷「⋯ま、ここにいても仕方ないし見てくる。」
それだけ言って闇氷は玄関の方に向かった。
水刃「大丈夫かしら⋯?」
氷河「まぁ闇氷強いし、なんとかなるでしょ。」
たけし「そんな楽観思考でいいのか⋯?」
氷河「なるなる。⋯多分。」
卓郎「多分じゃだめだろ⋯」
氷河「⋯まぁ⋯大丈夫でしょ。」
たけし「えぇ⋯⋯⋯」
―――――――――
闇氷『こんなバカ正直に玄関の戸叩くってなんなんだ⋯』
闇氷は玄関の戸を前に怪訝な顔をした。
闇氷『ま、仮に殲滅軍なら不意打ちで捕虜にしてやりゃいいか⋯』
不意打ち用の両刃のナイフを左手にかけ、戸に手を伸ばし、一気に戸を開ける。
「うわぁぁぁ!!?」
一気に戸を開けたからか、訪ね人は驚いて尻餅をついたようだ。
闇氷は下に目線を向ける。
闇氷「⋯⋯は?」
闇氷はその尻餅をついた子を見た。
樹石の色のような橙のような茶色のような服と上着を着ていてフードを被り、身長は130前半の少年だった。
闇氷「⋯⋯は…!?おまっ⋯はぁ…!?」
「…あ…!!ラzむぐっ!?」
闇氷は即座に何かを言いかけた少年の口を塞ぎ、影を通って宿の屋根に移動した。
闇氷「⋯待て⋯ちょっと待てっ⋯何でお前、ここにいんだよ…!」
「むぐー!むぐぐー!」
闇氷「⋯あぁ、塞ぎっぱだったな⋯離すが声は抑えろ、いいな?」
「む!」
闇氷「で⋯何でここにいんだよ⋯グラブ⋯」
闇氷はなんとも言えない表情で手を外し、少年の名を呼ぶ。
グラブ「ふぅ⋯えぇと、ラ」
闇氷「あぁそれと今の名前はそれじゃなくて夜桜 闇氷だ。変とは言わないでくれ、所詮は形式上の名なだけだ。だが、あの名ではもう2度と呼ばないでくれ、思い出したくもねぇから」
グラブ「は、はい⋯」
闇氷「⋯で、何でお前はここにいる」
グラブ「えぇと⋯ラ⋯じゃなくて、闇氷様がここにいるのを昨日見まして⋯」
闇氷「昨日⋯どこで?」
グラブ「あっちの方からです⋯」
グラブは蒼凪山方面の林を指差す。
闇氷「⋯あぁ、お前は視力が良いんだったな⋯で?」
グラブ「⋯僕、闇氷様は殺されたって聞いてたんです⋯だから⋯だから⋯」
段々と涙声になるグラブに闇氷はギョッとする。
闇氷「え、ちょ⋯ま、待て」
グラブ「う⋯うわぁぁぁぁぁ⋯!!」
闇氷の静止叶わず、大粒の涙を流して泣き出してしまう。
闇氷「⋯ま、待て待て待て待て泣くな泣くな、ちょ、おい⋯」
グラブ「うわぁぁぁぁぁぁぁん⋯っ!!だって⋯だってぇ…!!もう死んじゃったって思ってたんですもん…!もう会えないって思ってたんですもん…!!」
闇氷「⋯あ゙ぁ゙ー⋯」
額を押さえながら、闇氷は深く息を吐いた。
敵の奇襲とかよりも、この状況のほうが何倍もしんどい。
氷河「闇氷ー、なんかさっきっからすっごい泣き声するんだけれd⋯」
泣き声を聞きつけた氷河が屋根の上にやってきた。
泣き顔のグラブの姿を見た氷河はしばらく動かなかった。
氷河「えっと⋯これ、どういう状況⋯?」
グラブ「ひぐっ…ううぅぅ…」
闇氷「見ての通りだよ…俺は泣かせた覚えねぇけどな⋯」
氷河「いや完全に泣いてるじゃん…なにしたの闇氷⋯?」
闇氷「なんもしてねぇよ⋯!むしろ何でここまで泣いてんのか聞きたいのはこっちだっての⋯!」
氷河「なんもしてないなら何でその子泣いてるのさ⋯」
