渡るもの藤原妹紅 第六話:永夜抄を振り帰ると
パリン───。結界が崩れ去った。満月の沈まない永遠の夜 紅白の巫女によって。
妹紅は昼間でも薄暗い"迷いの竹林"を永遠亭に向かおうとより中心部へと向かう─
「うわぁっ⁉︎」
突然足元が崩れて、穴の中に落とされた。姿勢が崩れて仰向けになる。
「いってて...落とし穴!てっことはてゐのやろーかっ...!!」
「せいかーい!!」
落ちた拍子に顔に 思いっきりかかった白い長髪の隙間から てゐの小馬鹿にしたような笑う顔が見える。と、珍しく
「妹紅も引っかかってるー!」
てゐの後から輝夜がてゐと同じようや嘲笑している顔を出す。
「落とし穴の中だと余計に笑い声が響いてしょうがないなぁ!」
怒って手を突き出しそこから弾幕をレーザーの様に発射して顔に直撃させる。
「逃げろー!!」
てゐと輝夜はすぐさま顔を引っ込めて弾幕を避け、逃げ去る。
「こんちきしょー!」
こんな日常が何回も何日も何ヶ月も続いた。ある時 輝夜が提案をしてきた。
「また 難題をだして出していい?」
輝夜の自慢げで輝かしい顔をして聞いてくる。妹紅はそれを見て楽しそうに微笑み
「今度は何だー? 幽霊の生き血やらでも取って来いとでも言うのか?」
輝夜の難題は度々完成度の高い物を出してくるので楽しめることを妹紅は理解しているので了承の回答をした。そうすると輝夜は自慢げに話す。
「今度の難題はとびっきり難しいのよ!名付けるとしたら─新難題『ゴルディオンの結び目』─とかどうかしら? 永琳でも苦戦するかもね!」
「まかせろ 絶対にとくさ!一刀両断してな!」
そこから輝夜の難題の説明が始まる。興奮している輝夜を押さえつけられるものは存在しないことがよくわかるほどの説明の長さだった。
「────だから、これが成り立つので最初の話にもどると...」
「長ーいっ!!」
輝夜は興奮すると制御が聞かないのでこうして喝を入れてやらないといけない。輝夜は
「ううっ、せっかく原理まで説明してたのに... まぁいいや。要約するといろんな世界に飛ばすからそこで起きる事件解決して〜ってこと」
妹紅は要約をきいて再度理解する。長々と説明しなくてもいいほど重要な話でもなかったことも。
「で? いつからいつまでやるんだ?」
「う〜ん、そうねー次の日がちょうど満月だしその日の夜からにしましょ、そこから次の満月までっ、明日の夜永遠亭にきてね始めるから!」
「了解!」
妹紅は輝夜の難題を解くために色々準備を始めた。
満月が南中する少し前、妹紅は迷いの竹林をどんどん中へと進んでいき、永遠亭へとついた。永琳が出迎える。
「こんばんは 妹紅」
「こんばんは 永琳」
永遠亭へ上がるもそこに輝夜の姿は見えなかった。
「そういえば輝夜は? あいつに呼ばれて来たんだが」
永琳の口角が上がる。急に足元の感覚が無くなる。
「うえええええっ──」
まるで吸い込まれるかの様に何処かへと真っ逆様に落ちる。永琳が先の問に答える。
「姫なら先に行って準備してるとかで難題の世界に向かったわよー!姫の難題頑張ってねー!」
秋の夜空の中、難題に振り回される、そんな旅は始まった。
妹紅は目が覚めると知らない天井で思わず素早く上体を起こし跳ねるように起きてしまった。そして今の状況を確認する。服はいつものあの服だが、空も飛べない。炎も出せない。御札もない。唇を歯で切ってみたが再生能力は残っていた。体の状態はそれくらい。目覚めた部屋は暗いオレンジ色のセメントで固められたレンガで作られた西欧の家らしい雰囲気だ。部屋の窓から陽光が差している。
「幻想郷と時間も違う? 輝夜の説明、まともに聞いておけばもうちょっとどんな状況かわかったかなぁ...
んっ?なんだこれ?」
いつものモンペの中に
『難題は昨日説明した通り事件を解決してくれればいいよそれじゃっ!』
と書かれた紙が入っていた。
「まぁ、難題だよなぁー。よし、いっちょとくかっ!」
そう意気込むともっと詳細に状況分析を始めた。窓から外を見ると人々の格好や文字から確実に西欧だったりそんな所、ともかく日本でないことだけは確かなこと。妹紅の部屋はアパートなのか、そこの二階であることが分かった。
「そういえば難題で"事件"とか言ってたけどそんな事は怒らないなぁ」
待ってましたと扉が三回、ノックされた。タイミングが良すぎて驚く。誰かが呼んでいる様だ。不在を装う事もできたが、外に出る口実も出来るだろうと応対することにした。扉に素早く向かいおもむろに扉をあける。
「えっ...」
そう言いたい気持ちを抑える。
そこにいたのは黒い帽子に黒いコート、黒い手袋...とにかく、黒を基調とした服装、だが見覚えのある女性だった。
「こんにちは 今日 お隣に引っ越してきた 十六夜咲夜と申します」
ハキハキとした人当たりの良い態度で挨拶をされた。そんなことよりも、メイド服ではないが、髪、目、体つき、その他諸々完全完璧に十六夜咲夜、その人である。
ハッと驚いていた自分を冷静にすると、今、相手は引越しの挨拶に来ている。隣人が引越しの挨拶に来て驚くやつはいない。だから挨拶をしなければならない。相手が咲夜であることに驚愕しながらも実年齢の功もあって驚く顔を明るい笑顔に変えることができた。それと同時に 挨拶をし返した。
「十六夜咲夜さんですね 藤原妹紅ですどうぞよろしくお願いします」
深くお辞儀した。幻想郷という現代でいう田舎に近い所に住んでいたせいで、感覚が麻痺しているので、礼節を欠いていないか心配だった。咲夜が黒い手袋をした手を口に近づけ、少し笑う。
「妹紅さん、やっぱり 日本人なんですね」
「あっ...」
言われてハッとした。ここは日本ではないしその植民地でもないのだから、日本語が通じるのは可笑しい。
「そんな日本人みたいな模様の服と身長は海外では滅多に見ないから」
咲夜は口に手を軽く当てて微笑している。
「ところで、何故こんなところに?」
「私は陰陽師だとか巫女だとか家がそんな血統で さらに外交関係の仕事を任されているから。日本の関係を広げるためにいろんな国の地域のお祓いに来てるって言うのが建前で本当は私を追い出すためってのが本音だろうね。」
咲夜が落ち込む様な素振りを見せる。妹紅は説明を聞いて
「やっぱ血統は血統なんだな...それ程何か事を?」
「それが────
玄関で二人で長々とけれど楽しくお喋りしていると、いつしか敬語は抜けていて、引越し初日でも同じ日本人なこともありとても仲良くなっていた。

