空想小説「青鬼」 第24話 蒼力石
美香「…ほとんど…字が潰れてる…ひろし、分かる?」
ひろし「…すみません、全く分かりません…」
美香の言った通り、ほとんどがどんな字か読めなかった。学年1の秀才のひろしでさえ、読み取れないほど潰れていた。
水刃「青光の内容のページは…ここね。」
水刃さんは本をパラパラとめくり、とあるページでとめた。しかし、そこもほとんどの字が潰れていた。
たけし「ま、全く読めねぇ…」
水刃「これでも結構、解読は頑張った方なのよ?小さく私の手書き文字があるでしょ?」
水刃さんは文の1つを指して言った。
卓郎「これだな。えぇと…『青光 力 授 過 身 硬 死 導』跡切れ跡切れだが、それっぽい文章だな。」
水刃「えぇ。だいぶ前に言った結界がなんとかってのも、ここから見つけたのよ。」
ひろし「なるほど。では、今日はこの本の謎、そして能力の髪飾りの日になりそうですね。」
美香「そうなりそうね〜…早く二人共帰ってこないかしら?」
美香は待ち遠しそうに言った。
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5人が文字の解読をしている最中、二人は青雅洞窟に着いていた。
闇氷「んじゃ、行くぜ、姉さん。」
氷河「おうよ。」
そう言うと、二人の姿が消えた。二人は崩壊した道中の人が1、2人入れる程の岩の隙間にいた。
闇氷「狭っ…」
氷河「しゃーないだろ?さ、ササッと終わらせるよ。」
闇氷「オッケー…銃・影縫、ブラックパレッド。」
闇氷が行く手を塞ぐ岩に銃を撃つと、紫がかった黒い1cm程の弾丸が飛んでいった。その球体が岩に当たると、岩はみるみるうちにボロボロと崩れていった。
闇氷「…うし。行けたぜ、姉さん。行くぞ。」
氷河「おけ。流石だね、闇氷。」
二人は奥へ奥へと進み、あの時沢山の青鬼と戦った所に着いた。
氷河「おぉ、ここはあまり崩れてないね。」
氷河は辺りを見渡して言った。
闇氷「じゃ姉さん、よろしく。」
氷河「えっ…」
闇氷「さっきは私がやったんだ。お前もいけるだろ?」
氷河「はいはい、分かったよ…」
そう言うと、氷河はたひがとは別のカートリッジを髪に付けた。すると、フードを被り、毛先がピンク色の髪…死花美氷の姿になった。
闇氷「もうそれを作ってたのか…お前、さてはまーた徹夜したな?」
美氷「あはは…まぁ、そうだね…じゃ、ササッとやりますか!」
そう言い、美氷は高く飛び上がった。刃が紫色に輝き、鎌を地面に叩き込む。
美氷「玄武冥斬!!」
落下の衝撃と玄武冥斬の威力は凄まじかった。地面はひび割れ、砕けた。そこから青色の光が溢れ出す。地面の下は青い宝石のような鉱石が埋まっていた。
闇氷「んじゃ、さっさと終わらせるか…オラッ!!」
闇氷は地面に黒いダガーナイフを突き立てた。青い宝石のような鉱石は黒曜石のように綺麗に割れた。
氷河「闇氷ー、そっちどう?」
カートリッジを外し、氷河の姿に戻った氷河が言った。
闇氷「あぁ、蒼力石(そうりょくせき)の回収は出来たぜ。これだけあれば十分だろ。後は加工して作るだけだ。」
氷河「ん、分かった。じゃあ、戻ろうか。」
闇氷「オッケー。」
闇氷は空間技を用いた道具入れに蒼力石を入れた。そして、二人の姿は青雅洞窟から消えた。
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闇氷「戻ったぜ。」
二人は30分も掛からずに戻ってきた。
氷河「たのもー!」
氷河は勢いよく戸を開けて言った。
美香「氷ちゃん、なんか性格変わってない?」
氷河「やってみたかっただけですよ。」
氷河は苦笑いで言った。
卓郎「それで、素材は見つかったのか?」
卓郎がすぐに食いついてきた。
闇氷「あぁ。これだ。」
闇氷は蒼力石を見せて言った。
