『人間って何だろう?』小3の時に書いてた小説
「すみません、申し訳ございません。息子がご迷惑をお掛けしまして…………。誠に申し訳ございませんでした。」
今謝っているのは透の父である。校長先生に向かって言っているのだ。
「大丈夫ですよ。相手は怒っていますが、私が何とかします。気になさらないでください。」
10分前、ある事件が起こった。透が紐を遊んで回していたところ、悟に勢いよくぶつかり、悟は大怪我を負った。幸い、すぐ救急車が来たので悟は助かった。この事件のせいで、透の父と悟の母が呼び出されたのだった。
「私の子に大怪我させるなんて!今は病院で苦しんでいるでしょうに………。紐を回すなんて信じられない。」
悟の母はとても上品な人だ。気が強いところもあるが、この街の人気者。悟の家は金持ちなのだ。佐久山家と呼ばれるほど有名な金持ちの悟が、怪我させられたと噂になれば、透はみんなに避けられるだろう。それを考えただけで透は不安な気持ちと悔しい気持ちでいっぱいになった。
「落ち着いてください。本人も反省しています、許してあげましょうよ。」
校長先生が透達をフォローしてくれる。さすがに悟の母も怒るのを辞めた。
「わかりました。次は許しませんからね。」
その言葉に校長先生、透の父が笑顔になる。そして、
「ありがとうございます」
と、2人でお礼を言ったのだった。
次の日。事件がまた起こった。被害者はまたまた悟。加害者はもちろん透だ。
「またですか!?」
悟の母が叫ぶ。
「いや〜、またですね……。すみませんね、いちいち。」
今回の事件の内容は前と違う。怪我ではなく、悟が泣いてしまったのだ。透は暑いと思ったので、クーラーをつけた。しかし悟には寒かったらしく、体が震えて変な感じがする、と泣いてしまったという。
「私の子、弱いのかな………体が。それは個人差があるはず。悟が泣いてしまったのは仕方ない。透君は悪くないよね。」
悟の母は始めから大人しかった。昨日よりは、全然今日の方がより上品に見える。
「じゃあ今日も許してくれますか?」
「もちろん許します。仕方がないことに怒っていても意味はないから。」
悟の母はあっさりと許してくれたのだった。またまたホッとする2人。このパターンはいつまで続くのか?それは考えたことはなかった校長先生だった。
その別の日。その日は1日平和に過ごせたようだ。透も悟もいつもよりにこにこしていた。悟の怪我はだいぶ治ったらしい。この事件のおかげで、ということにはいかないが、前よりは仲を深められたそうだ。悟の母も透の父も仲良くなれた。事件とは、問題もあるが、前よりも良くなることがある。それが仲に繋がっていく。人間は、そういうものだ。人の行動によりもう1人の人の心が動かされる。その度に心が満たされていく。あるとき、心から溢れ出す。今回の件もそうだ。透が紐を回して悟にぶつかる。先生に怒られ、親が呼び出される。校長先生の行動・発言により悟の母はそのことを許した。透は気をつけようとする力、悟は強くなる力を手に入れたのである。これは10年ごとに消えていく。10年経つ度に心に刻んでおく。動物だってそうだ。一生懸命生きようとしている姿は、無駄では無いから。
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