空想小説「青鬼」 第31話 火隠、そして
ひろし「ハ、ハクモ君…?」
ハクモ「グルルルルル…」
ハクモの見た目が変わった。水色のオーラが紫色のオーラに変わり、目が赤黒くなった。
氷河「ハ、ハクモ…?うわっ!!」
ハクモを心配して近づいた氷河をハクモは突き飛ばした。
永「キャハハハ!!やった!遂に隷属化も成功だ!これでいつ他の神獣が孵化しても大丈夫だね!ただちょっと自我が吹っ飛んでるのは気に入らないけど。」
美香「そんな…ハクモちゃん…」
たけし「ハ、ハクモ…冗談だろ…?」
卓郎「ハクモ…うあっ!」
卓郎もハクモに近づいたが、卓郎も突き飛ばされてしまった。
卓郎「…俺達の事忘れちまったのかよ…?」
卓郎もかなり絶望した声で呟いた。
永「キャハハハ!楽しー!行け!神獣ちゃん!こいつらをやっつけちゃえ!」
ハクモはとてつもない強風を卓郎達に向けた。
ひろし「くっ…風が…進めない…」
少しでも気を緩めれば研究室外に飛ばされてしまうだろう。そうなれば、残される道は…卓郎達の後ろ、氷河は髪を強風に弄(いじ)られながら両手を地面についていた。
氷河『何でだよ…何で俺の仲間はいつもこんな目に合うんだよ…本当なんなんだよ…!』
『…***。』
氷河「…!?」
突然、真っ白な世界に飛ばされた。背後に懐かしい声と気配を感じた。
『貴方は今、そのような状態になってるいる場合ですか?』
氷河「っ…」
氷河は悔しさ、不甲斐なさに地面についている手を握りしめる。
『貴方は…仲間を救わないのですか?』
氷河「その方法が分かってたらとっくにやってます!ハクモが隷属化された今、もう…!」
『もう一度よく考えるのです。永の発言から導き出しなさい。』
氷河は振り向いたが、そこには誰もおらず、いつの間にか元の世界にいた。
氷河『永の発言…?自我が飛んでいる…?ん、待てよ。つまり、あのかまいたちやらは自我が飛んでない状態で隷属化されてるなら、それは忠実な道具になっている、と仮定すると今、ハクモは、自我が少し飛んだ状態で隷属化されてる…なら…!』
氷河は立ち上がり、強風に逆らって歩き出した。
卓郎「氷!この強風に逆らってきたのか…!?」
氷河「あぁ。足元を凍らせて飛ばないようにした。それと、一か八か、やりたいことがある。」
その右手には、ナイフが握られていた。
たけし「ちょ、ちょおい!そのナイフ、まさか…!?」
氷河「これは攻撃を弾くためのナイフ。ハクモに攻撃なんかしないよ。」
氷河は笑顔を見せてて言った。
ひろし「ですが、風の斬撃なんて、弾けるものでは…」
氷河「…斬撃なんか…凍らせてしまえばいい!氷華の力を舐めるな!」
そう言い放ち、姿勢を低くし、ハクモに向かって一直線に走り出した。
ハクモ「グルルルルル!!!」
ハクモは風の斬撃を繰り出した。
氷河「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーっ!!!」
氷河は捨て身で突撃していく。小さい刃はスルーして行った。その影響で腕や足、顔に切り傷が付いていった。大きな刃はナイフで切り裂き、切り開いた。ハクモとの距離が近くなる。
ハクモ「グルルルッ…!?」
ハクモの間合いに入った氷河は予想外の行動をした。氷河はハクモの胴に抱きついたのだ。当然、ハクモは暴れ出す。
氷河「うぐっ…ハクモッ…思い出してくれ…俺だ…っ!」
しかし、ハクモの力は凄まじかった。氷河は投げ出され、壁に打ち付けられた。
氷河「うああっ!ぐっ…」
卓郎「氷…!何やってんだよ…!?」
