【小説】聖夜の夜、クリスマスツリーの奇跡。そして悪夢。
聖夜と呼ばれる夜、クリスマス
そんな神聖な日に私は心を痛めていた。
「ねーねーおかあさん。ことしはサンタさん来るかなぁ?」
「サンタさんはね...貧乏なおうちには来ないのよ...」
「サンタさんってひどいね。なんでびんぼーだと来てくれないの?お金もちの子はいっぱいプレゼントもらってるのに。」
プレゼントを買ってあげたい
翔癒の喜ぶ姿が見たい
だけどお父さんの借金が理由で私たちは貧相な生活を強いられている
「ごめんね...ごめんね...」
「なんでおかあさんがあやまるの?」
「・・・」
隣の人から貰ったクリスマスツリーを見ながら私はため息をついた。
天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずとは言うけど、私たちは常に常人の下で生きてる
いつか普通の生活をさせてあげたい。いつか翔癒の喜ぶ姿を見たい。
考えてるだけじゃ駄目だと行動しようとしてもまだ幼い翔癒を置いて働きに出る事も出来ない...
本当に神様は理不尽だ。
そんな事を考えながら私は翔癒を寝かしつけた...
「ねえ!おかあさん!起きて!」
翔癒の声で目を覚ます
「サンタさん来たよ!」
「・・・え?」
この子は何を言っているのだろうか?
我が家はプレゼントなんか買うお金はない...
きっと自分の劣等感から幻覚を見ているに違いない。
「ねえおかあさん!ちょっと来て!」
言われるがままついていく。
「ほら!おかあさん!」
次の瞬間、私は目を疑った。
「え!?」
装飾の無いクリスマスツリーの下にプレゼントボックスがある。
私はこんなの準備した覚えがない。ならばお父さん?
いやまさか、あの人が子供の為にプレゼントを買うとかありえない...
じゃあ神様からの贈り物?
「サンタさんはいたんだ!やったー!」
「・・・そ、そうね!中身なんだろ!」
訳が分からないが、翔癒が喜んでいるからと深くは考えないでおいた。
「やったー!自転車だ!」
中から出てきたのは折り畳み式の自転車だった。
「今日からいっぱい練習しないとね!」
「そうね!今から外にレッツゴー!」
私はそんな幸せな夢を見ながら外へと向かった...
「ちょっと!それオレのじゃん!」
「え?違うよ!これはぼくがサンタさんからもらったかっこいい自転車なんだよ!」
外に出ると向かいの家の詩雄くんと口論になっていた。
「ねえ!ちょっと佐藤さん!」
少し怒り気味で詩雄くんの親、諏御園さんが話しかけてきた。
「なにウチの子の自転車盗ってるのよ!」
「・・・え?」
どういう事?分からない...
混乱していると激怒しながら諏御園さんが怒鳴ってきた。
「とぼけるつもり!?本当にあり得ない!警察に通報してやる!」
「え?いや...本当に私何も知らなくて...」
「言い訳はいい!」
結局警察を呼ばれ、混乱したまま署に連行された。
結果裁判になり、弁護士を雇うお金も無く、懲役2年3ヶ月が言い渡された。
あの日何が起きたのか?誰があんな事をしたのか?
そんな事は知る由もなく、私は翔癒と引き離されてしまった。
ああ、これが夢ならいいのに...
私はそんな悪夢を見ながら、これから前科者として扱われる事、翔癒と二度と会えないかもしれない事を受け止めきれず、絶望した...
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『五右衛門のクリスマスツリー』
何の変哲もないクリスマスツリーの見た目をしている。
毎年12月25日の午前1時に、付近の家の中で一番裕福な家から物をランダムに盗み、クリスマスボックスに入れ、自身の下に配置する。
選ばれた物は異空間を通じて輸送される為、回避は不可能。
『聖夜の夜』←好き。
え、冗談抜きでこの話好きです。後味のせいで何かに目覚めそ(((
至福の数分をありがとうございました!