空想小説「青鬼」 第34話 蒼炎の刃

3 2024/05/22 20:15

永「…やった…やったよ…僕やったよ!!ボス!!双炎のクナイ使いと雪華のナイフ使いを倒したんだ!これで褒めて…」

そう言い、2、3歩進むと、膝をつき、血を吐いた。

永「ゲホッゲホッ!!はぁはぁ…ヤバい…早く帰って治療しないと僕も死ぬ…おい、早くボスの元に帰るぞ!!」

永は龍に命令した。龍は返事をするかのように声を上げた。

永「ははっ…でも…もうこれで…」

永は卓河の骸(むくろ)がある方向を見ると、さっきまであった卓河の骸が無い。

永「あれ?彼奴の死体がない…!まさか落っこちたのか…!?」

永は下を見下ろすが、どこにもそんな影は無い。

永「いない、どこに」

永が卓河を探していると、後に何かを感じた。咄嗟に回避したが、右頬に切り傷が走った。そこには、さっきナイフを刺したはずの卓河がそこにいた。

永「ガハッ…お前…どうして…さっき確実にトドメを刺したのに…!!」

卓河「ハァ…ハァ…これだよ。」

狼狽える永に卓河は一枚の羽を取り出した。

卓河「ハクモが守ってくれたんだ。お前には無い絆が俺達を守ってくれたんだ!」

永「…黙れよ…黙れ黙れ黙れよ!!!薄っぺらい絆が何だ!!そんな物に僕は負けない!!僕にはボスがいる!それが全てなんだ!!」

氷河『………』

卓河「…なら、決着を付けようじゃないか。俺達とお前、どちらが正しいのか。」

永「僕は勝つ。勝って僕の正しさを証明してみせる!!」

卓河は頷くと、突然黄昏ノ弓を手放し、氷河の使うナイフを取り出した。

永「…ん?何する気?」

氷河のナイフに蒼い炎を纏わせ、その炎を振り払うようにナイフを振ると、形状が変わった。刀身が伸び、蒼い炎を纏う太刀になった。

卓河「炎刀・蒼炎ノ剣」

卓郎『か、刀…!?』

今まで黙って見ていた卓郎が驚いた様子で刀を見た。

永「今更武器を変えたって無駄だよ!僕の勝利は確実なんだ!!」

卓河「…そうか。じゃあ、始めようか。」

張り詰めた空気が二人を包む。永はサーチアイライトを使う。数秒先の未来、卓河が動き始めた。

永「見えた。僕の勝ちだ!!」

しかし、今までサーチアイライトを多用しすぎたのか、目に痛みが走る。

永「…ッ!!クソ…目が…」

氷河『今だ…!!』

氷河はこれを勝機とみなし、蒼炎ノ剣を構えた。

卓河「焔一閃・烈火!!」

卓河は蒼い炎を纏い、素早く迫る。永もナイフを構え、卓河に迫る。2人がすれ違い、先に膝を付いたのは…卓河だった。

永「ヘヘっ…僕の…勝ち……だ…」

永は勝ちを確信してそう言った。が、その直後、永は倒れ伏した。永の下に血溜まりが出来ていく。

卓河「はぁはぁ…はぁはぁ…」

卓河は一体の勾玉を外し、卓郎と氷河に戻った。

卓郎「はぁはぁ…やったな…!俺達…の…勝ちだぜ…!」

卓郎は膝を付きつつも、明るい声で言った。

氷河「そうですnゲホッゲホッ!!カハッ…」

氷河も明るい声で言おうとした瞬間、咳き込んだ。その手の甲には、血が付いていた。

卓郎「氷!!お前大丈夫か…!?」

氷河「だ、大丈夫…」

卓郎「吐血してて大丈夫な訳あるか…!!」

氷河「そんな事より…まだ…」

氷河はよろよろと立ち上がりながら永を見た。

卓郎「…そうだな。彼奴の事だ、まだ何かするかもしれねぇな。しっかり縛っておか…イテテテッ…!」

卓郎は脇腹を抑えてうずくまってしまった。

氷河「ちょっ、卓郎さん!そっちこそ大丈夫じゃないじゃないですか!」

2人がなんやかんやいざこざしている中、永がぼんやり意識を取り戻していた。

永『あれ?おかしいな。体が動かないや。僕はあいつらに勝ったはずなのに。』

永は薄く目を開き、下を見ると、永は全てを察した。

永「…そっか。僕は負けたんだ。…悔しいな。あんな絆とか言ってる奴に負けたのか。ボス、ごめんね。でも、僕の研究は全部ボスのものだ。あいつらに利用されるくらいなら…」

