空想小説「青鬼」 第41話 変わり果てていた目的
ハクモ「ここがあおなぎざんなのー?」
闇氷を降ろし、幼獣の姿に戻ったハクモは卓郎の頭に乗っかって言った。
卓郎「あぁ、早く氷を見つけ…」
卓郎がそういいかけた時、洞窟内から轟音が鳴り響いた。
たけし「うわぁぁぁぁぁ!!?」
闇氷「うっわ…こりゃあ派手にやってんなぁ…」
ひろし「早く行きましょう!!」
6人は蒼凪山へ走っていった。
千手観音鬼「はっはっはっ!大した事ないのぉ、後継者?」
氷河「う…うるさい…黙れよ青鬼風情が…!」
氷河はかなりボロボロになっており、その手にはナイフではなく、色のくすんだ脇差が握られていた。
ハクモ「マ、ママ…!!」
闇氷「待て。」
ハクモ「何でよ!」
闇氷「静かにしろ。今行ったら多分面倒な事になる。今は様子を見ろ。」
千手観音鬼「奴の後継者だと言うのに弱いのぉ。我の足下にも及ばぬわ。」
氷河「うるせぇ…よ…だったらなんだってんだ…だからと言って…攻撃をやめる理由にはならない!!」
そう言い放ち、迫りくる手を斬り伏せながら千手観音鬼に斬りかかろうとするが、寸前の所で横から拳が飛んで来て岩壁に体を強打した。その際に脇差から手を離してしまい、その場に落ちた。
氷河「ゲホ…ゲホッ…」
氷河は力なく地面に落ち、脇差の横に倒れた。
氷河「くそったれ…が…!」
氷河はよろよろと立ち上がろうとしたが、ふと、1つの思考が頭をよぎった。
氷河『ちょっと待て…俺って…あいつを倒すのが目的だったか…?』
確か俺は復讐を…いや待て、ハクモを殺ったのは殲滅軍だ。青鬼じゃない。なら…
氷河「俺は…何で…戦っ…て…たん…だ…」
そう言うと、氷河はその場に倒れ伏した。
ハクモ「あ…!!」
闇氷「あっおい…!!」
倒れたのを見たハクモは闇氷の静止を振り切り、一目散に走っていった。
千手観音鬼「さぁ、止めじゃ!!」
千手観音鬼が無数の腕を伸ばし、氷河を握り潰そうとしたその瞬間、氷河に迫っていた腕は全て切り落とされていた。
千手観音鬼「…む?」
千手観音鬼が向いた先には、神獣の姿をしたハクモがそこにいた。
ハクモ「僕の母さんに…一体何を…何をしてくれたんだ。」
ハクモは静かかつ、よく通った声が洞窟内に響き渡った。
千手観音鬼「ぬぅ…邪魔が入ったようじゃな。先にお前からやってくれようぞ!!」
千手観音鬼は先程のように無数の腕を伸ばし、ハクモを潰そうとするが瞬く間にその腕は風の刃で斬られていった。
ハクモ「…これじゃ決定打にかけるね…」
ハクモは腕を切り落としながらそう呟く。そして目に入ったのは氷河が使っていた脇差だった。
ハクモ「…母さん、借りるよ!」
そう言い、刀を咥えると変化が起きた。くすんだ色の刀身が鮮やかな黄緑を帯びた水色に変わったのだ。
ハクモ「…!よし、行くよ!!」
ハクモは迫りくる手を前に、脇差を構えた。
ハクモ「風刃一閃・神渡!!」
まるで一陣の風の如く飛び出した刃は、手だけでなく、千手観音鬼の首までも切り裂いていた。
闇氷「…流石の機動力だな…風の神獣と呼ばれてるだけあるか。」
美香「あいつがいなくなったんなら早く氷ちゃんの所へ行きましょ!!」
5人はハクモと氷河がいる所へ駆け寄った。
たけし「ひ、氷河、しっかりしろよ…!」
氷河「……ぁ………ぅ……」
美香「氷ちゃぁぁぁん!!起きないと容赦しないわよぉぉぉぉぉ!!!」
闇氷「仮にも怪我人を乱雑に扱うなよお前…今は休ませんぞ。」
ひろし「では、宿に…」
ひろしがそういった時、闇氷が口を挟んだ。
闇氷「いや、蒼凪山で休ませる。上の雪山の方でな。」
