【小説】獄悪魔様はえらいのなんの

7 2024/06/09 23:18

※1,2,3話までしかまとめていませんが、かなりの文章量です。

こちらのサイトから、一話ごとみるのもおすすめします。

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→3https://writening.net/page?6k6VpW

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「クルパ様!どこです!出てきてください!!」

この世界には、天国と地獄がある。 それはきっと、みんな知っている。

じゃあ、君は、死んだらどっちに行きたいと思うか。

——きっと、即答。天国と答えるだろう。

しかし、それでもまた、だめな人間は地獄へ行く————。

——だが、地獄がわるいところばかり、というわけでも、また無いのだから。

「おとうさん・・・!起きてよ・・・っ!!」

———あ。俺———。

意識が朦朧とする。どうやら、死にかけのようだ。

実にくだらない人生だったな、と思う。

会社に貢献したわけでも、地球のために良いことをしたわけでもない、

————とても、くだらない。

機械音が鳴り響く。同時に、泣き声も響きわたる。

地獄に、行くだろうなぁ。

泣けるわけでもないのに、涙が溢れそうになる。

昔、死んだ(、、、)母さんから聞いた。「地獄も悪くはないのよ」、と。

死ぬことの恐怖でもない、悲しいわけでもない。

なのに、辛い気持ちだけが胸いっぱいに広がる。

————もしもだ。もしも、地獄に行ったとしたら。

母さんに、会いたいな…。

ピ―――――ッ……

「おとうさあああああん!!!」

あ、俺、今、死んだんだな————。

———。

——————…。

――――…ぃ。

微かにだが、声が聞こえてくる。この期に及んで、幻聴か。

————ぉい。

次第に声が大きくなっていく。

おい。———おいっ!!!

「えっ!?」

今、はっきりと聞こえた。

おい、と。幻聴ではない。…さすがに。

あたりを見渡す。

「おぃ…っと、やっと起きたか。」

ずっしりと重みのある空気の先に目線を落とす。

「ええと、あなたは…」

「ワイか、ワイは閻魔だ。」

ワイ、が一人称の閻魔なんて聞いたことがない。

「これがワイの喋り方だ、気にするんじゃない。」

ぽかん、としていると、いきなり耳が壊れそうな勢いで怒鳴られる。

「はっはっ、ココ、凄いやろ!まぁ、ワイ専用の部屋、ってやつやなあ…。」

「そうなんですねー…。」と、なんとも興味のない様な声でせせら笑っておく。

「で、ここは…?」

もう一度、あたりを見渡す。

明るさ。温かみのある明るさではない、冷たい明るさのような感じだ。

体感温度。寒いとか、熱いとかも感じない。…のは、死んでしまったからなのだろうか—————。

周り。黒い、真っ黒。宇宙のような、寝ているときの、妙な感覚のような。

「ここは閻魔の部屋。ニンゲンたちでいう、裁判所的な感じや。」

「つまり・・・」

つまり、そういうことなんだろう。

「「地獄か天国かをきめる場所」だ…」

声がきれいに重なる。

閻魔は、一瞬目を見開いたようにも見えたが、俺が瞬き一つする間で元に戻った。

「さて、お前の処遇だ、が…っと、」

紙をぱらぱらとめくる音が静かな空間に響く。

もしかしたら、天国に行けるかもしれない、という淡い期待も、無残に散る。

「ほう、君、地獄か。まったく、前世はどんな事をしたんだかな…。」

呆れたように言っていたが、笑顔ではあった。

聞くところ、

 この処遇を決めるのは閻魔ではなく、もっと上の存在がいるらしい。

 上の存在は、悪い奴が一番嫌いで、天国などには絶対に入れさせない。

 その方々が、とても怒ったような走り書きでお前の処遇書を書いた、と。

「別に大したことじゃないけどな…。」

別に、学校の教師として、クラスの女子に教育という名の性行為をし、子供を孕ませただけなのだが…。

幸せだったのだから、もういいだろう。

口笛を吹きながら、俺は、処遇書に目を凝らしながら、ぶつぶつと何か言う閻魔をじっと見つめる。

俺は、いつもの癖で手をぽきぽき鳴らそうと…

したはずだが、妙に手が小さいことに気づいた。

「…え?」

その時。目線の先に、黒く渦巻いたような—————そう、“ゲート”が開いた。

閻魔がこちらを見て、面倒くさそうに「あー、よしよし」という。

「ここを通れば地獄につく、でもな、ここが一番大事や。よく聞けよ?」

そんなに重要そうではないなと判断した俺は、“ゲート”に向かいだす。

少し、足取りが軽い。やっぱり、なにか、変だ。

「———地獄に行ったらな、今までの、前世の記憶は全部消える。」

えっ、と声を発する。

同時に、とても幼い、「えっ」という声が聞こえる。

「それに、“お前がお前じゃなくなる”。」

曖昧な返答をする。もうむかついたりしなければ、呆れたりもしない。

ただ、不思議なことのバーゲンセールで追いつけない。

「そんで、お前は今——」

子供に、なっている。6歳くらいの、男の子に。それは、わかる。

「言わずとも、わかるか、やはり…。さて、子化というのは、苦しいそうだが。」

心拍数が徐々に上がってゆくのを感じる。はぁっ、はぁっと息を荒げる。

いつの間にか、“ゲート”に前にいる。

「ちょっ、と、」

言い終わる前に、声が出なくなる。

体が、透けている…のだろうか。息が漏れる。

ゲートはグオングオン、と低い音で唸る。

多分、こんな恐怖はもう、ない。というか、お腹いっぱいだ。

手、足、体、脳、五感—————。全てが痺れる。

「苦しい…。」

こちらから言わせてもらえれば、二度目の死だというのに———。

————————————…。ん…ぁ。

———————…パ様。…ルパ様。

—————…クルパ様ッ!!

