産移屋ツギハギ細工・産移屋に聖夜来たる
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クリスマスイブの朝。産移屋では、ソラ・リク・フタバによってケーキ作りが行われようとしていた。
「…フタバ、それなんだ?」
「エンジェルトランペットから抽出したシロップだよ、聖夜にふさわしい名前でしょ?」
「捨ててこい!」
「やだ。」
「そうだよ、ソラ。フタバは、頑張って、作ってきてくれたんだから、もったいなくしちゃ、ダメだよ。」
「あのなリク、これ猛毒だぞ。」
「…ええっ。フタバは、みんなのケーキに、毒を入れようとしてたの?」
無垢な糸目に見つめられ、流石のフタバもたじろぐ。柔和だった笑顔が消える。
「あぁん?だったら何だよ。脳みそスカスカ35歳児に言われたくねぇよ!」
「おいフタバ。」
対するソラも声を低くし、
「…今すぐクビにしてやっても良いんだぞ?」
最強の切り札を持ち出した。
「チッ…ごめんごめん、冗談だよ。大切な仲間にそんなことするはず無いでしょ?いくら僕が毒殺に飢えているといっても…」
「あ、思い出した!ねえフタバ、毒といえば、ザンとアノマエとの研究はどうなったの?」
「もちろん成功したよ!でもあいつらひどいんだよねえ、試しに通行人撃ってみようって提案してあげたのに必死で止めてくるの。特にザンとか。甘ちゃんのくせにプロに口出すなって話…」
「フタバ。」
二人で生クリームを泡立てながら話していると、材料の確認をしていたソラから声をかけられる。
「どうしたのソラ?」
「…私に黙って非人道的兵器の開発だと?それもアノマエはともかく、ザンを巻き込んで?」
絶対零度の声色でフタバを睨め付ける。九歳から発せられる声だと簡単に分かる高さなのに、聞く者全てを氷漬けにする迫力だ。
「ザンは、私達の中で唯一罪を犯していない人間だったはずだぞ。」
「…だ、だから何だってんだよ、どうせもうここに入っちまったんだ。犯罪者もそうじゃねえ奴も変わんねえだろ?」
「変わる。あの時あいつを無理矢理にでも警察に行かせていれば、こんな事にはならなかった。あいつがここに来てしまったのは私達の責任だ。」
「…んだよ、良い子ぶっちゃって。」
「私が良い子に見えるか?」
「見えねえ」
「なら、ぶるも何も無いな。とりあえずクリスマスが終わったら覚悟しておけよ、重罪だぞ。」
「はあい。」
一方その頃、一人置いてけぼりになったリクは材料のつまみ食いを堪能していたとさ。
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