ひろし「これが…とても興味深い物ですね…!」
そう言い、ひろしが蒼力石に触れようとした瞬間、氷河が声を上げた。
氷河「バカ、触るな!!」
ひろし「えっ!?」
たけし「うわあああああぁぁぁぁぁ!!?」
突然氷河が声を上げた事にひろしとたけしはかなり驚いた。美香と卓郎も声は上げなかったが、驚いた様子で振り返っていた。
美香「びっくりした…で、何で触っちゃダメなの?」
美香もまだ驚きながらも、闇氷に聞いた。
氷河「あぁ…す、すまん、いきなり大声出して…」
闇氷「この鉱石はな、そのままだと危険なんだ。そうだな…これに例えやすい鉱石があったような…なんだっけ…」
氷河「カルカンサイトな。」
闇氷「そう、それだ!」
卓郎「カルカン…サイ…?なんだ、それ?」
卓郎の疑問に4人が答えた。
ひろし「カルカンサイトとは、硫化銅の結晶です。その美しさから、銅の花と呼ばれることもあるようです。」
氷河「カルカンサイトはとても綺麗な青色、または緑がかった青色をしているけれど、管理はちょっと面倒でね。水に溶けやすくて、なおかつ乾燥にも弱いんだ。」
水刃「それに鉱石としては柔らかい方だから、加工にも向いていないのよ。」
闇氷「だから、自然界で結晶が見つかんのは中々珍しくてな。売られてるほとんどは人工的に結晶化されたもんだ。」
卓郎「そんな脆いので作れるのか?」
水刃「ううん、蒼力石は水に溶けないし、乾燥に弱いわけでもないわ。硬度もクォーツくらいあるわよ。」
美香「クォーツって…どのくらい硬いの?」
氷河「そうだね…水晶くらい硬いかな。」
卓郎「水晶って割れやすいイメージがあるんだが…」
水刃「んー、割れにくいけど、キズは目立ちやすいかもね。」
ひろし「クォーツ、もとい水晶のモース硬度は7。かなり硬いほうですよ。ちなみにカルカンサイトのモース硬度は2.5らしいです。」
美香「え、モース硬度ってなんなの?」
闇氷「硬度の話はそんくらいにしろ。話を戻すぜ。カルカンサイトと似てる、共通してるって所は、どちらも毒性を持ってるって事だ。もしも、原石とか欠片に触っちまったら、速攻で手を洗いに行くべきだな。10g〜20g食ったら致死量の鉱石だ。ま、意識せずうっかり触っちまうのはまだしも、まさか石を食う阿呆がいるわけがねぇし、大丈夫だよな。」
たけし「そ、そんな物危ない鉱石でで水刃さんみたいなのが作れるのか…?」
氷河「たけしさんの言う通り、そのままじゃ危ないです。だから、加工して、危なくないようにするんですよ。」
闇氷「…時にお前ら、アクセを付けることはあるか?」
ひろし「アクセ…?」
ひろしは謎の言葉に少し困惑した。
氷河「あぁ、アクセサリーの事だね。」
氷河が正式名称で言った。
美香「まぁ、たまに付けるけど…それがどうかしたの?」
闇氷「全部髪飾りだと味気ねぇと思ってな。お前らが気に入ってるアクセ聞いてそれっぽく作ろうと思ったんだが…」
闇氷は紙切れとペンを取り出して言った。
卓郎「なるほどな。俺は首輪かな。」
氷河 闇氷「首輪!!?」
氷河と闇氷が驚いたような声を上げた。
美香「あぁ〜、この前十字のキーホルダーがついた首飾りしてたわね!」
闇氷「あ、あぁ…首飾りか…妙な反応しちまったじゃねぇか…最初からそう言えよ…」
闇氷は苦笑いで言いながら、メモをとった。
卓郎「逆に何を想像してたんだよ…」
氷河「犬が付けそうな革の首輪。」
卓郎「確かに首輪って聞いたら大体それ思いつくけどな?俺の言い方が悪かったってこともあるけど、違ぇからな?」
卓郎は苦笑交じりで言った。
闇氷「わーってるよ…で、残り3名は?」
美香「私は水刃さんみたいな髪飾りがいいわね!」
闇氷「分かった。どの形がいいとかあるか?」
美香「そうねぇ…桜みたいなのがいいわね!」
闇氷「分かった。で、ひろたけはどうすんだ?」
