紅剣物語第23話「後編」

8 2025/11/15 19:30

フリダケイは眉をひそめた。

「……無能力者なのが、そんなにおかしいですかね」

「ええ、とても」

 クロエは扇子を開き、優雅に口元を隠した。

 その瞳だけが笑っていない。

「あなたのような凡人が、この戦場にいる理由。

 仲間のため? 正義のため? 滑稽ですわ。

 持たざる者は、ただ死ぬだけ。何も守れないのに」

 その言葉に、フリダケイの顔がわずかに強張った。

「……知るかよ。俺は――」

「ええ、分かっていますわ。ソラという伝説の剣を持った少年を利用したい。それだけでしょう?」

 クロエの声は甘いのに、刃物のように冷たかった。

 フリダケイは息を呑む。

 図星だった。

 胸の奥にある小さな棘に、彼女はピタリと触れてくる。

「ちげぇよ……俺は人を騙す…人を助け、導く。それが学者さ……」

「なら、証明なさって?」

 扇子が閉じられる。

 カツ、とクロエのヒールが床を打った。

 次の瞬間――空気が震えた。

 クロエの背後に、薄桃色の光がいくつも点り始める。

 それは花びらの形をした魔力の陣。

 ひらひらと舞いながら、床に降りた瞬間、鉄を焼くような高熱を発した。

「わたくしの能力《恋華(れんか)の法廷》。

 嘘も、虚勢も、恋心さえも、裁いてあげる能力ですの」

 フリダケイは顔を引きつらせた。

「法廷って……俺、裁かれんのかよ!?」

「ええ。無能力者が英雄を気取った罪。

 ――重罪ですわ♡」

 花びらが弾け、熱波が走る。

 フリダケイは慌てて横へ転がり、地面を必死に叩いた。

「アッツ!? おいおいおい、なんだよこれ!!」

「動きが鈍いですわね。無能力者らしいわ」

 クロエはゆっくりと歩き、扇子を軽く振った。

 すると、フリダケイの足元に桃色の紋様が浮かび上がった。

 嫌な予感が背筋を走る。

「ちょっ、待っ――!」

 爆ぜた花弁が足元を焼き、フリダケイは悲鳴を飲み込んだ。

「あなた、本当に弱いのね。

 どうして戦場に来たのか、本当に理解できませんわ」

 クロエが近づく。優雅で、残酷な歩みで。

 薄暗い地下で、足音だけが響いた。

「教えて?

 あなたは何を導くためにここに立っているの?」

 フリダケイは唇を噛み、痛みに震えながらも、なんとか顔を上げた。

「……決まってるだろ」

 薄い声。弱々しい声。

 それでも、嘘ではなかった。

「投資だよ。

 一応あのガキに、俺の人生賭けてんだよ ……!」

 クロエの瞳が細くなる。

「投資……?

 あなたが何の役に立つのです?」

 その瞬間、クロエの扇子が凍てつく音を立てた。

「――滑稽ですわ」

 扇子がひらりと振られ、炎のような花弁がフリダケイに向かって殺到する。

 フリダケイは目をつぶった。

 だが――その時だった。

 何かが、花弁の奔流を切り裂いた。

 青い斬光。

 瞬きする間もなく空間を裂いたそれは、フリダケイのすぐ横を通り抜け、花弁を霧散させた。

「……え?」

 クロエが目を見開く。

「ちっ……また厄介なのが来ましたわね」

 霧散した花弁の向こう――

 フリダケイの目に、青い影が見えた。

 そして、静かに刃を下ろした声が聞こえた。

「遅れてすまない、フリダケイ。入口を探すのに、時間がかかった」

 ――ニンだった。

 青い斬光が花弁を切り裂き、霧となって散った。

 クロエは舌打ちし、扇子をゆっくり下ろした。

「……やはり来ましたのね。裏切り者」

 現れたニンは、フリダケイの前に静かに立った。

 その背中は頼もしく、揺らぎがなかった。

 ――少なくとも、フリダケイの目にはそう“見せておく必要があった”。

「ニン!助かった、マジで助かった!俺の魔法はできれば使いたくなかったんだよ〜!」

 フリダケイはわざと大げさに笑い、背中を叩くように近づいた。

 ニンは横目で一瞥し、眉を寄せた。

「……お前、かなり焼かれてるじゃないか。逃げられなかったのか?」

「いやいや、俺も“被害を及ぼさない程度”に反撃してたさ。ほら、この焦げはほとんど“俺が手加減したせい“で――」

 言いかけた言葉に、自分で苦笑する。

 本当は、逃げ惑って転がり回っていただけだ。

 彼女の“恋華”の気まぐれな爆ぜ方に、生き延びたのはただの運。そして――

(ソラやニンが勝手に強いと思ってくれたら、俺は“安全な位置”にいられる……)

 胸の奥で、そんな黒い計算が渦巻く。

 ソラの前ではいつも見せかけにすぎない非攻撃魔法を展開し、

 「能力者で、とても頼りになる」

 という虚像を少しずつ積み上げてきた。

 そのおかげで、ソラはフリダケイを信用し切っており、前衛として自ら戦っている。

 自分は後ろに立ち、適当に援護っぽいことをして、

 美味しいところだけ掠め取る――そんな“立ち回り”。

(ソラはまだガキだしな……ちょっと強気に言えば信じる。そして彼は紅の剣を持っているから簡単には負けない。利用しやすい)

 フリダケイは心の中で薄く笑う。

「……おしゃべりはそこまでですの」

 クロエがほんのり笑みを浮かべ、ニンに扇子を向けた。

「あなた、彼を助けに来たのでしょう?

 でも残念。裁くべきは――“ペテン師”の方ですわ」

 クロエの視線が、フリダケイに突き刺さる。

 フリダケイは肩を震わせた。

「な、なんだよ……俺に何の恨みが……」

「あなたの“虚勢”。“嘘”。“欺き”。」

 扇子がパチンと鳴る。

「恋華(れんか)の法廷は、本心を暴きますわ。

 あなたが仲間のために戦っていないことも、

 “利用するつもり”でついて来たことも……全部ね」

「っ……!」

 フリダケイの背中から汗が流れる。

 ニンが振り返り、鋭い目でフリダケイを見る。

「……利用、だと?」

「ま、待つんだニン!騙されるな、これは奴の心理戦だ―!」

 本当は違わない。

 フリダケイは叫びながら、必死に言い訳を探す。

 どんな言葉が信じられるか、どんな表情なら誤魔化せるか――

 頭の中で必死に計算を回す。

(まずい……この女、本当に心を読んでる……!?

 嘘を続けられねぇぞ……!)

 その時、クロエが静かに呟いた。

「――フリダケイ。あなたの罪状は“虚飾”。

 ソラを利用し、危険を押しつけ、

 自分だけ生き残ろうとした罪」

 桃色の魔法陣が、フリダケイの足元に広がる。

「裁き――開始ですわ」

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その他2025/11/15 19:30:02 [通報] [非表示] フォローする
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2: 障害者 @Iiam1542025/11/16 22:42:45通報 非表示

テラーノベルキッズ以下で笑っちゃうんすよね

やっぱせいちゃま信者って能無しや


あんちすんなよ


ここ来んなよ最初から


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