卓郎「おいおいおい、そんなとこに置いて大丈夫なのかよ!?」
闇氷「大丈夫だから言ってんだよ。頭も冷えて一石二鳥だろ。」
たけし「えぇ…」
ハクモ「僕も母さんと一緒に居ていいかな?」
闇氷「あぁ、そのつもりだ。私も姉さんを休ませる場所の案内はする。他の奴らは主に状況を伝えてくれ。」
卓郎「わかった。じゃ、氷の事任せるぞ。」
闇氷「あたぼうよ。洞窟の入口までは見送ってやるからさっさと行って伝えて来い。」
闇氷とハクモは氷河を連れ、4人を見送った。
闇氷「…さて、行くか。」
ハクモ「乗る?」
闇氷「あぁ、頼む。」
ハクモは闇氷を背に乗せ、歩き出した。
ハクモ「闇氷姉さん、母さんを背負って重くないの?母さんも僕の背中に乗せればいいのに。」
闇氷「姉さんの事だ、お前の毛並みが汚れるのは嫌がるだろ。私もまだ疲れてるが、姉さんを背負えないほど疲弊してねぇよ。」
ハクモ「でも、頑張り過ぎは体に毒だよ。毛並みはまた綺麗にするから乗せて。」
闇氷「…わかった。後、さっきの頑張り過ぎ云々の話は姉さんにしてくれ。やりすぎたからこうなったんだからよ…」
ハクモ「母さんが起きたら言っておくよ。」
その会話を最後に暫く沈黙が続いた。次に会話が出てきたのは雪山の扉前だった。
闇氷「さて…やるかよっと…」
闇氷はハクモから降りると、扉を押した。が、体力が落ちているからか、びくともしなかった。
闇氷「あーくそ…私が疲れで体力落ちてるってのもあるが、びくともしねぇ…」
ハクモ「僕も手伝うよ。母さんを一旦降ろしてくれるかな?」
闇氷「おうよ、ちょっと待ってろ。」
闇氷が氷河を下ろすと、ハクモは扉を胴体で闇氷と一緒に押した。扉は鈍い音を出しながらハクモが通れるほどの幅まで開いた。
闇氷「はぁ…ったく、毎回毎回メンテしても翌日には建付け悪くなってんだよなぁ…」
ハクモ「そうなの?」
闇氷「あぁ…これには頭を悩ませてんだよ…ま、今はそんな事どうでもいいか。姉さん乗せて行くぞ。」
ハクモ「わかった。」
ハクモは氷河と闇氷を背に乗せ、雪山を歩き出した。
闇氷「平然としてっけど寒くねぇのか?」
ハクモ「問題ないよ。」
闇氷「ならいいけどよ…あぁ、そこを右に曲がってくれ。」
闇氷が道案内を続け、洞穴の前に着いた。
闇氷「ここだ。大分前に蒼凪山で一夜を過ごした時、ここで一夜を潰したんだ。」
ハクモ「確かに、ここなら風を凌げるね。」
闇氷「そういやお前、刀…あの脇差はどうした?」
ハクモ「理屈はわからないけど、自分の意思で出したり消したり出来るようになったよ。ほら。」
ハクモは口を開くと、輝く風が逆巻いたと思えば、刀を咥えていた。
闇氷「…どうやらその脇差は正式にハクモの物になったっぽいな。」
ハクモ「え…?母さんの刀がなくなったわけじゃないよね…?」
闇氷「いや、姉さんの刀は属性でいくらでも作り出せるから問題ない。」
ハクモ「それならいいけど…じゃあ、母さんを降ろそうか。」
ハクモは床に伏せると、ハクモを枕にするように氷河を寝かせた。
闇氷「ってか、腰に巻いてる上着ボロボロになってんじゃん…取り替えて来てやるか。」
ハクモ「宿に戻るの?」
闇氷「あぁ。だが、転移技くらいあるから速攻で戻って来れる。じゃ、ちょっと待ってろ。」
闇氷はボロボロの上着を手に取ると影の中へ消えて行った。
ハクモ「ちゃんと持ってきてくれるかな…ってん…?」
氷河の方を向いた時、異変があった。氷河の髪が水色から黒く変わっていったのだ。
ハクモ「え…なんで…?髪が…!」
程なくして、闇氷が長袖ではなく、半袖の上着を持って戻って来た。
ハクモ「あ、闇氷姉さん…母さんの髪が…!」