1つ違っていれば研究所外にふっとばされていたかもしれない中、氷河は心配する卓郎の言葉に何も答えず、口元の血を拭い、また走り出した。そしてまた、ハクモの胴に抱きついた。
氷河「俺…約束…しただろ…?ハクモを…絶対守るってさ…だから…絶対諦めねぇ…!」
ハクモ「ハ…グルルルルル…!!」
一瞬、本来の声を発したが、すぐに唸り声に変わり、氷河を投げ飛ばした。また、壁に打ち付けられた。
永「無駄だよ。一度隷属化したら解ける事はないのさ!」
永はあざ笑うように絶望するような言葉を言い放った。だが、そんな言葉はもう聞こえていなかった。今の氷河は…ハクモを助けることだけを考えていた。
氷河「ハクモ…っ…また一緒に…皆で…外で遊ぼうよ…」
ハクモ「ハ…グルルルル、ル…」
また本来の声を発したが、氷河は投げ飛ばされた。
美香「氷ちゃん…!」
また壁に打ち付けられたその時、右眼の眼帯が外れ、風に流されどこかに落ちていってしまった。氷河は手で右眼を隠し、飛ばされた方向を見た。
氷河『あっ、眼帯…!…スペアはあるけど、付ける余裕なんかない…殲滅軍に見られるのは嫌なんだよな…最悪正体がバレかねない。でも…今はそんな事考えてられない…っ!!』
氷河はまた、ハクモの元へ走り始めた。だが、もう肉体労働が限界だったのか、途中で倒れ伏してしまった。
たけし「氷河…っ!!」
助けに行こうにも、風が強すぎて動くことも出来なかった。氷河は身を起こし、涙ながらに言った。
氷河「…もう、一度……もう一度…俺の事を…ヒョウって…ママって…呼んでよ…ハクモ!!」
氷河はありったけの力を使い果たし、倒れ込んでしまった。しかし、一瞬だったが、氷河の右眼をみたハクモは様子が変わった。オーラの色が緑と紫で点滅し始めたのだ。
ハクモ「アァァ…!ハ…マ、ママ…」
そういった瞬間、ハクモのオーラが水色になり、目の色も青色に戻った。
ハクモ「ママ!!」
ハクモは倒れ伏す氷河に駆け寄り、身を寄せた。
ハクモ「ハク!…ハーーークッ!!!」
突然、ハクモが声を上げた。すると、青い光がハクモの周りに集まり、ハクモと氷河を包んだ。その光の中で、氷河の傷に光が触れると、どんどん怪我が治っていった。光が消えると、氷河は薄く目を開けた。
ハクモ「ハク!」
氷河「…ハクモ…?ハクモ…!よかった…」
氷河は笑顔で安堵の涙を流した。
ハクモ「ハク。」
永はこの状況を信じがたい目で見ていた。
永「そんな馬鹿な…僕の計算が狂うなんて事ある訳が…」
美香「私達の絆はあんたの計算なんかで測れる物じゃないのよ!」
美香は氷河に肩を貸しながらそう言い放った。
永「…くっうるさいうるさいうるさい!!凡人が天才の僕に偉そうにするな!お前達!早くこいつらをやっつけろ!」
ひろし「うああっ!」
たけし「うわああ!」
美香「きゃあ!」
かまいたちの攻撃によって、3人が飛ばされてしまった。
卓郎「ひろし!たけし!美香!くっ…」
氷河「…ハクモ!いきなりで悪いけど、3人を助けに行ってやって!」
ハクモ「ハ、ハク!」
ハクモは返事をすると、3人の元へ飛んでいった。
卓郎「氷、どうするんだ?」
氷河「…卓郎、これ、頼めるか?」
氷河は白い勾玉を卓郎に渡した。
卓郎「おっ、とうとう俺の番だな!任せろ!」
卓郎はすぐに髪に勾玉を付けた。
氷河「ありがとう。」
氷河もベースの勾玉を付けた。2人は炎のようなエフェクトに包まれ、その姿を表した。その姿は、まるで忍のような服装だった。左手には、弓剣1体の両剣を持っていた。
たけし「氷河と卓郎が合体したぜ…!」
たけしは少し興奮した様子で言った。