闇氷「俺マジで何もしてねぇって!!⋯あぁ、一応言っとくが、こいつは、まぁ⋯敵⋯ではねぇ。ちょっと⋯昔の⋯従者っつうか⋯直属部下っつうか⋯」
それを聞いた氷河はある程度察した。
氷河「⋯⋯なるほどね⋯で、そんな子が単騎で何でここに?」
闇氷「それを今から聞くんだよ⋯こっちもさっぱりわかんねぇんだからな⋯そら、さっさと泣き止め。」
グラブが袖でごしごしと目をこする。
グラブ「ご、ごめんなさい⋯ぼ、僕⋯びっくりしてしまって⋯」
氷河「びっくりって⋯闇氷がいた事が?」
闇氷「それもあるだろうが⋯俺が思いっきり戸を開けたからだろうな⋯」
グラブ「そ、それに⋯闇氷様はもう死んでるって⋯昨日まで思ってましたから⋯」
氷河「昨日?」
闇氷「昨日4人連れ帰ったろ。そん時に見たらしい。こいつ視力はいいからな。⋯つーか、俺が死んだってどこ情報だ?」
グラブ「えっと⋯ルs」
闇氷「オッケわかった今度会ったらしばく」
氷河「あぁ⋯なるほどね⋯」
闇氷「⋯ところで、誰に殺されたとか言ってたか?」
グラブ「えぇと⋯闇氷様によく似た水色髪に、って⋯」
氷河「⋯俺のせいにされてんのかい⋯まぁ確かに直近までいたけど⋯」
グラブ「え⋯どういう意味ですか⋯?」
氷河「闇氷があっちに戻る前、直近にいたのは自分だからさ⋯その当時だいぶ殺意高めの⋯喧嘩をしてたしね⋯それを利用して犯人自分に仕立て上げたんでしょうね⋯」
闇氷「まぁ⋯実際当時は本気で殺す気で斬り合ってたがな⋯」
グラブ「そ、そんな…でも本当に殺してなかったんですよね!?」
氷河「してたら今こうして喋ってないよ。」
闇氷「⋯まぁ、実際死にかけたんだが⋯いや、なんでもねぇ。とりあえずこの話はここまでにして、だ。要約するとお前がここに来た理由は俺がいたから会いに来た⋯って事でいいか?」
グラブ「はい⋯」
闇氷「⋯会いに来たとて何になるんだよ⋯」
グラブ「言ったじゃないですか!僕は闇氷様について行きますって!僕は闇氷様について行きます!!陣営が変わっても!!」
氷河「忠誠心すご⋯」
闇氷「⋯つまり?お前は向こうからこっちに寝返りたいと?」
グラブ「寝返り⋯の意味はよく分かってませんけど僕は闇氷様といたいです!」
闇氷「お前なぁ…寝返りってのはな、今まで属してた陣営を裏切って敵側に行くってことだぞ?」
グラブ「⋯構いません!」
闇氷「はぁ!?」
グラブ「闇氷様がいないのならあそこにいる意味はありませんから!それにあっちでの僕の扱い中々に雑で酷いんですもん!だからあっちには未練0です!闇氷様とがいいです!」
闇氷「⋯⋯⋯⋯⋯お前正気か?」
グラブ「はい!僕の意思です!」
闇氷「⋯あっちに戻ったら確実に裏切り者として処刑確定だぞ?」
グラブ「大丈夫です!もう戻る気ないですから!」
氷河「うわぁ思いっきり言い切ったよこの子」
闇氷「⋯はぁ⋯あいつらと会わせてみるか⋯」
氷河「つまり?」
闇氷「⋯こいつを宿に連れてってみるって事だが?」
グラブ「いいんですか!!?」
闇氷「うるせぇ。⋯取り敢えず元の所属は伏せろよ?」
グラブ「勿論ですよ!」
闇氷「⋯⋯⋯」
氷河「どした、闇氷?」
闇氷「⋯名前、変えるか。」
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