[再UP]空想小説「青鬼」 第3話 噂の廃村
氷河が清青中学校に入ってきて約1ヶ月経った。氷河はクラスに馴染…めてはいないが、自分を良くしてくれている白河ひろし、黄河たけし、赤水美香、赤城卓郎とはよく話すようになっていた。
卓郎「あー…どうしようか…」
ある日の昼休み、卓郎が何か考え事をしていた。そこへ、美香と氷河がやってきた。
美香「卓郎、どうしたの?そんなに悩んで。」
氷河「よければ聞きますよ!」
そう言うと、卓郎が少し困った表情で話してくれた。
卓郎「サンキュ、美香、氷。実はな、ここ最近動画のネタで困ってんだよな…」
氷河「動画?卓郎さんって動画投稿者なんですか!?」
美香「あぁ、氷ちゃんは知らなかったっけ。実は卓郎って最近動画投稿を初めてね。チャンネル登録者数も700人位いてね!ちょっぴり有名人なのよ!」
驚く氷河に、美香は軽く解説を挟んでくれた。
氷河「へ、へぇ…すごいんですね、卓郎さんって…」
美香「ふふっ、そうでしょそうでしょ!卓郎ってすごいのよ!」
卓郎「で、何かネタになりそうな物ってあるか?」
氷河「うーん…これといった物はないですね…」
美香「そうね…いざ考えるってなると難しいのね〜…」
卓郎「うーん…ダメか…」
3人で考えていると、そこにひろしとたけしがやってきた。
ひろし「どうかしましたか?」
たけし「何か考えてるのか…?」
美香「ひろし、たけし!ちょうどよかったわ!実はね、斯々然々(かくかくしかじか)で…」
美香はひろしとたけしに状況説明をしてくれた。
卓郎「ひろし、たけし、何かないか?」
ひろし「そうですね…」
たけし「うーん…」
5人で悩んでいると、とある男子生徒が近寄ってきた。
男子生徒「ねぇ、なに悩んでるんだい?」
卓郎「あぁ、実はな…」
卓郎は事情を説明した。
男子生徒「ふ〜ん…なら、1つ」
知ってるよ、と言う前に、卓郎が前のめりに食いついてきた。
卓郎「教えてくれっ!!!」
男子生徒「お、オッケー。じゃあ言うよ。君達、青美山(あおみざん)って知ってるかい?」
氷河「…!」
氷河は青美山というワードに反応した。
ひろし「えぇ、知っていますよ。静水神社の奥の山ですよね。」
ひろしは淡々と話す。
男子生徒「流石は学年1の秀才。よく知ってるね。」
男子生徒はひろしの知識を褒めた後、こう続けた。
男子生徒「そこの細道を通って行くと森に出るんだ。それで、そこをずーっと真っ直ぐ進んでいくとトンネルがあるんだ。そして、そのトンネルを抜けると廃村があるんだ。そこには化け物がいるって話だよ。まぁ、僕自身では事実か否か分からないんだけどね。その判断は君達に任せるよ。」
卓郎「そうだな…お前ら、行けるか?」
しばらく考え込んだ後、卓郎はひろし、たけし、美香、氷河に聞いた。
美香「私は行けるわよ!」
たけし「お、俺はちょっと…」
引き気味なたけしを見て、美香は美香はにっこり笑顔で言った。
美香「いいじゃないのたけし!それに、化け物がいたって私がふっ飛ばすから大丈夫よ!」
たけし「う、うぅ…わ、分かったぜ…」
美香の勢いに押され、あっさり承諾した。
卓郎「ひろしと氷はどうだ?」
ひろし「そうですね…予定次第で決まります。」
氷河「自分もそうですね。いつ行くんですか、卓郎さん?」
氷河が卓郎に聞くと、卓郎は少し考え込んだ。
卓郎「そうだな…じゃあ、もうすぐ夏休みだろ?20日の終業式が終わって飯食べたら学校門前集合でどうだ?」
ひろし「初日からですか…全く、仕方ないですね。」
氷河「いいんだ…」
意外とすんなり承諾した事に少し驚いた氷河に、卓郎は氷河に視線を移す。
卓郎「氷は駄目なのか?」
卓郎は氷河に聞くと、氷河は3秒ほど考え、顔を上げた。