ひろし「えぇ。ですが何か…」
ひろしは少し表情を曇らせた。
美香「どうしたの?」
美香はひろしを見て問う。
ひろし「…いえ、きっと気のせいです。」
ひろしは静かにそう言って首を振り、戦況を見守った。
卓河「火隱 卓河(ひがくれ たくが)。古より滅んだ忍の存在…お前は信じるか?」
そう言うと、卓河のたちまち煙幕のようなものが辺りを包んだ。かまいたちも、視界を奪われて四方八方に流れていた。どこからともなく、卓河の声が聞こえてきた。
卓河「炎弓・黄昏ノ弓。シュート。」
突然、煙幕の中から一筋の赤い線が伸びた。その一筋の赤い軌跡はかまいたちを正確に撃ち抜いた。かまいたちは貫かれた所から塵となり、消滅した。
たけし「す、すげぇ…!」
ひろし「あれ程まで速いかまいたちを一矢で正確に…!」
美香「えぇ…!流石だわ…!」
永「あぁもう!!!どいつもこいつも使えない奴ばっかりだよ!!」
永は苛立った声で怒鳴った。
美香「これで形勢逆転ね!」
永「え?何言っちゃってんの?こんなんで形勢逆転?アハハハハ!笑わせないでもらえる?」
ハクモ「グルルルルル…」
ハクモは永を睨みつけて唸った。
永「は?もしかして今僕に威嚇したの?君は僕が作ったんだよ?いわば僕は君の親なのに、子が親に逆らっていいと思ってるの?」
一瞬、永の脳裏に映像が写った。
永「…もういいよ。君に固執しすぎた僕も悪かったのかもね。」
氷河『何か分からないが、嫌な予感がする…』
永「隷属化の実験も上手く行ったし、出来損ないの君じゃなくて他の神獣を僕のお気に入りにするよ。だから君はもう、」
次の言葉を察した氷河は急いでハクモに向かって告げた。
卓河「ハクモ!!逃げろ!!!」
永「死んじゃえ」
ハクモ「ハ…」
突然、最初の小さい時の姿になって倒れ伏してしまった。口からは血が出ていた。
卓河「ハクモ!!!!!!」
ひろし「ハクモ君!!」
たけし「ハクモ…!!」
美香「ハクモちゃん!!」
永「アハハハハ!!ちょっと気づくのが遅かったね!」
永は高らかに笑った。
ひろし「お前…まさか…!!」
永「そうさ!僕が作ったペット達は皆、体に小型爆弾を埋め込んであるのさ!少しでも僕に反抗したり使えなかったりした奴はこうなる運命なんだよ〜!」
永は笑いながら説明した。
美香「お前…どこまで…クズなの…!!」
美香は永に怒りを滾らせた。その隣では卓河がハクモを呼んでいた。
卓河「ハクモ。…ハクモ…しっかりしてくれ…頼む……死なないでくれ…」
卓河は…氷河と卓郎は…涙を流してハクモに言った。
ハクモ「ハク…ヒョウ…ママ…タク…パパ…」
『また…一緒に外で…遊ぼう…ね…ありがとう…大好き…』
卓河「…嘘だ…そんな…ハクモ…」
卓河の悲痛な声が響き渡る中、ハクモは5つの羽根を残し、光になって消滅した。
氷河「また…守れなかった…ハクモも…師匠も…」
卓河の姿のまま、氷河だけの呟きの声が漏れた。
永「クハハッ、大人しく僕のペットになっていれば死なずにすんだのにね〜!」
すると、永の周りに、赤黒い火柱が立ち始めた。
永「ん?何この火?」
卓郎と氷河は…卓河は…黄昏ノ弓を握りしめ、炎を纏い、ゆっくりと立ち上がった。その目には…光が宿されていない、怒り、恨み、憎しみといった憎悪に満ちた目だった。
卓河「……お前だけは絶対許さない」
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ブシニャン「初めて見たでござる!」
スタープラチナ「今必然的にブシニャンしか居ない。」