「うわぁっ!?」

驚いた勢いでか、頭がガンガンする。意識が朦朧としているようだ。

そよ風が、気持ちいい。空の色は見たこともない———…空?

不思議そうにソラ(・・)を見ていると、近くにいた、

おそらく“僕”を起こしてくれた人が、なんとも不思議な喋り方で。

「ようやく起きましたか、よかった、早く起きねぇかなって思っていましたよ。」

敬語を言うことを拗らせた、みたいな喋り方といえば伝わるだろうか。

「クルパ様、大丈夫ですか?やはり、体調が悪いのですか?」

何が何だか、わからない。少し前に、閻魔と……?

「ごめん、くるぱ、って誰かなぁ、」

なぜか、タメ口でしゃべってしまう。

目の前の人の顔色が真っ青になる。

「クッ、クルパ様。そ、その、ご冗談は…。」

ふと、僕の目に目線を落とす。

そして、何かを察したように、真剣な目つきで焦りだす。

「もしかして、“もう”クルパ様じゃ、ない…?」

もう、とは何なのだろう。

戸惑っていると、後ろからいきなり抱かれる。

「わぁっ!!私の、可愛い、可愛いクルパちゃぁん!無事だったのぉ!」

不意打ちで持ち上げられたため、思わず「やめろっ!」と叫んでしまう。

「ひゃぁぁっ!?クルパちゃあんどうしちゃったのう!!?」

語尾がいちいち伸びる癖があるのかな、と思う。

僕の体から、冷や汗が出ているようだった。焦っても、いないというのに。

「あっ、マジュ様、お話が、」

こそこそ、と話す二人がちらちらこっちを見てくるのは何故だろうか。

でも、なんとなくだけれど分かる。

これは、“俺”じゃない、“誰か”なのだと。

「…そう、なのねえ…。うん、わかったわ、」

そういうと、ソラに向かって大声で叫びだす。

「閻魔あっ!!ちょっとおおおう!」

すると、ソラに黒い渦のような…どこかでどうしてか見たことのある———

「今日はゲート、すんなり開きましたね。自覚ありでしょうか。」

ゲート。そう、ゲートのようなものが開く。大体、人ひとり分くらいのサイズだろうか。

「ちょっとおお!!話より一日も早いじゃないのおお!!」

…あ、しまった、やぁはぁ、最近忙しいもんでね…と、これでいい———。

閻魔が話の途中、突然、頭が痛みだす。

ガンガンと殴られるような——

脳みそを切ったような———…

————…?

フッ、と痛みが和らいでいく。

気持ちが良い。気だるさなども抜けていく。

そして————。

「ガルパス、どうしたの、そんな切羽詰まった顔して。」

さっと、自分の口から飛び出す。

ガルパス、という人。

語尾を伸ばして喋る、マジュ。

記憶の隅に残っていたような何かが開花する。

———————他のことは、全て、吹っ切れるように。

「これで、記憶の引継ぎ(テレパシス)は出来たかな。ワイは別に悪くないのさ、ただ…」

ただ、と言いかけたところでゲートが閉じる。

なによ、もうっ!と切れるマジュを横目に見ながら、クルパはきょろきょろとする。そんなクルパを見て、ガルパスが声をかける。

「あっ、クルパ様。お体、体調はいかがですか?」

今までのことは思い出せる。僕が、獄悪魔だってことも。

でも、少しだけ、少しだけ記憶が飛んでいる気がする・・・?

目をぱちくりさせる。

「ええと、元気だよ、それも、ものすごく。」

目の前の人——ガルパスが安心したように、にこりとする。

僕は。

地獄の王、獄悪魔のクルパ。

それ以外の、誰でもない——————。

「いや、ほんとにびっくりしたんですよ。急に庭園で倒れるものですから…」

広い庭でぺたん、と座り込む。

大きな城からは、下町が良く見える。せっせと働くその姿は、どこか安心感がある。

綺麗な紫色の空には、薄っすらとだが、島のようなものが見える。

あれは…。

「くるぱちゃんっ、」

耳元で囁かれる。少し、わっ、と身震いをしてしまう。

「もしなにかわかんないことがあったら、気兼ねなく言ってねん。」

今喋っていたのが、マジュ・マジョ。いうならば、僕のお母さん。

ほっとしたようにしているのが、ガルパス・マーチ≪BG≫。

BGは、ボディーガードの事。代々、獄悪魔専属になることが義務付けられている。

「に、してもクルパ様。ニンゲンってわかりますか?」

いきなり聞かれた質問に戸惑ってしまう。

ニンゲン。ニンニン、ニン、ゲン…

「わかったぞ、インゲンとニンジンの配合種だなっ!」

「違いますね」

スパッと答えられた、しゅん、としながら、

違うんだあ、と言いながら、庭に寝そべる。

自分の不思議な記憶は、全て何でもないんだということにする。

これが、ふわふわとした、何もない、温かい日のことでした。

EPISODE . 1 獄悪魔クルパ

—————

文章量の問題で、あとはサイトからご覧ください。。。!

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著:しゃど

絵:キノコ

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タグ: 小説 獄悪魔様

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