氷河「ひろたけって…」
ひろし「そうですね…私はそういった物はあまり付けませんからね…」
たけし「俺もだな…」
水刃「んー、腕輪はいいんじゃないかしら?」
ひろし「腕輪ですか…」
たけし「俺はちょっと…」
水刃「あー…ダメっぽいわね…」
氷河「派手なのがいやなら、あまり目立たない指輪はどうですか?」
ひろし「指輪…いいですね。では、私はそれにしましょうか。」
闇氷「ひろしは指輪…っと。たけしはどうするんだ?」
たけし「え、えぇと…!バ、バッチっていけるか…?」
闇氷「あぁ、いけるぜ。バッチって事は服につけるってことか?」
たけし「あ、あぁ。腕輪とかだと、戦ってる時に気になるかもって思ったから…」
闇氷「分かった。ひろしが指輪、たけしがバッチ、美香が髪飾り、卓郎が首飾りだな。主、ちょっと部屋借りるぜ。」
水刃「分かったわ。」
闇氷「姉さん、ちょっと他の素材も集めて来てくれねぇか?」
そう言い、素材の名前であろう物が書かれたメモを氷河に渡した。
氷河「オッケー。」
水刃「なら、これ使って。」
水刃さんは髪飾りを氷河に渡した。
氷河「えっ、いや…あ、あぁ、ありがとうございます。じゃあ、ちょっと行ってくるよ。」
少し受け取るのを拒んだ様子を見せたが、髪飾りを付け、フッと一瞬で消えた。
闇氷「んじゃ、私も作業してくるわ。」
そう言い、闇氷も一瞬で消えた。
美香「闇ちゃん、上手く作れるかしら?」
水刃「きっと大丈夫よ。ヤバいってなったら多分私か氷河ちゃんを呼ぶわ。」
闇氷「おい主、手伝ってくれ!」
空中に穴が空き、闇氷が逆さまに顔を出して言った。
卓郎「闇氷、お前鉄棒にぶら下がった感じになってるぞ。」
闇氷「しゃーねぇだろ!?とりあえず主、さっさと来い!」
水刃「はいはい、分かったわよ。」
水刃さんは穴に入っていった。
ひろし「そういえば…闇氷はいつからここにいたのでしょうか?」
美香「闇ちゃんは私達が来た後に遅れて来たんじゃない?」
たけし「まぁ…そう考えるのが妥当か…?」
卓郎「だけどさ、闇氷はちょっと…なんていうか…人外っていうか…人間離れしてるよな。」
美香「確かにね。闇ちゃんって青光無しでも技を打てるわね。」
闇氷「何か言ったか?
闇氷がさっきのように逆さまに顔を出して言った。
たけし「いいいいいいやっ!ななななななんでもないぜっ!!!」
闇氷「ふ〜ん…あっそ。」
闇氷は棒読みでそう言い、戻っていった。
ひろし「…今は余計な事は考えない方が良さそうですね…」
卓郎「だな…」
そんな事を言ってると、氷河が帰ってきた。
美香「あ、おかえり氷ちゃ」
戻ってくるやいなや、氷河はぱったりと倒れてしまった。
卓郎「氷!!?ちょっ、おまっ、大丈夫か!?」
卓郎は急いで氷河の元へ駆け寄った。
氷河「…うぅ…」
氷河はうめき声を上げて、ぐったりとしていた。
水刃「どうしたの、そんなに騒いで…って氷河ちゃん!!?」
様子を見に来た水刃さんは、氷河の様子を見ると、慌てて氷河の元へ走っていった。
水刃「ね、ねぇ、何があったの…!?」
たけし「も、戻ってきたら倒れて…」
水刃「そ、そうなの…よかった…」
ひろし「…水刃さん。」
水刃さんの様子を見たひろしが口を開いた。
水刃「ん?何かしら?」
ひろし「水刃さん、やけに氷河に肩入れしていませんか?」
水刃「…え?」
卓郎「えっ?そうか…?」
ひろし「そうですよね?明らかに扱いが違う気がします。」
ひろしは鋭い目つきで水刃さんを見つめる。
水刃「あ〜、う〜…」
ひろし「………」
水刃さんはしどろもどろな声を出して誤魔化そうとするが…
水刃「うぅ…わ、わかったわよ…」
ひろしの無言の圧に押され、言いかけた事を認めた。
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