【小説】減らないペットボトル
夏のとある日
その日はアマチュアサウナーがタオル一つを腰に巻いて外に出る程に暑い日だった。
私は苦しんでいた。
かれこれもう1時間は休んでいない。頭が痛く、意識も朦朧としている。
―――今日が命日になるんじゃないのか
そんな一抹の不安を抱きながら私はサッカーの練習をしていた。
「やっと終わった...」
このご時世、訴えられないのが不思議な程に過酷な練習だ。
そこまで辛いのならばやり切った後に相当な達成感があるのでは?と思うかもしれないが、そうではない。
実際は、やり切った感よりも今日を生き延びられた事に対する安堵の方が大きい。
「・・・喉が渇いたな」
そう呟いた私は、鉛のように重い体を朦朧とする意識の中自販機へと運ぶ。
自販機には、様々な種類の飲み物があったが、私は何も考えず水を選んだ。
(水以外の飲み物飲んだら多分吐いちゃう)と体が警告している気がした。
そうして、ガタンと音を立て排出された水を、私は即座にキャップを取り、音を立てて飲んだ。
「っぷは~っ!生き返る~!」
梅干しのように真っ赤でしわくちゃだった顔が、みるみるうちに活気のある少年の顔へと戻っていった。
「・・・ん?」
ふとペットボトルに目を運び、私は違和感を感じた。
今、私は500mlを全部飲み干す勢いで飲んだのに、水が全く減っていないのだ。
何故だろうと考えを巡らせていると、不意に吐き気を催した。
「・・・っ!」
動けない。動いたら吐く...
急に顔を出してきた吐き気に、私は困惑と不快感を示した。
そうして、近くの公衆トイレにも行けず、私はその場で吐いてしまった。
「...うっ!お゙え゙!」
いくら吐いても吐き気は収まることなく、永遠と私に不快感と嘔吐を突き付けてくる。
・・・息が出来ない!
水が常に私の胃と喉に居座っている為、息をする隙が無い!
私はパニックになり、駄々を捏ねる幼稚園児のようにジタバタと暴れ回った。
だがそんな事をしても吐き気と水が収まる事は無く、段々と意識が遠くなっていって―――
このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)