氷河「そうですね…まぁ、これといった用事は無いですし、皆さんが行くのなら、私も行きましょう。」
そう言い、氷河も承諾してくれた。
卓郎「よし!じゃあ、決まりだな!予定忘れんなよ!」
美香「分かってるって卓郎!」
そういう中、氷河は少し考えていた。
氷河「あの…1つお聞きしてもいいですか?」
氷河は先程の件を教えてくれた男子生徒を呼び止めた。
男子生徒「ん?何だい?」
氷河「その話…一体どこから聞いたんですか?」
そう質問すると、男子生徒はこう答えた。
男子生徒「…さぁ、どこからだったかな。ずっと前に聞いた話だからね。覚えてないね。」
笑顔でそう答えた。
たけし「氷河、どうした…?もうすぐチャイムが鳴るぜ…?」
たけしに話しかけられて、ようやく時間がヤバいことに気づいた。
氷河「あぁ、ほんとだ。サンキューな、たけしさん。」
そう言い、氷河は席に戻っていった。次の授業の用意をした後、氷河は少し考え事をした。
氷河『何で、さっきの奴はあの村を知っていたんだ…?それに…まさかあいつらがまた…?いや、流石にそんな事はないと思いたい。あの人のあれがこんなに早く終わるはずがない。きっと…大丈夫…だよ…な…?』
ひろし「…河…氷河…?大丈夫ですか?」
氷河「ふぇっ!?だ、大丈夫ですよ?」
ひろし「そうですか…表情が暗くなっていたものでしたから…」
考え事をしていたらいつの間にか表情が深刻な表情をしていたらしく、心配させてしまっていたようだ。
氷河「そ、そうだったんですか…ご心配ありがとうございます。」
ひろし「いえ、お気になさらず。」
そう言い終わった後、チャイムが鳴った。氷河は目を細め、誰にも聞き取れぬような小声で呟いた。
氷河「何事も起こってませんように…」
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先生「それでは、夏休みを有意義に過ごしてくださいね!では、室長(しつちょう)さん、号令をお願いします!」
室長とは、クラスのリーダー的な存在の人の事である。
室長「起立!礼!さようなら!」
全員「さようなら!」
男子生徒C「っしゃあ〜!夏休みだ〜!」
女子生徒C「夏休みにカラオケ行こうよ〜!」
月日は流れ、終業式が終わり、夏休みに入った。
卓郎「う〜し!今日から夏休みだぜ!」
ひろし「そうですね。今年はどうなる事か…」
美香「何よ、ひろし!楽しくなるに決まってるでしょう!」
たけし「そ、そうだな…!」
卓郎「そうだ。お前ら、前に教えた日程、覚えてるな?」
卓郎は皆に1週間前話した事を聞いてきた。
美香「もちろんよ!ご飯食べて学校門前集合でしょ?」
卓郎「よし、ちゃんと覚えてるな!ひろし、たけし、氷、ちゃんと覚えてるな?」
ひろし「えぇ。覚えていますよ。」
たけし「お、俺もちゃんと覚えてるぜ…!」
ひろしとたけしが答える中、氷河は1人黙り込んで目を細めていた。
卓郎「ん、氷?どうした?」
氷河「………………………」
美香「ちょっと氷ーちゃん!なーに暗い表情してんのよっと!」
氷河「うおおぉぉぁぁ!!?何するんですか美香さんっ!!!」
美香が思い切り背中のバックを叩くと、氷河はびっくりして、思いっきり発狂に近しい声を出した。
卓郎「で、いきなり話を戻すが氷、1週間前に話した事、覚えてるよな?」
氷河「あ、あぁ…はい。青美山の件ですよね?ご飯食べて学校門前集合…でしたか?」
卓郎「あぁ、そうだ!ちゃんと覚えてるみたいだな!」
たけし「な、なぁ、氷河…」
ふと、たけしが氷河に質問をしてきた。
氷河「ん?何でしょう、たけしさん?」
たけし「氷河ってさ…俺達の事まだ信用してなくないか…?」
氷河「…!?」
たけしがそんな事を言い出し、ひろし、美香、卓郎が驚いた表情でたけしに聞き返した。