永は今までのバックアップが入ったメモリを壊した。

永「よし。これで大丈夫。後は…」

永は手元に落ちていた毒のナイフに手を伸ばした。

氷河「卓郎さん、大丈夫ですか?」

氷河は卓郎に肩を貸していた。

卓郎「俺は氷の方が心配なんだが…はぁ、歩くのもやっとだな…」

氷河「あはは…そうですね…」

2人は永の元へ歩いていった。

氷河「……!」

永の様子を見た氷河は唖然とした。

卓郎「…何やってんだ。早く縛んねぇと…」

氷河「…もう、必要ないみたいです。」

氷河は若干永か目を逸らして言った。

卓郎「はぁ…?」

氷河「だって…もう…」

卓郎「…なるほど、な…」

卓郎も永を見ると、どういう意味か察した。

永『あぁ、これが死ぬって事か。散々な人生だったけど、あの時ボスに出会えて幸せだったな。あーぁ、最後にまたボスに褒めてもらいたかったなぁ。…そっか…死ぬ時になって初めて分かったよ。僕はボスの事が好きだったんだ。ううん、オーヴァーやアルト、他の皆の事も好きだった。僕は仲間が欲しかったんだ。もし…もし生まれ変われたら…今度は皆と幸せになりたいな…』

それを最後に、永の意識は事切れた。

氷河「さて、どうやって地上に降りるか…って…」

卓郎「もうすぐ地上じゃねぇか!」

ふと2人が下を見ると、地面がすぐそこに迫ってきていた。

氷河「そうか…操り主がいなくなったから、この龍も開放されたんだ。」

龍は三人を下ろすと、どこか彼方へ飛んでいった。

卓郎「…どこに行くんだろうな。」

卓郎は遠くなっていく龍を見つめながら呟いた。

氷河「それはあの龍にしか分かりませんよ。」

卓郎「それもそうだな。イテテッ…」

卓郎はまた脇腹を抑えて唸った。

氷河「大丈夫ですか?」

卓郎「あぁ、サンキュ。それより、ひろしとたけしと美香は大丈夫だろうか…」

その時、二人を呼ぶような声が聞こえてきた。

美香「おーい、おーい!」

氷河「美香さんの声です!」

二人は周りを見回して美香達を探す。

たけし「お、おーいっ…!」

ひろし「皆さーん!」

続けて、ひろしとたけしの声も聞こえてきた。

卓郎「あっ、あそこだ!」

卓郎が指差す方向を見ると、向こうから3人が走ってきた。

ひろし「心配をかけてすみませんでした、皆さん。」

ひろしは深々と礼をして詫びた。

卓郎「いいんだ!無事なら何よりだ!」

美香「何とかギリギリで間に合ったわ。」

たけし「あ、俺は土壇場で電磁浮遊使って何とかなったぜ…」

氷河「おぉ…」

美香「それより、あいつはどうなったのよ?」

卓郎「あいつは…そこだ。」

永の骸を見た3人は色々と察した。

美香「…そっか…」

皆がちょっとしんみりしていると、一人、氷河が永の骸に歩み寄った。

たけし「ひ、氷河…?何する気だ…?」

たけしの問いかけ完全無視で永の骸の元に立つと、永の腕を自分の肩にかけ、永を背負ったのだ。

美香「えちょ…氷ちゃん、何してるの…?」

氷河「…いくらこいつが、絶対に許せない事をしたとしても…こんなとこに放っておいたら、地面の肥やしになる前に青鬼の肥やしになる。こいつを背負うのは癪だけど、青鬼の餌になる方が癪だから。こいつは闇氷に処理してもらう。」

卓郎「…そうか。」

卓郎はそう言うだけで、氷河を責めることは無かった。

ひろし「今回も大変な戦いでしたね…何より、失った物が多すぎて…」

美香「そうね…帰りましょう。ハクモちゃんのお墓はもっとちゃんと作ってあげたいわ。」

5人は重い足取りで宿へ歩いていった。

―――――――――

殲滅軍アジトにて、永の訃報はもう既にボスことレイに告げられていた。

「ボス、永がやられたようです。ボス、涙…」

レイの頬には涙がつたっていた。

レイ「もう仲間を失う事には慣れたと思ったのだがな。まだ駄目らしい。永、後は任せておけ。我らが必ず始祖を復活させ、醜き者共を消してみせよう。」

レイは後ろの培養槽のような物を横目に言った。

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その他2024/05/22 20:15:18 [通報] [非表示] フォローする
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氷河「………」


星夜「ふむ、ラスボス…とな」


>>2
闇氷「ん、また新しい面子が来たな。」


>>4
闇氷「設定はさっきリア主が読んだが、ボスは一応負ける…?想定にしてるっぽいが、負け方が特殊というかなんというか…」


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