闇氷「…あぁ、力の使いすぎでこうなっただけだ。暫く安静にしてりゃなんとかなる。」
闇氷は氷河を見ながら端的に言った。
ハクモ「…そ、そうなんだ…あれ、というか長袖はなかったの?」
闇氷「姉さんが使う奴がどれかまっっったく分かんなかった…唯一分かんのがこの半袖の上着だけなんだよ…」
そう言い、困ったように髪を掻いた。
ハクモ「…とか言って母さんに意地悪してるんじゃないよね?」
闇氷「ま、半分そうかもな。実際分かんねぇし、もうちゃっちゃか戻りたかったし。」
ハクモ「はぁ…君の性格の悪さは変わらないね…」
闇氷「はっ、性格の悪さは筋金入りだっての…っては?俺お前とはさほど話してないよな?何で知ってんだ…?姉さんから聞いたのか?」
ハクモ「いや…雪から聞いた。」
ハクモから「雪」という言葉が出てきたのを聞いた闇氷は目を見開いて言った。
闇氷「え…は?…あ、あぁ、1回死んでたからそん時に聞いた…とかか?」
ハクモ「…まぁ…そんなところかな。」
闇氷「あぁ…そうか…じゃまぁ…私は戻らせてもらうぞ。」
ハクモ「わかった。」
闇氷はハクモと氷河を残し、宿へ戻った。
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闇氷「よ、戻ったぜ。」
美香「あ、闇ちゃん!」
卓郎「氷は大丈夫そうか?」
闇氷「今の状態じゃなんともだ。ま、大丈夫だろ。んな事より私は休ませてもらうわー。」
闇氷はそう言うと2階へ上がっていった。
たけし「ハクモが一緒とはいえ、雪山に放置して大丈夫なのか…?」
ひろし「大丈夫ですからそこに置いて行ったのでしょうが…低体温症にならないか…」
美香「それはハクモちゃんがいるから大丈夫なんじゃない?」
ひろし「それはそうかもしれませんが…」
卓郎「まぁ、心配なら闇氷に頼んで連れてってもらえばいいんじゃねぇか?」
ひろし「闇氷といえば…本当になぜあのような事を成せるのでしょうか…?」
美香「あぁ…そういえばそうね…氷ちゃんはここに来てから知ったって言ってたけど…」
卓郎「あの様子じゃ…ここに来る前から持ってそうだよな…それをずっとあの氷から隠し通せるか…?姉妹関係なら知ってそうだけどな…」
ふと、たけしが口を開いた。
たけし「…そ…そういやさ…殲滅軍って皆…青光無しで技撃つよな…?」
美香「…ちょっと待ってよ、闇ちゃんが殲滅軍って言いたいの!?」
美香は言うやいなやたけしの肩を掴んで揺らしまくった。
たけし「さささささ流石に思ってねぇよ…!ただの仮説だって…」
闇氷「なんの話してんだよ…」
上へ上がったはずの闇氷がいつの間にか部屋へ入っていた。
たけし「うわぁっ!!?いつの間に…!?!?」
闇氷「生憎私は…ってか姉妹揃って地獄耳でな。何か私の事を詮索してんなって思ったから来た。」
ひろし「それで、どうしたのですか?」
闇氷「単刀直入に言う、変な詮索はしないでくれ。姉さんの事もな。根も葉もない噂で変な目で見られんのは御免だ。」
ひろし「…それは一理ありますね…すみません。」
闇氷「謝る事はねぇよ。そりゃ怪しいもんな、属性を蒼力石なしで扱う奴なんて。」
卓郎「何で闇氷は属性が使えるんだ?」
闇氷「…なんでだろうな…私にもわからん。ここに来てから使えるんだ。理屈はわからん。本当にな。」
たけし「闇氷もわからないのか…本当になんなんだこの村は…」
闇氷「頭抱えても分からんもんは分かんねぇよ。お前らも今のうちに休んどけよ?」
闇氷は短く話を終わらせた。
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