ひろし「どういう事ですか、たけし!」
美香「そうよ!何突拍子も無い事言ってんの!」
卓郎「そうだぜ!こんなに俺達によく接してくれてるんだぜ!?信用してないなんてそんな事言うな…って、氷…?」
卓郎が氷河の方向を見ると、氷河はうつむいていた。
美香「ひ、氷ちゃん…?」
氷河はうつむいたまま口を開いた。
氷河「いやまぁ…親しく接してくれてるって言うのは、凄く嬉しいしありがたいんですよ?嬉しいんですけど…なんだろう、無理矢理つきあわさせてる気がするんですよ…自分の話の内容もいいものがありませんし…自分が居ても邪魔なんじゃないか…って…」
うつむきながら申し訳無さそうに言う氷河の元に卓郎が近寄ってきた。
卓郎「…おい、氷。」
氷河「…?何でしょうか、卓…」
郎さんと言い切る前に氷河の方を掴み、ぐいっと動かして氷河と卓郎が顔を見合うような状態になった。その赫色の混じったあたかも燃えているような眼は氷河を真っ直ぐ貫いた。
卓郎「氷…言ったよな…?俺達は仲間なんだ、ってさ。氷、お前は俺達の仲間なんだ。仲間だから色んな話をしたり、助け合ったりするんだ。仲間なら当然の事だろ?」
卓郎は静かに、なおかつ力のこもった声で氷河に言った。氷河は青く濁った片眼を逸らそうとしたが、それは出来なかった。
氷河「それですよ。仲間だから、と言う事はクラスメイトだから、と言う事でしょう?だから、クラスメイトだから接している、ということでsy」
卓郎「違う!!」
氷河「うわあああああぁぁぁぁぁ!!?な、何ですかいきなり…」
卓郎が突然大声を出したので思わず、半泣き状態で氷河は驚いていた。
卓郎「違ぇよ…俺は…俺達はお前の事を仲間だけじゃない、友人として接しているんだ!俺達はお前の友人だ!だからそんな自分が邪魔なんじゃないかなんていう考えはもう止せ!」
卓郎はそう氷河に訴えた。そしてしばらく黙り込んだ後、氷河は口を開き、小声で呟いた。
氷河「全く…一体いつ友人判定になったのやら…まぁでも…ありがとうな…。」
卓郎「ん?氷、お前なんか言ったか?」
氷河「いや別に?まぁでも、ありがとうな、卓郎さん。お陰で気持ちが吹っ切れましたよ。」
氷河は笑ってそう言うと、卓郎は肩から手を離し、
卓郎「ふっ、そうか。じゃ、時間も押してるから、早く帰って学校門前集合だぜ!」
氷河「はい!」
氷河が返事をすると、卓郎はひろし、たけし、美香に向けて言った。
卓郎「うし!そうと決まれば、お前ら!走って帰るぞ!」
ひろし「と、唐突ですね…」
美香「分かったわ!ほらひろし、たけし!行くわよ!」
たけし「うわぁぁぁ!!!ちょ、腕引っ張らないでくれ美香!痛い!痛いからぁぁぁ!!」
その様子を見た氷河は、美香にちょっとした注意をした。
氷河「美香さん美香さん、流石に痛がってるので離したほうがいいのでは…?」
美香「そうね。じゃあたけし、しっかり走りなさいよ!」
美香はちょっぴり考えた後、美香はそう言ってたけしの腕を離してくれた。
たけし「よ、よし!…って美香、氷河…!俺ら2人に置いてかれてるぞ…!」
前をよく見ると、最早点に見えるほどの遠くの所にひろしと卓郎が居た。
卓郎「おーい!早く来いよー!」
卓郎がこちらに向けて叫んでるのか聞こえてきた。
美香「卓郎が呼んでるわ!早く行くわよ、二人共!」
そういった後、美香はぐんぐんスピードを上げていった。
氷河「ちょちょちょちょ、いくらなんでも速すぎでしょう!!た、たけしさん、急ぎましょう!!」
たけし「お、おぉ…!」
その後、最早持久走とも呼べる位の距離を走った氷河達であった。
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